「おい!!アスラン!!聞いてるのか!?」
ディアッカは車を運転しながら助手席に座るアスランに声を掛けた。
「え・・・あぁ、すまない。」
やっぱり聞いてなかったか・・・。
ディアッカは小さく溜息をついた。
戦場の歌姫
ACT.6 動き出した想い
アスランの脳裏には去って行くイザークとの姿が焼き付いていた
繋がれた2人の手・・・。
どうしてこんなに気になってしまうのだろうか・・・?
「なぁ・・・気にしてんの?」
ディアッカはふとアスランに問い掛けてみた。
「え・・・?何がだ?」
「イザークとだよ。気になってるんだろ?」
ディアッカの核心を突いた問い掛けにアスランの心臓が跳ねた。
「いや・・・別に?」
そして、何も気にしていないような素振りで軽く返した。
「ふぅん・・・。ま、いいけどさ。」
再びアスランは顔を外に逸らす。
海岸線を走る車・・・。
頬に当たる潮風が心地良く、眼前に広がる広大な海を見ながら、
アスランは自分でも気付かぬ内に深い溜息をついていた。
その溜息をディアッカが見逃す筈も無く、
彼もまた、軽い溜息をつく。
クルーゼ隊トップの2人の心を奪って縛り付けるという少女の存在・・・。
もしも、2人がそんな素振りを見せなかったら、
自分が彼女に惚れ込んでいたかもしれないな・・・
ディアッカでさえそう感じてしまうほど、
という少女は魅力的だったのだ・・・。
車はモルゲンレーテの工場区脇に止まった。
日が傾きつつある夕暮れ時。
間もなくイザーク、と合流する時間になるが
大きな手掛かりは全く掴めていなかった。
正直、アスランは心の奥底で願っていた。
出来れば・・・
もう足付きがオノゴロを脱出している事を・・・。
キラと戦うのは辛い・・・。
大事な親友・・・。
そして、にとっても大事な友人。
キラと戦うという事は、
キラと・・・
2人を傷付けるという事・・・。
それは十分承知している。
でも、仕方が無いのだ・・・。
アスランもも軍人なのだから・・・。
戦う道を選んでしまったのだから・・・。
『トリィ!!』
聞き覚えのある機械音・・・。
アスランははっと顔を上げた。
工場区のフェンスを越えて飛んで来たロボット鳥に目を見開く・・・。
あれは・・・
「ロボット鳥ですね。可愛いなぁ・・・。」
ロボット鳥はこちらへ羽ばたいて来て、
手を伸ばしたアスランの手の甲に止まった。
「トリィーーー」
そして、この鳥の名を呼ぶ声・・・。
「あ・・・あの人のかな・・・?」
ニコルがフェンスの向こうの人物に目を向けた。
アスランの前に映ったのは・・・
オレンジの作業服に身を包んだ親友の姿・・・。
キラ・・・・
キラもまた、トリィが止まっている手の主を見て目を見開いた。
「君・・・の?」
「・・・うん。」
アスランの手から、キラの手へと移動するトリィ・・・。
それを確認したアスランはキラに背を向けた。
「友達に!!」
キラの声にアスランは再び振り返る。
「昔・・・大事な友達に貰った・・・大事な物なんだ・・・。」
キラの精一杯の想い・・・。
「・・・そう・・・。」
アスランもまた、切ない瞳でそう返し、再び背を向け仲間の元へと戻って行った・・・。