戦場で受けた傷・・・


彼がそれを消さなかった理由は




その傷に誓った何かがあるから・・・。





その誓いを果たすまで



彼の傷が消える事はないのだろう・・・。














戦場の歌姫

 ACT.5 愛する事、愛される事
















「初めまして。アンドリュー・バルトフェルドだ。」



「初めまして。です。
 降下早々、色々とご迷惑をおかけしました。」



「いやいや。無事で何よりだ。」





ようやく熱が下がった私は医師から許可が下り、
イザーク達から2日遅れてジブラルタルを指揮するバルトフェルド隊長と面会した。



『砂漠の虎』



ザフトでその異名を持つ彼は、
想像とはかけ離れた容姿の持ち主だった。


至って穏やかそうなその表情。

まだ若いんだ・・・。


私の第一印象はそれだった。





「降下早々で悪いが、我々は今、アークエンジェル討伐命令を受けている。
 君達の言う、『足付き』の事だな。」


「存じております。我々もその作戦の支援をする様、クルーゼ隊長より指示を受けておりますので。」


「なら、早速作戦に参加してもらう事になる・・・が、
 、君には基地で待機してもらう。」



「・・・え・・・待機・・・ですか?」




「君はまだ完全に回復しきっていないだろ?」



バルトフェルド隊長の言う事は最もだった・・・。



けれど・・・


いつもそうだ。

私だけ・・・足手まといになっている気がして嫌だった・・・。




「心配するな。足付きは今度こそ俺達で落として来てやる。」



イザークの意外な一言だった・・・。



私を気遣ってくれたのだろうか。



彼のその一言で、私の中の不安が少し治まった気がした・・・。








「十分分かっているとは思うが、砂漠は暑いぞ。
 部屋で休んでいたまえ。体に障る。」


「ありがとう・・・ございます。」










!!」


部屋を後にした私を追って来たのはディアッカだった。


「・・・なぁに?」


「・・・その・・・大丈夫・・・か?」


「え?」


「何かさぁ、精神的に疲れてるんじゃないかな・・・って思って。」




ディアッカの言っている事は当たっていた。


地球に降下してからの私は何かがおかしい。


自分でも良く分からなかった。

だから、自覚していなかったのかもしれない。


でも、ディアッカに言われてようやく納得した。



やっぱり、私は不安定になっているんだ・・・。





「ありがとう・・・。色々あって、疲れてるみたいだね。
 さすがはバルトフェルド隊長。
 お見通しだったのかな?」


これ以上心配かけないように、ディアッカに笑って返事をした。




「あのさぁ、この際意地張るのやめろって。
 何となく分かってるんだぜ?」


「ディアッカ・・・?」




「好きなんだろ?アスランが・・・。」




ディアッカの発言に私は絶句した・・・。



そんなに私の気持ちは顔に出ているのだろうか・・・?


もしかしたら、この気持ちを知らないのはアスラン本人だけなのかも知れない・・・。




そう思ったら、何だか胸が苦しくなって来た。












TOP | NEXT