「ではラクス様、降下後のスケジュールになります。」





「え〜。こんなに忙しいのぉ?アスランに会う暇はある??」






マネージャーから手渡されたスケジュール表に軽く目を通したミーアは不満気に訴える。





それくらいに地球降下後の彼女の仕事は詰め込まれていて…





「大丈夫だよ。ミネルバのパイロット達とも話をしたいからね…スケジュールは組んである。」




「本当ですか!?嬉しい〜。」





議長の言葉に、ミーアは嬉しそうに微笑んだ。







つい先刻、プラントを発ったシャトルは地球へと向かう。




そのシャトルに乗り込むのは、議長、議長の側近…ミーアに彼女のスタッフ。




そして、護衛を任されたハイネと私…。






「はぁ…」




誰にも聞こえないように…小さい溜息を1つ零す。





何だか妙なメンバーだなぁ…





このシャトルが襲われでもしたら…



そう思うと怖いよ…本当に。




いや…怖いなんてものじゃないんだけど…。






護衛を任されたとは言え、今の私とハイネにはMSも無く…



つまり、上着の内側に潜ませた1丁の銃のみが頼りな訳で…










出発の直前、議長に呼ばれた私とハイネには新たな報告があった。










『君達の機体を地球に用意しているよ』







また…乗る時が来るなんて思ってなかったな…。









…どうした?」




浮かない顔のに気付いたハイネが小さく声を掛ける。





「え?」




「気分でも悪いのか?それとも緊張してる?顔色が悪いぜ?」




「あ…ううん。大丈夫。色々とバタバタしてた所為で疲れてるだけ…。」




「そっか…。ならいいけど…。何かあったらすぐに言えよ。」




「うん。ありがと…。」































戦場の歌姫 〜Destiny〜




  ACT.3 不安・嫉妬・秘密






























「わぁ…大きな街!!」






地球へ降下して数日…



各地を回ってコンサートを行うミーアに同行しながら、私達の仕事は問題無く平和だった。





特にブルーコスモスらしき一行のテロも無く、至って平和な状態が続く。






そして…次に訪れたのがディオキアの街。







ここにミネルバが停泊していて、数日の間の休暇を与えられているらしい。










「ラクス様…早速本日のコンサートの打ち合わせを…。」




「はぁい…。」






「ハイネに…」



「「はい」」





「君達はこちらへ…例の物の準備が出来ているそうだ…。」





「「はい」」




















街から少し外れた場所に設けられた工場区…




人気は少なく…ひっそりとした雰囲気の中へと1台の車が通される。




まさか、こんな場所にプラント最高評議会議長が直接訪れるとは…











「本来なら…完成前に君達に見てもらうべきだったんだろうがね…

 状況が状況で済まない。結局、全部任せてしまったんだよ。」





「いえ…機体を用意して頂けるだけで十分です!」






「こっちだ…」






案内された倉庫にはまだ明りは灯されず…暗闇とひんやりとした空気が広がる。








そして…




パッ…と灯された瞬間、眼前に広がったのは2機の機体。





オレンジ色と…紺色の…







「これ…は…?」





「グフイグナイテッドだ…。」






「グフ…?」





初めて見る機体…



現在、ザフトで使用されている主なMSとは異なる装甲…






「これからはこの機体が主流となって前線で活躍してくれるだろう。

 それを君達にも是非…と思ってね…。」







これに…私が…








「色は君達が以前使用していた機体と同じ物にさせて貰ったよ。」









紺色のジン…






『アスランの髪の色…だろ?』





ミゲルの言葉を思い出した…。




そして、隣に並ぶのはミゲルの愛機だった物と同じ色…







…そうか…



ハイネの声…ミゲルにそっくりなんだ…





ようやく…彼の声に懐かしさを感じていた理由が分かった。










「議長、ありがとうございます!」





「大事に使わせて頂きます!」







「これで…この戦いが早く終わる事を期待しているよ…。」


































機体を受け取り、今夜宿泊するホテルへと到着する。







「これからミネルバのクルーと話をする事になっていてね…疲れているだろうが、同席して貰いたいのだが…?」





ミネルバ…という事は、アスランにも会える…?





「これから君達が配属になる艦だ…どうかね?」





「はい。勿論です。」








「では行こうか…。」



















「お前…アスラン・ザラとは知り合いなんだろ?」




「知り合いって言うか…」




「確か同じクルーゼ隊だよな?同期?」




「…私の方が2期上。でも、その前から知ってるんだけどね。」




「まぁ…前議長の息子だしな…。」




「…って言うか…幼馴染?」




「そうなのか?」







…って言うか…恋人なんだけどね…




先に行って待つように…と言われた私とハイネはバルコニーへと通される。







広いバルコニーに、テーブルが設けられていた。








その席に座る事は無く、並んで隅に立つ。










「恋人とか居ないのか?」





「へ…?」





「もしくは婚約者?」





「いやぁ…なかなか…ねぇ…。」






そんな…返答に困る質問されたらどう答えたらいいか分からないし…。



適当に言葉を濁して誤魔化すが、ハイネは気にせず続けた。








「復隊前はオーブに居たんだろ?アスランと一緒に?」





「まぁ…一応ね…。」





「それに加えて幼馴染?恋愛感情とかって芽生えない訳?」






恋愛感情…



そんなもの…小さい頃からずっと抱いてるし…



実際今はそういう関係な訳だし…











「幼馴染は幼馴染だから…。」




「へぇ…そういうもん?」



「そういうもんなの…。」













ごく一部の人間しか知らない…私とアスランの関係。





少なくとも、ここでは悟られてはいけない関係。






ラクス・クラインにはアスラン・ザラという婚約者が居て…





それはプラントの人間なら誰もが知っている事で…







それは今も変わらないみたいで…










それは別に構わないの。




私は全ての人間に祝福されたい訳じゃない。




認めてもらいたい訳でもない。









ただ…傍に居たいだけなの。



一緒に過ごして…同じ物を見て…共に感じて…




一緒の時間を刻めればそれでいい。






けど…それが思うように行かなくて…




またこうして…離れ離れの時を過ごしてる。









一緒に居るだけでいい…



それが一番難しいのだと…今それを痛感していた。


























【あとがき】

ようやく3章。

ちょうど昨日、最終回が終わりまして…

何とかこれで一気に書けるかなぁ…と思ったのですが…

何と、DVD最終巻に40分の特別編が収録との事!

それまで待たないと最後書けない!?

わわ!

とりあえず終盤までは書きます。多分。


ヒロインに新しい機体が与えられました。

最初の設定ではガンダムに乗せようかな…と思ったのですが。

ハイネがグフでヒロインがガンダム??

それは明らかにおかしいだろう…と思ったので…色違い。

はい。そんな感じです。

きっと乗る回数は少な目かと思いますけど…。










2005.10.2 梨惟菜











TOP | NEXT