「毛布一枚だと風邪引くぞ。」



一人、月を仰ぐ私の元を訪れる一人の人間・・・





「イザークも・・・眠れないの・・・?」





月の光に照らされた銀髪がサラサラとなびき、
その美しさに私は目を細めて彼を見た・・・。












戦場の歌姫

 ACT.5 愛する事、愛される事










「ホラ、着てろ。」



「あ・・・ありがと。」




イザークが羽織っていた赤い上着を私に放り投げた。


彼の不器用な渡し方に少し笑みがこぼれる・・・。







「地球から見る月って、何か新鮮ね・・・。」



「そうだな・・・。」





多くは語らないイザーク・・・。



知ってる・・・


それが、彼の優しさなんだって・・・。





何も言わないし、何も聞かない・・・。



それが何だか妙に安心出来てしまう自分が居た。





何なんだろう・・・この気持ち・・・。










「・・・アスランに・・・会いたいか?」



「・・・え?」





思ってもみなかったイザークの一言。


イザークの口から、『アスラン』と出るなんて・・・。








「相変わらず、アスランしか見えてないんだな・・・。」




イザークは私の目を見ない・・・。


ただ、月を仰ぎながら呟く。






「分かってるんだけどね・・・。
 アスランと私に未来なんて無いって事くらい・・・。」




溜息と共に発した言葉・・・






・・・」


「・・・なぁに?」




イザークが改まって私の名を呼んだ。


その声がいつも以上に真剣だったから、
私は思わず彼の方を向いてしまった。






互いの瞳がぶつかり合う・・・




涼しげなアイスブルーの瞳・・・


彼の世界に飲み込まれてしまいそう・・・







「俺も諦めが悪いな。」


「イザ・・・」


「ここまでアスランに熱を上げてる奴なのに・・・。
 俺はまだ、お前の事が好きらしい。」




イザークの突然の告白・・・



出来れば、私の思い違いであって欲しいと思っていた・・・。




私は・・・何と答えたらいいの・・・?







の気持ちは十分に承知している。
 その上で、もう一度言う。
 アスランが好きでも構わない。
 俺を・・・恋愛の対象としては考えてくれないか?」








頭が真っ白になった・・・。





私が誰を想っていても・・・


それでも私が好き・・・?






まるで私がアスランを想うように、
イザークも私を想ってくれている。




「・・・・・・?」




涙が零れた・・・。


静かに私の頬を伝って行く涙に、イザークは目を見開いた。









「イザーク・・・ありがとう。」



自然と口から出た言葉・・・。




私・・・


この人なら愛せるようになるのかも知れない。






「イザークは十分、恋愛対象として見てる・・・よ。」





意外だった・・・。


私、いつの間にかイザークにそんな事を口走っていた。







「まだ・・・アスランを忘れられないのは事実なんだ。
 でも、分かってるから。
 いずれ、別の人を想う日が来るんだって・・・。」





イザークは黙って私の話を聞いてくれた・・・。





「急がないさ。」





彼は私の頭に軽く触れ、中へと入って行った・・・。














TOP | NEXT