戦場へと赴いて行くあなた・・・


それを黙って見送る事しか出来ない自分が悲しかった・・・



けれど、あなたの帰る場所でありたいから・・・。



だから決めたの。



ここであなたの帰りを待つって・・・。








戦場の歌姫


 ACT.9 交わる心













、アスランに休むように言ってもらえませんか?」


「え?私が・・・?」




戦闘がひと段落し、アスランは無事に帰還した。


けど、戦闘中にディアッカとムウさんが急に戦場を離れてしまって・・・



ディアッカの通信によると、コロニーの中にザフトが侵入したって話で・・・




2人の様子を見に行ったキラを追って、アスランもコロニーへと向かおうとしたが、
それをラクスが制止した。


今、敵が再び攻めて来たら・・・


この艦を守れるのはアスランしか居ないのだから・・・。






「今のアスランはの言う事しか聞き入れてくれませんわ。
 お願い出来ますわね・・・?」



ニッコリと笑うラクス・・・。


どうやら、私とアスランの関係を知っているらしい・・・。



彼女に言った覚えは全くないんだけどな・・・。



の事なら何でも分かりますわよ?
 アスランも顔に出る人ですからね♪」





私の心・・・読んだの!?



・・・そんなに私って分かり易い性格をしているのだろうか・・・。





「ちょっと・・・行って来るね。」



さすがにそこまで言い当てられると居心地が悪くなって来た。















「くそっ・・・」




ラクスの言っている事は分かっている・・・。


ディアッカやキラが居ない今、敵に攻め込まれたら危険だ。



俺までコロニー内に向かってしまったら戦える人間が居なくなってしまう。



でも、落ち着かなくて・・・。





待つ時間は嫌いだ。


特に一人で居ると、思考がどうしても悪い方へと向かってしまう。


前向きに考えようとは思うけれど・・・



俺は失う事に慣れ過ぎてしまっているのだろうか・・・?


だから、こんなに落ち着かないのだろうか・・・?





もし、キラ達が戻って来なかったら・・・?



俺はどうしたらいい?



俺だけの力でエターナルや他の人達を・・・


を守る事が出来るのか・・・?











「アスラン!!」



いつの間にか考え込んでしまっていた俺を呼ぶ声・・・。



モニターを切り替えると、そこには愛しい君の姿・・・。




「・・・・・・?」



無重力空間を飛びながら、ジャスティスへと寄って来る



コックピットを開放して、自らの目で彼女を見つめる。




フワフワと不安定に漂うを空中で受け止めた。




「どうしたんだ?」



「・・・心配で・・・来ちゃった。」



恥ずかしそうに俯いて微笑むに心が和んだ・・・。




「少し・・・休まないと。体もたないよ?」



心配そうに俺を見つめる・・・。


「でも・・・いつ戦闘になるか分からないから・・・」




休息を拒むアスランに、は小さく溜息をついた。



昔からの付き合いだから彼の性格は良く知っている。


面倒見のいい彼は、いつも他人の心配ばかりして・・・


損な役回りだと思う。




だからこそ、私の前でくらい、肩の力を抜いて欲しいのに・・・。






「じゃぁ・・・せめて下に行かない?」


「でもにだって仕事が・・・」



「ラクスに追い出されちゃった・・・。
 アスランは私の言う事しか聞かないと思うからって。」



の一言に、アスランが思わず苦笑した。



「ラクスには敵わないな・・・」



「ア・・・アスラン!?」



アスランが宙に浮くを抱き上げる。



を抱きかかえたまま、アスランはゆっくりと自らの足を床へと着けた。






「キラ達なら・・・きっと大丈夫だよ。」


「・・・あぁ・・・そうだよな。」




アスランの指先が冷たい・・・。


それだけ神経を張り詰めているという事・・・。



その緊張を少しでも和らげてあげる事が出来たらいいんだけど・・・。




そっと彼の首に手を回し、ゆっくりとアスランを抱き締めた。



「・・・・・・?」



「私には・・・これくらいしかしてあげられないから・・・。」



「ありがとう・・・。」



の精一杯の愛情表現。


目の前の恋人を心から心配している事を伝えたくて・・・。



アスランもまた、そんなに応える様に彼女の背中に手を回した。




互いの呼吸が一つになるのを感じる・・・。



この時間がずっと続けばいいのに・・・。





そう願う事は我儘でしかないのだけれど、
出来る事なら、アスランには傷付いて欲しくないし、傷付けて欲しくない・・・。









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