「え…?」
気になる洋服を見ていたの手が止まった。
「今…何て言った?」
「だから、ザラ隊長とラクス様、昨夜一緒だったみたいなのよ〜。」
アスランと…ミーアが…?
「今朝ね、朝食をご一緒にって思って部屋に行ったの。
そしたら、出て来たのは下着姿のラクス様!…信じられる?」
し…下着姿!?
「何だかイメージ変わり過ぎ。清純派だと思ってたのになぁ…。」
清純派…ねぇ…
…と言うか、彼女の場合は『天然』って言葉が一番似合うと思うんだけどな…。
確かにミーアって…スタイル良いって言うか…
細いのに胸も大きいし…
私なんかよりもずっと…
「はぁ…」
自分の胸元に目を向けてから、持っていた洋服を棚に戻した。
「買わないんですか?可愛いのに…。」
「…何か…購買意欲が無くなっちゃった。」
「??」
事情を知らないルナマリアは首を傾げる。
戦場の歌姫 〜Destiny〜
ACT.3 不安・嫉妬・秘密
「やっぱりあの2人って婚約してるんですよねぇ…。」
「え…?」
ルナマリアの話題はアスラン一色だった。
「私、ザラ隊長っていいなぁ…って思ってたんですけど…。
やっぱり相手がラクス・クラインじゃ無理だなぁって。」
「…ルナマリア…まさか…」
「だって、滅多に会えないラクス様よりも私の方が傍に居るでしょ?
だから隙はあるかなぁ〜なんて思ってるんですよね。
やっぱりもう少し押してみる事にします♪」
…最悪…
敵はミーアだけじゃないって事…?
何で皆揃ってアスランなのよ…。
「あの…さ…」
「はい?」
「何でアスランなの?」
「え?」
「ミネルバにはシンやレイだって居るじゃない。アカデミーからの付き合いなんでしょ?」
まだ話した事はないけれど、あの2人だって…十分に魅力的な存在だと思うんだけど…。
「…やだ。シンは年下ですよ?レイも頼りにはなるけど…秘密主義って感じで恋愛対象にはならないですよ〜。」
「そういうものなの?」
「…もう仲間って感じですから。
でも、ザラ隊長は違うんです。あの有名人が目の前に居て一緒に戦ってるなんて。
こんなチャンス、2度と無いと思うんですよね〜。」
有名人…か…
私から見たら普通の人…なんだけどなぁ…。
アスランはいつも注目を浴びてる。
優しくて…強くて頼りがいがあって…
でも…鈍いのが難点だと思う。
私の気持ちにだって気付いてなかったし…
女の子には強く言えない所があって…
そんな所を見てるとモヤモヤする。
ただのヤキモチなんだけど…それを知られるのは恥ずかしくて…。
何か…子供みたいじゃない。
だから、何かあるとアスランを避けちゃう自分が居る。
今回も…
折角再会出来たのに、まだ一言も言葉を交わしてない。
話したいのに…
名前を呼んで欲しいのに…
あの大きな手に触れたいのに…
抱き締めて欲しいのに…
肝心な時に素直になれない…。
「さん…?」
「…え…?何?」
「ボーッとしちゃってどうしたんですか?疲れました?」
「あ…うん。ちょっとね…。」
「降下してきたばかりですもんね。無理やり誘ったりして済みません。」
「ううん!大丈夫。久し振りに買い物出来て楽しかったよ。」
…って言っても…買った物なんてほとんど無いんだけど…。
「戻りましょうか。」
「そうね。」
「ミネルバはこれからスエズへと向かいます。」
短い休暇も終わり、新たな指令が下される。
「連合がスエズに軍を展開しているそうよ。その応援という事になるわ。」
「了解しました。」
呼び出された私とアスラン、そしてハイネ…。
「私達が今度相手にするのは…オーブ軍よ。」
「「…え…?」」
オーブが…進軍して来た…?
確かに…カガリが不在の今、実権を握っているのはセイラン家。
でもまさか…こんなに早く同盟を締結させて動き始めるなんて…。
「…戦えるわね…?」
艦長の言葉が胸に突き刺さる。
オーブと…戦う…?
ハッキリとした言葉が返せない…。
オーブを…あの国を…私達が撃つ…?
「……」
出航の準備を進めるミネルバの甲板に佇んでいた…。
「あ…アスラン…」
「久し振りだな…無事で…良かった。」
「アスランも…色々大変だったみたいね。話、艦長から聞いたよ。」
微妙な間隔を空けて、並んで立つ。
会いたかったという抱擁もキスも無い…
2人は確かに通じ合った仲なのに…触れる事すら叶わない。
「…オーブ…何でこんな事になっちゃったんだろうね…。」
「俺に…オーブが撃てるのかな…」
「そんな…」
そんな事…したくないよ…
させたくないよ…
だって、オーブを撃つ為に戻ったんじゃない。
戦争を終わらせる為に戻ったのに…何で撃たなくちゃいけないの…?
「ここに居たのか…」
「…ハイネ…」
ゆっくりと近付くハイネはの隣に立つ。
「お前ら、大戦の後、オーブに居たんだろ?」
「……うん。」
「良い所なんだってな。俺は行った事無いんだけど。」
「海の綺麗な…平和な国…だよ。」
「そうか…。」
穏やかな時を過ごした…
僅か2年の間だったけれど…アスランを一番近くに感じてた。
「オーブとは…戦えないか?」
「「え…?」」
「思い入れのある国なら…そう思うんだろ?」
「出来る事なら…戦いたく無い…。」
「じゃあ…何処となら戦いたい?」
「ハイネ…?」
何処となら…って…
そんなの…考えて出せる答えじゃないよ。
だって…出来る事なら何処とも戦いたくなんて無いもの。
「今は戦争で、俺達は軍人なんだ。割り切れよ。」
「ハイネ…」
「でないと死ぬぜ…」
ハイネの言ってる事は十分理解できる。
軍人だから…戦争だから…
誰かが戦わなければいけない事も…分かってる。
でも…何故戦わなくてはいけないの?
戦わずに済む道は無いの…?
私がそんな事を考えたって仕方ないけど…
『殺されたから殺して…殺したから殺されて…それで最後は本当に平和になるのか…』
カガリがアスランに向けて放った言葉が脳裏に蘇った。
もしもアスランが殺されたら…
私はその相手を恨んで殺すのだろうか…
もしも私が殺されたら…
アスランはその相手を殺すのだろうか…
甲板に吹く風が次第に冷たくなっていく…
私はオーブと戦えるのかな…
【あとがき】
めっちゃ気まずい…
ラブラブ感がちっとも無い!
いや、本当はお互いにイチャイチャしたいんですよ。
アスランなんて特に…ね。
ヤバイ…
ハイネの死が着々と近付いております。
切ない…切ないです〜。
一応、本編沿いなので…泣く泣く流れに従います。
皆様、心の準備を宜しくお願いしますね。あい…
2005.10.26 梨惟菜