「大丈夫か?」



「うん…ありがとう…。」



抱きかかえられたまま、セイバーからゆっくりと地に足を付ける。




「この先に洞窟があるんだ。」



私を下ろしたアスランは、手を引いてその場所へと誘導した。




「どうして…知ってるの?」



オーブ周辺に点在する無数の無人島…。



アスランが躊躇わずに選んだ島も小さな島で、半径2キロ程度の物だと思う。





「以前…カーペンタリアへ移動する時に輸送機が落とされただろ?」



「あ…あの時の…?」




2年前の記憶が蘇る。


アスランの輸送機だけがトラブルで遅れて…

私はイザークと一緒の輸送機で先に出た。



でも…いくら待ってもアスランは到着しなくて。


それどころか、輸送機ごと消息不明…。




凄く…心配した事を今でも覚えてる…。




その時に降りた島で偶然カガリと出会ったって…後で教えてくれたっけ。




















戦場の歌姫 〜Destiny〜

 ACT.2 新たなる旅立ち



















「さぁ…これからどうしようか…。」



中央の焚き火を挟む形で互いに見詰め合う。



続く沈黙を先に破ったのはアスラン。



結構長い間続いた沈黙だけれど、言葉が無くても心地よきと思える相手はアスランしか居ない。





「どうする…って…?」





「俺は…カーペンタリアへ戻らなきゃいけないんだ。」



焚き火に薪を投げながら…アスランは続ける。




を…連れて行ってもいいのか…正直迷ってる。」







を…守りたい。


傍に置きたい…。


目の届く場所に…今度こそずっと…。



そう思ったけれど…







を…巻き込んでいいのか…迷ってる。」









元ザフトの軍人である…。


共に戦った…大切な仲間。



でも、本当は戦ってなんて欲しく無かった。



の手を…血で染めて欲しく無かった。



けれど、ザフトの基地に民間人を連れ込める筈が無くて…








「ありがとう…アスラン。」






その言葉に…胸が焼けるように熱くなった。






「私の事、想ってくれてありがとう。凄く…凄く嬉しい。」





いつも…


アスランは私の事を一番に考えてくれた。



アーモリーワンに行く時も…


プラントに行く時も…




『一緒に行かないか?』



必ず…そう言ってくれた。



そして…私は自分の責務を全うしたいから…と、彼の申し出を断った。




自分に出来る事をしたい…


そう思ったから…。








「アスランが迷うのは…私を軍人に戻したくないから…でしょう?」




「……あぁ…。」






「…私を…カーペンタリアに連れて行って。」



「え…?」




「私も…進むべき道を決めたの。」




私に出来る事が…きっとある。


何が出来るかは分からないけれど…出来る事をしたい。



今度は…アスランの傍で…






「私も…平和の為に出来る事をしたいの。アスランの傍で…。」






離れていても想いは同じだけど…


見えない明日に怯えて…ただ、アスランの無事を祈るだけの毎日はもう嫌。



生きる為の戦いを…

守る為の戦いを…




もう一度だけ…


ううん、今度こそ最後の…戦いとなる様に…





「アスランが背負っている物、私にも…背負わせて?

 アスランの…妻になる者として…。」







…」







アスランの隣へと移動したは、彼の手を取り、頬に当てる。




「この戦いが終わったら…今度こそ…」




   私を…アスランのお嫁さんにしてね…





…愛してる…」



「うん…。」




私も…



  アスランを…愛しています…







言葉よりも先に…体温を確かめたくて…



だから、それ以上の言葉なんていらない。




言葉だけじゃもう、互いの想いを伝え切る事なんて出来ない。




私達は、2人で1つだから…


どちらかが欠けてしまっては意味が無いから…。










愛しくて…愛しくて…




アスランが居たから、生きて来れた。


アスランの為なら…何でも出来る。



アスランが…今の私の支えだから…。









「アス…ラン…っ…」










自然と零れる涙…



アスランと恋人同士になって…泣く事が増えた。



きっと…流した涙の数だけアスランを想っているから。













…」




頬を伝う涙…



思っていた以上には泣き虫で…



でも、は言ってくれた。





『アスランが愛しいから泣くのよ…』…って…




嬉しかった…



この世界中に、自分を必要としてくれている人が居る事が。



が本当に大切なのだと気付くまで、思った事も無かった。




自分はパトリック・ザラの息子で…


だから…皆からの視線を浴びているのだと…



ラクスの婚約者だから…将来を期待されているのだと…









だけだった…



何も包み隠さず、自分を求めてくれる存在は…。






だから…の涙を見ていると愛しい気持ちが増すんだ。












『愛してる』 という気持ちを乗せて…2人の姿は闇夜に消えてゆく。










誰も居ない…静寂という穏やかな時間の中で…




















【あとがき】

甘々…な仕上がりでしょうか。

久々な更新となりました。

アスラン流血に触発されたか!?

アスラン愛がヒートアップする管理人でございます。

2章ものんびりペースでまたりと行きたいと思います。

個人的に激甘好みな管理人ですので…

でもここから先はそうは行かないかも…ですね。

何と言ってもここからアスランの女難が始まるのですから!








2005.8.14 梨惟菜












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