ディアッカのヤツ・・・


いつまで待たせる気なんだろ。



人を待つ時間って、どうしてこんなに長く感じるんだろ。



コロニーの中じゃ、宇宙も見えないし。

もの凄く退屈だった・・・。





「・・・・・・?」



ようやく戻って来たかと思えば、
背後から私を呼んだのは、ディアッカではなかった。




「・・・アスラン・・・」










戦場の歌姫


 ACT.9 交わる心











「・・・どうしたの?」


私の背後から現れたのはディアッカじゃなくアスランで・・・


アスランも不思議そうな表情で私の方を見ていた。




「いや・・・ディアッカが話があるからここで待っててくれって言うから・・・。」




・・・ディアッカのヤツ・・・図ったわね・・・?



つまりこれは・・・

告白しろという事でしょうか・・・?





「あ・・・それ、多分私。」


「え・・・?」


「ディアッカに言われたんでしょ?
 さっきまでディアッカと話してたの、私だから・・・。」




「どういう事だ?」



宙に浮いたまま考えるアスランの元に、私はゆっくりと近付いて行った。


不安定な私の体をアスランの両手が支える。



「ありがとう。」


アスランは柔らかく微笑むの表情に顔を紅潮させた。



ゆっくりと離される手・・・。


その手をキュッと握り返したのはだった。




・・・?」








ディアッカに後押しされてばっかで情けないなぁ・・・。



ここまで来るのに、どれだけの人に支えられて来たんだろう・・・。






「聞きたい事が・・・あるの・・・。」


「何・・・?」




の手が震えていた。


その事に俺はすぐに気が付いたが、
の瞳は真っ直ぐに俺を見つめていて・・・

目が離せなかった・・・。





「・・・どうして・・・私なの?」


「え?」



「どうしてラクスじゃなくて・・・私なの?」






誰からも愛されるラクス。


私よりも可愛くて儚げで・・・


守ってあげたくなるような存在なのに、
包み込むような広い心を持っていて・・・
人々の心を惹きつける歌声を持っている・・・。



私が男だったら、きっとラクスを選ぶのに・・・。





「分からない。」


俺にだって分からないさ・・・。


ラクスは可愛いし、プラントのアイドルだし・・・。


父に婚約者として会うように言われた時だって、
戸惑いはしたものの、申し分ない相手だとも思った。

むしろ、俺には勿体無いくらいの存在だと・・・。




でも、一緒に居ても心の変化は無くて・・・。

確かに好きだとは思う。



けれど・・・何かが違ったんだ・・・。





「イザークに笑いかける見てたら・・・。
 一番近くに居たのは俺だったのに・・・って悔しかった。
 今思えば、これが嫉妬って言うのかな・・・?」



アスランの微笑にの胸が高鳴った。




「私で・・・いいのかな・・・。
 歌姫としても2番目の私なんかで・・・。」




ずっとラクスに憧れてた。


大好きな友達だったけど、
それと同時に彼女に抱いていたコンプレックス。


ずっと・・・
ラクスに嫉妬してた。


アスランの妻となる筈の彼女に・・・。





でも・・・今は違う。

アスランは私の目の前に居て・・・


こんな嫉妬心でグチャグチャの私を好きだと言ってくれて・・・。





何度も思った。


これは・・・都合のいい夢なんじゃないかって。








「俺には・・・以外、もう考えられなくなってる。
 本当に・・・好きなんだ。」



頬を伝う涙・・・


アスランの放った言葉は紛れも無く真実で・・・


心臓が締め付けられそうなくらいに苦しくなった。




「ずっと・・・あなたの一番になりたかった。
 アスランが・・・好きよ・・・。」





やっと言葉に出来たこの想い。



アスランは目を見開いて、
自分の目の前で涙を流すを見つめた。





「好き・・・アスランが・・・」



止め処なく溢れる涙の粒が宙を舞う。


少しずつ紅潮していくの頬・・・。



「本当・・・に?」


アスランの問い掛けに、は黙って頷いた。






私にはあなたしか居なかった。


イザークを傷付けて・・・


彼の優しさを利用して・・・。



それでも結局、あなたを求めてしまった。






「嬉しい・・・。」



アスランの眩しい程の笑顔に、私もようやく笑顔を返した。













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