「アスラン、とシンの3人で応戦します。

 レイとルナマリアはミネルバを護りつつ、上空からの攻撃に対処。いいわね?」










「了解しました。」












既にパイロットスーツを身に纏っている5人は指示の通りに機体に乗り込む。










「ミネルバは任せたぞ。」








「はい。」








レイに告げたアスランは、真剣な眼差しになる。






ふと視線を感じ、その方向に目を向けると、不安そうなの姿があった。










、大丈夫か?」







「…ん。大丈夫。」









ハイネが居なくなって初めての戦闘…





戦闘中にあの時の事を思い出してしまったら…





または身動きが取れなくなってしまうのではないか…






そう思ったけれど、を戦闘から外すように譲歩する事も出来なかった。







は恋人だけど…軍人である以上、特別扱いをする訳にはいかない。







しかも周囲の人間には表沙汰に出来ない関係だ。





もっとも、ハイネの件で不審に思っているクルーは多いとは思うけれど…。

















「無理はするな。やばいと思ったら退くんだぞ?」







「…ありがとう。でももう大丈夫。」






…」









いつまでも守られてばかりじゃ駄目。






何の為のフェイス?






ただのお飾りの為に与えられた証?






そう言われても今の私には文句は言えない。










戦うんだ。





守る為の戦いをして、戦争を終わらせて…






だから迷ってなんかいられない。

































戦場の歌姫 〜Destiny〜



   ACT.4 覚醒






























「カオス…それにアビス…」











敵艦からはいつものようにガンダムが出撃する。








ザフトが開発した新型兵器が…






ガイアを欠いたとは言え、残る2機も相当の腕。









乗っているのはきっと…彼女と同じ…







戦う為だけに育てられた人間…






そう思うと息が詰まってしまいそう。








戦う為だけに強化されただなんて…そんなの許せない。






けれど、彼らを止めなければ戦争だって終わらない。










戦いたくないという気持ちと、戦わなくてはという気持ちが交差する。











駄目…迷っては駄目…







私が迷う事で隙が生じたりしたら…それこそ足手まといにしかならない…。



































アビスは迷わずインパルスに飛びかかる。







そしてカオスはセイバーに向けてビームを仕掛けた。













!君は逆方向の敵を!」







「分かった!」








空中で分散した3機はそれぞれに母艦を守りながら攻撃をかわしていく。








遠慮なく敵機を撃ち落していくシンとは違い、アスランやは何とかコックピットを避けながら攻撃を仕掛ける。











無駄な命なんて無い…





だから、犠牲は最小限に留めなくちゃ…。



























「くっ…!」






他の機体とは違い、カオスはそう簡単に落ちてくれる機体では無い。






それは今までの戦闘から十分分かってはいるが…






だからと言ってこの1機にいつまでも構ってはいられない。








オーブは次々と量産型のムラサメを投入して来る。






それを相手にしているのはなのだ。









戦闘力は下回るとはいえ、数が集まればそれだけ危険は大きくなる。










の力を信じていない訳では無いが…いつ何が起こるかなんて分からない。










常にの機体に気を配りながら…アスランはカオスからの攻撃を避け続ける。















迷うな…迷ってる場合じゃない!








決めた筈だ…キラに背を向けたあの時に…






俺に出来る事を…を守る為に…戦争を終わらせる為に…






そう決めた…だから迷うな…









標的はミネルバ…




あの艦さえ落とせば戦闘は終わる…






躍起になるオーブ軍は、次々とムラサメを戦場へと送りだす。












「くっ…キリが無い…」







撃っても撃っても次々と…






ここで私が少しでも喰い止めなければ、その分レイやルナマリアに負担が掛かる…。






身動きが取れない分、私よりもずっと不利なんだから…








撃っては構え、再び撃つ…


















そんな混乱した状況の中に、更なる混乱が襲い掛かった。







閃光の如く、戦場に現れた1機のMS…








「フリー…ダム…」







キラが…アークエンジェルが…







空に舞う真っ白な機体…自由なる翼…







また…戦場に混乱をもたらすの?





その瞬間に脳裏を掠めたのは…あの時のビジョン…









「…っ…ハイネ…っ…」












直接キラが撃ったんじゃない…それは分かってる…





戦争なんだもの…軍人ならば覚悟している筈だ。






でも…割り切れないの…胸が痛いの…












もしもあの時…キラが戦場に現れなかったら…







ハイネはまだ…側で笑っていてくれたんじゃないかって思ってしまう…。






誰かの所為になんてしたくないのに…誰が悪い訳でもないのに…









アスランはキラに伝えたい事は伝えたって言ってた。





それでもここへ…戦場へ現れたという事は…戦うという意思表示なの?






アスランと対峙してでも戦うという事なの?

















「キラ…どうして…っ…」






レバーを持つ手が震えた。





私がどう足掻いてもキラには敵わない…






でも…アスランとキラには戦って欲しくない…






あの時のような気持ちを味わうのはもう嫌なの。








アスランを失う事は勿論、キラを失う事だって同じくらいに辛い…耐えられない…






その気持ちをどうして分かってくれないの?






















『オーブ軍は直ちに戦闘を停止せよ!!』






後から現れたカガリのルージュがオーブ軍に対して呼び掛ける。









ユウナにその意思が無いと分かってはいても…彼では無く、軍人である者達へその願いを込めて…


















けれど彼女の声は届かない。






その声は虚しく宙に響き渡る。



























「またアンタかっ!!」








モニター越しにシンの怒りを帯びた声が響いた。










アビスを海へと沈めたシンは、フリーダムに向けてビームを構えた。















「シンっ!!」








怒りの矛先は完全にキラへと向かっている。







急に動きを速めたインパルスは次々とフリーダムに攻撃を仕掛ける。















しかし、フリーダムは寸前で綺麗にかわしてゆく。

















『やめろ、キラ!!』













『…アスラン…』










『お前の力は混乱を招くだけだ!退け!!』













「アスラン…キラ…」








どうしたら…私はどうしたらいい…?







2人の間に入って制止するべき…?






黙って見守るべき…?












この瞬間の迷いが大きく左右するというのに…頭は冷静には働いてくれない。








もしも間違った選択をとってしまったら…







どちらかに…いや、両方に傷を負わせる結果になってしまったとしたら…














「どうしたらいいのっ…」








『きゃあっ!!』









「…ルナマリア!?」










隙をついた攻撃がルナマリアのザクを直撃する。










『お姉ちゃんっ!!』














このままじゃ…









!君はミネルバを!!フリーダムは俺が!』








「アスラン…でも!」









『いいから行け!!ミネルバが落ちたら終わりなんだぞ!?』

































『自分のしてしまった事を悔やんで…それでも守りたくって…カガリは今泣いてるんだ!

 なのにこの戦闘も犠牲も…仕方の無い事だって言うの!?

 全てオーブとカガリの所為だって…そう言って君は撃つのか!?』










「…キラっ…!」







俺はオーブを撃ちたいんじゃない…守りたいんだ…







けれどオーブは向かって来る…だったら戦うしかないじゃないか…






何故…上手くいかない?







戦況は乱れる一方で…何一つ改善されやしない。








あの悲劇の日から…何一つ変わっちゃいない…







悲しみを生むばかりで…人々は傷付いてゆくばかりで…















『なら…僕は君を討つ!!』







「キラ…っ」










迷いを断ち切るかのように、フリーダムは刃をセイバーに向けた。














アスランを愛する…たった1人の少女の目の前で…
























「…あ…アス…ラン…………アスランっ!!」









粉砕された赤の機体がの目の前で海へと落ちて行く…












「アスランっ!!」










頭より先に…体が動いていた…





アスランに守れと言われたミネルバに背を向けて…真っ直ぐにセイバーへと向かっていた。













アスラン…!





アスラン…っ!!





























【あとがき】

…約2ヶ月ぶりの更新です…(汗

大変お待たせいたしました。本当に…

今回戦闘ばっかりで頭が痛かったです。

だって本当に苦手なんですもの…こういった表現。

しかも表現出来てない。最悪だ…。

省いてやりたいのは山々なのですが…そうも行かなくて…。

アスランがキラに討たれるシーンは重要ですし…。

ヒロイン何してるんだ一体…って状態です。

もう資料なしでは書けません…(切実

次はもっと早く更新出来るように頑張りますので…

キラの本編沿いも1ヶ月放置だ…ヤバイ…









2006.4.7  梨惟菜














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