『やめて下さい。追悼慰霊団代表の私の居る場所を戦場になさるおつもりですか?』
ラクスの一言で互いの衝突は無く、双方は攻撃を停止した。
彼女の力はやはり凄いのだと改めて実感させられた気がして、
何だか凄く悲しくなってしまった・・・。
私は戦場に出ても、彼女には敵わないのかな・・・。
戦場の歌姫
ACT.4 心の在り処
イージスからアスランとラクスが降りて来た・・・。
しっかりとアスランに抱きかかえられて降りて来るラクス嬢が身に纏っている宇宙服は何故かお腹の部分が異様に膨らんでいて・・・。
一瞬、まさかアスランの子・・・!?と思ってしまった自分は意外と間抜けだったと思う。
そんな2人の姿が眩しく見えて・・・
やっぱり彼の隣に立てる女性は彼女しか居ないんだと感じた。
「!!」
私の存在に気付いたラクスがアスランの腕を抜け、私の元に駆け寄ってきた。
「ラクス・・・無事で良かったわ。」
「ご心配お掛けしましたわ。」
にっこりと微笑むラクスに思わず私も笑みをこぼした。
「、ラクスを頼むよ。」
「うん。」
私はラクスを連れ、自室へと向かった・・・。
「本当にお久しぶりですわ。
ってば、プラントにも戻って来てくださいませんし・・・。
私、本当に寂しかったのですよ?」
「ごめんね。」
「いいえ。がお元気そうで安心しましたわ。」
しばらく見ない間に、ラクスはまた一段と可愛くなったみたい・・・。
ラクスと共にステージで歌ったあの華やかな世界が鮮明に蘇って来た・・・。
華やかなドレスも・・・キラキラ輝く世界も・・・
未練が無いと言えば嘘になるけれど、今では無縁の世界の様に感じられた・・・。
やっぱり、華やかな表舞台には彼女がピッタリだ・・・。
「?どうかしました?」
「あ、ううん。何でもない・・・。
それより、せっかくアスランと会えたのにごめんね。
あんまり話す時間、作ってあげられないかも・・・って。」
「仕方ありませんわ。」
「すぐに迎えの艦と合流出来るから、狭い艦だけど我慢してね。」
「いいえ、十分ですわ。」
ビーッ・・・
部屋のチャイムが鳴った。
ヴェサリウスに乗る唯一の女である私の元を訪れる人間は少ない。
少なくとも、赤を着ていない人間がここを訪れた事は無かった。
「アスランでしょ?どうぞ。」
相手がアスランだとすぐに予想できた私は、インターホンで応じる事無く、ドアの向こうの人間に声を掛けていた。
プシュー
すぐに開かれた扉の向こうにはやはりアスランが立っていた。
「アスラン、隊長は何て?」
「あぁ、プラントから迎えの艦が出たから、ヴェサリウスもそっちへ向かうって。」
「本来の任務はラクス嬢の救出だものね・・・。」
危機を脱した足付きは間もなく月艦隊と合流するだろう。
それまでにイザーク達が間に合うかどうか・・・。
「私、何かラクスに飲み物持って来るね・・・。」
「まぁ、ありがとうございます。」
アスランと入れ替わりで部屋を出ようとする。
「久々なんでしょ?ゆっくりしてって。」
アスランの横を通過する時、私がニッコリ微笑んで彼に告げると、
「あぁ、すまない。」
彼は苦笑しながらそう答えた・・・。
2人に気を遣ったわけじゃない・・・。
私が耐えられなかっただけ。
2人の微笑ましい光景を目の当たりにするのを・・・。