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「何なんだ一体…!」
「まぁまぁ…落ち着けって。これも仕事…だろ?」
空港のロビーで怒りを露わにする1人の青年…。
そしてそれを宥めるもう1人の青年もまた、困り顔でベンチに腰を下ろした。
「アスランの時と言い…何故俺がわざわざ前線から呼ばれなくてはならないんだ!
俺は暇人か!?違うだろう!?」
「分かってるって!お前は忙しいジュール隊の隊長殿だよ!
でも仕方ないだろ!?これも本部からの命令なんだからさ!」
「…チッ…」
苛立たしさの残るまま、腕組みをして同じくベンチに腰を下ろす。
「でも…誰なんだろうな。ミネルバに配属予定になる新人ってのはさ…。」
「知るか!」
戦場の歌姫
~Destiny~
ACT.2 新たなる旅立ち
「迎えが来るって言ってたけど…」
ようやくシャトルから地に足を付けたダリアはロビーを見渡す。
2年振りで…少し変わったような気もするけれど、間違いなくここはプラントそのものの空気を持っている。
久し振りの帰郷…ってやつなんだよね…コレって…。
何だか違和感…。
そりゃあ…ここは私が生まれて16年間育って来た場所なんだけど…
こんな所に1人で立っていると、また別の場所のようにも感じる。
「ホラ…カーペンタリアからのシャトル、着いたみたいだぜ?」
「フン…ようやくお出ましか。どんな奴なのか…この目で拝んでやる。」
「…って…え!?」
「どうした?」
先に立ち上がり、ゲート付近を見回していたディアッカが見覚えのある人物を見つける。
「…ダリア!?」
「何!?」
慌てて立ち上がると、そこには2年前に別れたっきりの元同僚の姿…。
「ディアッカ…イザーク!?」
ダリアもまた、意外な人物の登場に驚いてみせた。
「迎えってイザークとディアッカだったのね。」
「俺も驚いたぜ?ミネルバに配属になる新人ってダリア?」
ハンドルを握りながら、ミラー越しに後部座席に座るダリアを見る。
「え?もうミネルバ配属に決まってるの?」
「知らなかったのか…?」
「まだ復隊の要請しかしていない段階だと思ってたんだけど…。」
「ふ~ん。ま、いいんじゃないの?アスランもミネルバに居るんだろ?」
「…うん。」
「ふざけた話だ。何でアスランなんかが復隊と同時にフェイスになんか…」
自分だってようやく隊長なんだぞ…
それなのに…戦後オーブに亡命していたアスランが特務隊だなんて…
「…ホラ、アスランって隊長って器じゃないじゃない?団体行動苦手だし…。
その点、イザークは統率力もあるし…買われてるのよ、その才能を。」
「まぁ…そういう事にしておいてやるか…。」
上手くイザークを宥めたダリアは笑顔になる。
こうして2人に会えるなんて思ってなかったから…何だか嬉しい。
アスランは復隊前に3人でニコルのお墓に行ったって言ってたから、ちょっと羨ましかったの。
「それにしても…」
「うん?」
「綺麗になったな、ダリア。」
「え?やだ…何言ってるのよ。」
そう言われて思わず頬が赤くなる。
ディアッカの口説き文句なのだろうとは思うけれど、実際に言われてしまうと気恥ずかしいもの。
「まだ婚約の段階なんだって?」
「あぁ…まぁね。先は長いし…この情勢だし…なかなか…ね。」
本当に…見違えるように綺麗になった。
以前から愛らしい容姿ではあったけれど…
2年という10代の女の子にとっては貴重な期間の間に、ダリアは少女から女性へと成長した。
毎日ダリアを見ていたアスランとは違った視点で見ている2人にとって、ダリアの成長は一目瞭然。
「これから何処に行くの…?」
何も聞かされずにシャトルへと乗った為、この車がどこへ向かっているのかも知らない。
「あぁ…俺達が護衛監視って任務になるからさ、スケジュール管理も任されてる。
これから評議会に向かって、デュランダル議長と面会予定。」
「え!?今から!?」
まさか…着いて早々にとは思っていなかった。
「そう。今から評議会にダリアを下ろして、夕方また迎えに来いって指示が出てるんだ。」
今はまだお昼前…
って…夕方まで評議会で何を…?
そんな事を考えている内に、車は評議会へと入って行った。
「ジュール隊隊長、イザーク・ジュールだ。
本部の指示により、ダリア・リールを同行している。」
「確認しました。どうぞ。」
認識票を提示した後、門が開かれる。
車は入り口で停車し、先に下りたイザークがダリア側のドアを開けた。
「着いたぞ。」
「…ありがとう。」
「じゃ、また夕方に迎えに来るからな。」
「うん。行って来ます。」
「初めまして…ギルバート・デュランダルだ。」
「は…初めまして。ダリア・リールと申します。」
ザフトでは当たり前のようにしていた敬礼も2年振りだった。
「…そう固くならないでくれたまえ。急に呼び立てて悪かったね。
長旅で疲れただろう?さぁ…座って。」
「はい…失礼します。」
軽く握手を交わした後、ソファへと腰を下ろす。
議長のお部屋…
あの頃と変わってない…。
相変わらず薄暗い部屋は青みがかかっていて…不思議な空気を醸し出している。
初めてお目にかかるデュランダル議長は聡明で誠実そうな人だった。
「オーブも色々と大変だったね…」
「はい…。」
「でも君も無事で良かったよ。心配していたんだ。」
「私を…ですか?」
お話には聞いていたけれど、こうやってお会いするのは初めてなのに…
「君の事は…アスラン君やご両親から聞いているよ。」
「両親から…ですか…?」
「あぁ…連絡を取っていないんだったね。それでは知らなくて当然か…。」
「…あの…」
「君のお父上は今私の仕事を手伝ってくれているんだよ。」
「…父が…議員に?」
プラントを出てから全く連絡を取っていなかったから知らなかった。
お父様がまた…評議会で働いているなんて。
「君も…以前はここで働いていたんだったね。」
「…はい…」
脳裏に…あの頃の記憶が蘇る。
赤服を身に纏い…ザラ議長の傍らに立っていたあの頃。
前線を外され、僅かな時間ではあったが議長の秘書として過ごしたあの頃を…
「私は…」
「気に…病んでいるのかね?先の大戦の事を…。」
まるで私の心を読んだかのように…彼は私の想いを代弁してゆく。
「…私以上に苦しんで…病んでいたのは彼です。」
「だから君も再びザフトに?」
「彼の為ではありません…確かにきっかけにはなったと思いますが…。」
「では…君自身の意思で?」
「私にも…出来る事があると思いました。先の大戦を経験した者として、この悲劇を繰り返さぬ為に。」
ただ待っているだけの存在では…いけないと思ったから。
自分だけがアスランに守られて…安全な所にいるなんて耐えられなかったから。
「私を…もう一度ザフトに戻していただけないでしょうか…。」
もう迷わない…迷いたくない…
差し伸べられた手をただ取るだけの私でありたくない。
「君に…頼みたい仕事があるのだが…?」
「…私に…?」
テーブルの隅に置かれたリモコンを手に取った議長は、電源を入れた。
壁に掛けられたモニターに映像が映し出される。
「これ…は…」
私がルナマリアと一緒に見たあの映像…。
「君ならすぐに気付いただろう?」
クルクルと走り回る…ピンク色の髪の少女…。
「彼女は…何者なのですか…?」
「ラクス・クラインだよ。少なくとも…彼女を知らない人間にとっては…ね。」
私の目には明らかに違う人間として映っている。
けれど、多くの人間はそれを知らない。
彼女を…ラクスだと信じて疑わない…。
「君にも…平和の歌を歌って欲しい…と言ったらどうする?」
「私が…ですか…?」
私に…彼女の隣に立てと…?
彼女と並んで平和を訴える仕事をしろと?
「彼女の歌は…私の一言なんかよりもずっと強力なのだよ。
そして…君が彼女と並んでくれたら更に本物になる…。どうだね?」
平和の為に…歌え…と?
私が…?
「議長…」
「どうかな?」
「済みません…お断りさせて下さい。」
迷わず…その手を断ち切った。
「理由を聞いても…?」
「私にはもう…人々の前では歌えません。
その立場は4年前に捨てました。戻りたいとも思いません。」
歌は好きだった…。
でも…それは自分の想いを伝える手段として。
ラクスの様に、大きな物を背負って歌っていた訳では無い。
そんな器でも無い。
ただ…この声がアスランに少しでも届けば…
そう思って歌っていただけ。
「そうか…それは残念だね。」
「申し訳ありません…。」
「構わないよ。それも君が決めた道なのだろう?」
優しく…諭すように包み込む深い声…。
「隣の部屋に君の軍服を用意させてある。着替えておいで…。」
「議長…」
「分かっていたよ。断るだろうと…。」
「ありがとう…ございます。」
深々と頭を下げ、案内された部屋へと足を踏み入れた。
「コレ…」
隣の部屋に置かれていたのは…以前と同じ赤色。
アスランと同じ…赤服だった。
【あとがき】
本編、遂にあと3話という所まで来ましたね!
未だにちゃんと終わるのか疑わしいですが…。
完全オリジナルストーリー…(汗)
おかしいなぁ…
イザーク、前線で連合と戦ったり大変だった筈なのに…
まぁ、こうしてイザークとヒロインを再会させたかった…と言うのが目的だったり。
ついでに言うと、ローエングリンゲート突破作戦あたりが面倒でしたので…(最悪)
出来れば戦闘シーンは避けて通りたい。(困った管理人)
さらに議長を出したかった…と。
もはや言い訳です。
議長、ちゃんと書けていたでしょうか?微妙だなぁ…。うん。
2005.9.11 梨惟菜
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