「久し振りだな…」







ピッタリと体にフィットするパイロットスーツ…。




以前着ていた赤いものではなく…ワインがかった赤…




また着る事になるとは思ってなかった…。







覚悟を決めなくちゃいけないのは分かってる…




でも…数日前まで居た国と戦うなんて…











さん…大丈夫ですか?」





顔色の優れないを近くに居たルナマリアが気遣う。





「…うん…」





それでも優れないの顔に、ルナマリアの表情も曇る。






「さぁ、そろそろ行かなくちゃね…。」






俯いた顔を持ち上げたはルナマリアに微笑んで見せた。





























 戦場の歌姫 〜Destiny〜

    ACT3.不安・嫉妬・秘密

























「セイバー、インパルス、発進!離水、上昇、取舵10。」










艦長の指示でセイバーとインパルスが発進する。





それに続いてルナマリアとレイのザクがミネルバの甲板へ位置を定めた。





待機を命じられたのは私とハイネのグフ。





コックピットに腰を沈めた私はゆっくりと呼吸を整える。






アスランなら大丈夫…。






技術だって…経験だって私よりもずっと上だもの。






とにかく今は…戦場の状況を把握して少しでも多くの情報を得る事…。





自分に出来る事を確実にこなしていかなくては。






空中へと飛び出した2機のガンダムは迫り来るMSを確実に落としていく。





前線に並ぶのは見覚えのあるオーブ艦隊。





今は敵…そう、オーブは敵なの…。





必死に頭の中で自分に言い聞かせながら考える。








カガリが居ない今…あの軍を指揮しているのは間違い無くユウナ・ロマ・セイラン…。





オーブが…カガリのお父様が貫いて来たオーブの理念…





『他国を侵略せず…他国の争いに介入せず…』





指導者が変わるだけでこんなにも大きく揺れ動いてしまうなんて…。





どうして私はカガリを守れなかったんだろう…。




私がしっかりしていれば…カガリが国を離れる事もなかったのに…。








ギュ…っと手を握り締める。




今更後悔したって遅い。




でも…こんな状況を目の当たりにしたら悔やまずにはいられない。

















『タンホイザー起動、照準、敵護衛艦群!』







オーブ艦を射程内に捕えたミネルバは発射体制に入る。





回避は…恐らくは間に合わない…。





オーブ艦が沈む瞬間を見たくなくて…自然と目を伏せる。




















ドォン…!










「きゃあっ!!」





発射後の衝撃よりも明らかに大きな振動がミネルバを襲う。





これは…ミネルバが攻撃を受けた振動!?





「…何!?」





モニターに映し出された新たな機体に目を見開く。









「フリー…ダム…?」








空から舞い降りた白と青の機体…




大きな翼を広げて浮かぶそれは…キラのフリーダム…













どうして…キラがここに…?







そしてその後ろには…ストライクルージュ…?





カガリの機体がフリーダムの後ろへと付く。



















『私はオーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ!

 オーブ軍、直ちに戦闘を停止せよ!!』














力強い彼女の声が戦場へと響く。












「カガリ…」









でも…何故キラはミネルバを撃ったの?





戦闘を止めたいから?




だからザフトの戦艦を撃ったの?











「…っ…」





もう何が何だか訳が分からなくなって、思わず頭を抱える。






確かにオーブとは戦いたくない…。




連合とだって戦いたくはない…。





でも…戦わずして今の状況を切り抜けられる?





戦う以外の何かが私達にある?


























『着水する!総員、衝撃に備えよ!!』












艦長の声に我に返る。




ミネルバの置かれた状況は決して有利なものではない。




被弾した上に艦の損傷は激しい…。




このまま戦闘を続けられるかと問われれば難しいものであった。















『艦長、出ます!いいですね!?』






状況を見兼ねたハイネが口を開く。




この状況での待機はもはや無意味だと…私もそう思っていた。









『…えぇ、お願い。

 、貴方も準備はいいかしら?』






「はい…いつでも大丈夫です。」



























『ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、出るぜ!』









、グフ、出ます!」





































!俺はあっちをやる!左はお前に任せたぞ!』





「了解!」





ほぼ同時に発進した2機のグフは空中で散開する。







ハイネはそのまま側の陸地へと着陸し、艦の側の敵を相手にする。





私はそのまま海上へと機体を急がせる。





視線の先にはアビスと交戦するシンのインパルス…




そして、カオスと交戦するアスランのセイバーの姿。












厄介なのはあの2機…




その周りを飛び回る連合やオーブのMS…。





更にキラ達…アークエンジェルの参戦により、戦場は混乱するばかり。










「…チッ…!」






軽く舌打ちし、迫る敵を確実に撃ち落としていく。




なるべくコックピットは避けているつもりだけど…アスランやキラの様にはいかない。









「命が惜しかったら下がりなさいよっ!!」









撃ちたくないという想いと、撃たなければという想いが交錯する。





けれど…引き金を引かなければ死ぬのは私…。




























『オーブ軍!私の声が聞えないのか!!』









攻撃の手を止めないオーブ軍に向けて放たれるのはカガリの悲痛な叫び…。







それでも攻撃は止まらない。







それが…セイランのやり方だと言うの…?








隙を突いてフリーダムに近付こうと決めた時だった。
















「…キラ…っ!」














再びフリーダムが動き出す。





その素早い動きは目で追うのがやっと。





確実に敵の動きを止め、戦場を駆け抜けて行く。






その的は連合、オーブ、ザフト…






そう…全ての軍のMSの動きを止めるかの様に駆け抜ける。
























『くそっ!冗談じゃないぜ!手当たり次第かよ!』









「…ハイネ!?」









フリーダムが向かう先には…陸地で交戦するハイネのグフとガイアの姿があった。













グフより先に飛び出したのはガイア…





その攻撃をかわしたフリーダムは、サーベルを抜き、ガイアの足を1本落とす。















『生意気なっ!!』




「ハイネ待って…!!」










止めに入ろうと機体を急がせる。









同じ頃、アスランもまたその様子に気付き、機体を急がせていた。





しかし、の位置から比べると距離はかなりあり、思うように前へと進めない。















「くそっ…!キラ!!」







通信を試みるがそれは叶わず…アスランは唇を噛み締める。






キラが刃を向けている相手は自分の仲間…




そして大事な恋人も側に居る。






キラにとっても大事な親友なのだ…。





だが、キラはあの機体にが乗っている事は知らない。





当然、自分がここに居る事も…。









「間に合ってくれ…!」





























『俺がここで落としてやるっ!!』








ハイネがフリーダムに突進して行こうとしたその時…







「…!?…ハイネっ!!」








同時にガイアがサーベルを握り、フリーダムに飛び掛った。














「ダメ…っ!!」





















の叫びは虚しく空に響く…








「あ…あぁ…」






目の前には…炎…






ガイアのサーベルによって引き裂かれたのはハイネのグフだった…





爆音を上げ、その機体は戦場へと散ってゆく。












「ハイネーーーーー!!」


















グフを落としたガイアはそのままフリーダムへと突進する。





…が、フリーダムは難なくガイアを蹴り、ガイアは地上へと落ちてゆく。






その寸前で現れたカオスがガイアを支え、そのままこの場を離れて行く。






それと同時に、連合の信号弾が打ち上げられた。




























「ハ…イネ…が………?」










嘘でしょう?






さっきまで…話してたじゃない。








さっきまで…一緒に戦ってたじゃない…。











の機体が力を失ったかの様にゆっくりと着地する。








「……!?」











信号弾が上げられたのと同時にフリーダムもアークエンジェルへと戻ってしまい、アスランはの元へと急いだ。












、大丈夫か!?!!」






一生懸命に呼び掛けるが応答が無い。









!返事をしてくれ!!!」

















声が聞こえる…






私の名前を…呼んでる…?







誰…?





ハイネ…?









頭の中が真っ白で何も考えられない…。






私…皆を守る為に…




平和を取り戻す為にこの機体に乗ってるのに…





















【あとがき】

こちらも久方ぶりの更新…

あぁぁぁ…

本っ当にごめんなさい!

ハイネファンの皆様!本当にゴメンナサイ!

文才無くてごめんなさい!!

本編沿いって痛いですね…。

久し振りに(いや、初めてかも…)戦闘シーンなるものを書きましたが…

本当に無理!

専門用語はわからへんし…難しいなんてレベルじゃないですぅ…。

さて、ちょっと難関だった回が済んだのでこちらの更新が少し早まるかも…?

期待せずお待ち頂ければ幸いですが…

ようやくヒロイン×アスラン的な内容が書けると思われます。

いつも読んで下さってありがとうございます。

また次回も期待せず気長にお待ち頂ければ幸いです。







2005.12.8 梨惟菜











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