「何か・・・とんでもない事しちゃったな・・・。」


ついさっきまでプラントに居たのが嘘みたいだった・・・。



今の私は、戦艦のデッキから広い宇宙を眺めている。


時折流れる星を見つめながら、自分が今置かれている状況が信じられなくて、
小さな溜息が出た。









戦場の歌姫

 ACT.8 溶けた心の行く先に・・・











私達の逃走を援護してくれた人物がクライン派の人間だという事は逃走中に判明した。


行く当ても無かった私達はその人に連れられ、ザフト軍の新型戦艦に辿り着く。




この戦艦が・・・ザフトを裏切った者達で構成された部隊だったとは・・・。



ザラ議長に反発する勢力がこれだけあるとは驚きだった。




そして、こんな所で彼女と再会するなんて思ってなかった。






私の友人で、アスランの元婚約者・・・。


ラクス・クラインに・・・。



そして、砂漠で戦死したはずのバルトフェルド隊長に・・・。






私はラクスに会って驚愕した。


私の知っている彼女とは全くの別人だったから。



キリッとした表情で、バルトフェルド艦長と会話する彼女は、
プラントの歌姫とはやし立てられた頃の面影は無かった。




アスランと話し込む様子を見たくなかったから、
私はそっとブリッジを抜け出した。




結局、アスランの身に何があったのかとか・・・
何も聞かないままだったから、
正直、今の状況がイマイチ把握しきれていない。



私は彼に付いて来てしまって良かったのだろうか・・・?


『必ず守るから!!』




彼の力強い言葉に私の体は自然と動いていて・・・。

後になって理性がそう告げる。


アスランは・・・どうして私にあんな事言ったんだろう?


アスランの気持ちが分からない・・・。







、ここに居たのか・・・。」




振り返るとアスランが居た。



「アスラン・・・」


「やっぱりこの艦、人が少ないな・・・。
 結構探し回ったよ。」


アスランは何事も無かったかの様に、私の隣に立った。


手当ては受けたものの、銃弾を受けた右肩に巻かれた包帯が痛々しく、
は目を細めて傷口を見つめた。



「大丈夫・・・?」


「あぁ、これか?」


アスランは苦笑しながら自らの傷口に手を触れた。



「・・・議長・・・に?」


あまり聞きたくはなかったけれど・・・
もしかしたら違うのかもしれない。


そう思いたかった。



「・・・フリーダムの居場所を教えろ。
 それしか言わなかった。」


アスランの切ない表情に胸が痛んだ。

父親に撃たれる程辛い事は無い・・・。



もし私だったら・・・
そう考えただけで悲しくなってしまう・・・。



「ごめんな。」

「え・・・?」


どうして・・・謝るの・・・?



「何か、無理やり連れて来た形になっちゃったから。
 もう簡単にプラントに帰れる状況でもないし・・・。」



「アスランは・・・後悔してるの?
 私を連れて来てしまった事・・・。」



ラクスが無事で、また会えた事はすごく嬉しい。

でも、2人が一緒にいる姿を見るのは辛い。



私、そこまで強くないよ・・・。



私の事を真剣に想ってくれたイザークの別れを告げて、
例え叶わなくてもアスランを想い続ける。

そう決めたけれど・・・。



相手の気持ちが見えない程、怖いものはない・・・。



再会する2人を見て、改めてそう感じた。




「後悔なんてしてないさ・・・。
 がいれば・・・それでいい。」


「え・・・?」













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