気が付けば私の体はアスランの腕の中にあって・・・
彼に抱き締められているのだと理解した瞬間、
混乱と戸惑いと動揺という感情が一気に押し寄せて来て・・・
何が何だか、さっぱり分からなかった。
私はどうして・・・アスランに抱き締められているの・・・?
戦場の歌姫
ACT.8 溶けた心の行く先に・・・
「ア・・・アスラン?」
あれからどれだけの時間が経ったのか・・・?
いや、冷静に考えるとそんなに時間は経過していない筈だった。
でも、時間の感覚がおかしくなってしまいそうだった。
気が付けば俺は、を抱き締めていた。
体が勝手に動いてしまった・・・。
でも、俺は知っている。
ずっとを抱き締めたかった事・・・。
思っていたよりもずっと小さかったの体。
自分と変わらない身長だったのは、ずっと昔の前の話で・・・
俺は男では女・・・
抱き締めて感じる2人の違い。
なのに、ずっと前線で神経を研ぎ澄まして、
気丈に振る舞っていた・・・。
どうして・・・気付かなかったんだろう・・・?
「・・・アスラン?どうしたの?」
平静を装って彼に問い掛けるけれど、
心臓がバクバクと高鳴ってやまない・・・。
アスランに抱き締められる事なんて初めてで・・・
どうしたらいいか分からない。
小さい頃はよくふざけて抱き付いたりした事はあったけれど、
それも何年も前の話で・・・。
抱き締められて、改めて気付く彼との違い。
いつの間にか差の付いてしまった身長。
一緒だった目線が上になってしまっていた事。
私は女で・・・アスランは男の人なんだ・・・
その時、私は気付いてしまった。
私の耳は彼の胸元にあって・・・
そこから伝わる、アスランの心音・・・。
私と同じくらい、速い速度で高鳴っていた・・・。
「ねぇ、アスラン?
もしかして、傷口、痛む?」
もう一度アスランに問い掛けたら、
アスランはふぅ・・・と深い溜息をついた。
「こうしてると落ち着く・・・。」
いや・・・そうじゃなくて・・・
私は落ち着かないんだけど・・・。
「やっと分かったんだ・・・。」
「何が・・・?」
「が好きなんだって事が・・・。」
「・・・え・・・?」
「イザークが居るって事は分かってるんだけど・・・。
とりあえず・・・言っておきたかったから。」
アスランが私の体をそっと引き離した。
互いの体がゆっくりと宙に浮かぶ。
「先、ブリッジに戻ってるから・・・。」
突然の告白に戸惑う私を残し、アスランはデッキを去って行く。
アスランが・・・私を・・・?
決して打ち明ける事の無い想いだと思っていたのに・・・
不意にアスランから打ち明けられてしまった想い。
どうしても信じられなくて・・・
1人取り残された私は何度もアスランの言葉を繰り返していた・・・。
ACT.8 溶けた心の行く先に・・・
end
【あとがき】
お待たせしました!
遂に言っちゃいました。あはは。
イザーク派さん・・・不満ですかね?
いや、梨惟菜は満足なんですよ・・・
勘弁してくださいな♪
アスランから告白させるつもりだったんです。
結構迷ったんですけどね・・・。
でもやっぱ、ヒロインは苦労かけまくりだったので、
告白される側にしてあげたかったので♪
物語りも遂に佳境へと突入です〜♪
ここまで来たら勢いで進みますよ〜
では、9章でお会いしましょう。
2005.2.26 梨惟菜