あれから・・・
自分がどうやって立ち上がり、ブリッジを後にしたのかは覚えていなかった。
気が付けばロッカールームの前に居た。
「何故アイツが死ななきゃならない!?」
ロッカールームから聞こえた声に、
ようやく私は自我を取り戻した。
この声は・・・イザーク・・・?
戦場の歌姫
ACT.7 嘆きの光
「・・・イザーク!?」
部屋に入ると、イザークがパイロットスーツ姿のままで、
アスランの軍服の襟を掴み、彼をロッカーに叩きつけていた。
アスランの手にはもう一着の赤い軍服・・・。
その軍服に、もう戻って来ない一人の仲間を悟り、
は肩の力が抜けるのを感じた・・・。
「イザーク!!」
ディアッカが2人の仲裁に入る。
腕を押さえられたイザークもまた、
アスランの持つニコルの軍服に気付き、
アスランを責める腕を緩めた。
「・・・言いたきゃ言えばいいだろう!?
俺のせいでニコルは死んだんだって!!」
爆発のいきさつが理解出来ていなかったは、
思わず自らの手で口を抑えた。
アスランの・・・せい・・・?
どういう事なの・・・??
「2人とも落ち着けよ!!
ここでお前らがやり合ったってしょうがないだろ!?
俺達の敵はストライクなんだ!!」
イザークはその手を離し、俯いて叫んだ。
「ミゲルもアイツに討たれた。
俺も傷をもらった・・・。
次こそは俺がストライクを撃つ!!」
その声はかすかに震えていて・・・。
踵を返したイザークと目が合った・・・。
そのアイスブルーの瞳は潤んでいた様に見えた。
イザークは私から顔を逸らすと、私の横を通り抜け、
部屋を出て行ってしまった・・・。
ディアッカもイザークを追って外に出た。
取り残されたアスランの瞳に光は無い・・・。
ただ、うっすらと涙を浮かべ、ニコルの軍服を強く握っていた。
「アスラン・・・」
何を言ったらいいのか・・・
「俺を・・・
ストライクに・・・キラに討たれそうになった俺を庇って・・・。
ニコルは死んだんだ・・・。」
アスランは声を震わせながらその場に座り込み、
声を殺して涙を流した・・・。
「アスラン・・・」
私の瞳にも涙が滲んだ・・・。
ニコル・・・
優しいニコル・・・
いつも笑顔で・・・可愛くて・・・
本当に弟みたいな存在だった・・・。
『戦争が終わったら、僕のピアノで歌ってくださいね。』
そう・・・約束したのに・・・。
気が付けば、自然とアスランの元へと向かっていた足・・・。
俯いたままのアスランの濃紺の髪に触れようと手を伸ばした・・・。
抱き締めたい・・・
自然と体がそう動いていた・・・。
その私の手首をアスランが掴んだ・・・。
「アス・・・ラン?」
「君の居場所は・・・ここじゃないだろ・・・?」
その言葉に目を見開いた。
「イザークに・・・悪い。
俺はに甘えていい男じゃないんだ・・・。」
冷たく言い放たれた言葉・・・。
キミノイバショハココジャナイ・・・
「ごめ・・・」
そっと緩められた手・・・
解放されたのと同時に、私は部屋を飛び出した・・・。
キミノイバショハココジャナイ・・・
分かってる・・・
そんなの・・・分かってるよ・・・
とめどなく溢れる涙・・・
ニコルが居なくなって・・・
アスランに突き放されて・・・
私はどうしてここに居るの・・・?
何の為に戦っているの・・・?
苦しくて・・・
胸が苦しくて張り裂けそうだった・・・。