「、体はもう大丈夫なのか?」
「うん。お陰様で。」
プラントに帰国して3日・・・。
不測の事態に、私達は休む間もなく再び戦場へ出向く事になった。
「ラクス・・・無事だといいね・・・。」
「あぁ・・・そうだな・・・。」
戦場の歌姫
ACT.4 心の在り処
自宅療養を言い渡された私は、プラントに帰国後すぐ、自宅へと戻った。
アスランは例の新型MSについての証言報告を行う為、クルーゼ隊長と議会に出向いたり忙しかったらしい。
そんな中プラント中に広まった衝撃的なニュース。
それは、ラクス・クライン消息不明のニュースだった。
婚約者であるアスランがのんびり休暇を取っている訳にもいかず、
ヴェサリウスは急遽、予定を早めて前線に戻る事になった。
「あ・・・」
ヴェサリウスの搭乗口まで来た所で、私達はクルーゼ隊長と話し込むアスランの父を見つけた。
向こうも私達に気付き、視線を向ける。
私達は慌てて2人に敬礼をした。
「久しぶりだな。。」
「はい。お久しぶりです、パトリック様。」
アスランの父に会うのは本当に久しぶりだった。
元々、お忙しい方だ。
アスランの自宅に行った所でいつも不在で、居る事の方が珍しい。
「君の活躍は聞いている。君に軍人としての才能があるとは思っていなかったな。」
「ありがとう・・・ございます。」
「アスラン、ラクス嬢の件は聞いているな?」
「はい、しかし・・・ヴェサリウスが・・・?」
「おいおい、冷たい男だな。彼女は君の婚約者だろう?」
「婚約者が行方不明なのに、お前がプラントでのんびり休暇・・・という訳にはいかないのだよ。」
3人の深刻な会話に黙って耳を傾ける。
先に戦艦に入る事も考えたが、どうもタイミングを失ってしまい、
私はその場から動けずにいた・・・。
「彼女はアイドルなのだ・・・。クルーゼ、頼んだぞ。」
パトリック様はそう告げると、私達に背を向け、去って行った・・・。
「彼女を助けて英雄のように戻れ・・・と?」
「もしくはその亡骸を号泣しながら抱いて戻れ・・・という事さ。」
クルーゼ隊長の放った言葉に、私もアスランも動揺の色が隠せなかった・・・。
とんでもない事を言う人だ・・・。
「どちらにせよ、君が行かないと話にならないとお考えなのだよ。ザラ委員長は。」
隊長は不敵な笑みを浮かべ、ヴェサリウスへと入って行った・・・。
私とアスランも複雑な顔で後に続くのだった・・・。
「・・・眠れないの・・・?」
その夜、眠れない私は艦内を散歩していた。
展望デッキに出て宇宙でも眺めていたら眠くなるだろうと思って・・・。
そしたら、デッキには先客が居た。
無重力に身を任せ、体を浮かせていたのはアスランだった。
アスランは背後から聞こえる声に振り返る。
揺れる濃紺の髪からの懐かしい香りに思わず笑みがこぼれた。
「も眠れないのか・・・?」
「うん・・・。落ち着かなくて・・・。」
今のヴェサリウスには私とアスランしか前線に出れる人間が居なくて・・・。
ちょっと不安だったりする・・・。
「こうやってゆっくり話すの、久しぶりじゃないか・・・?」
「そう・・・だね。」
夜の展望デッキはあまりに静かで・・・。
物音一つ聞こえない・・・。
宇宙に居たら、昼も夜も関係ないんだけど・・・
それでもやっぱりこの時間帯は人の心を沈ませる時間なんだな・・・と感じた。
「ごめんな、。」
「え?何が・・・?」
アスランが突然私に謝ったけれど、その理由に全く見当が付かなかった。
「何か、俺も色々あって・・・の事、あんまり気遣ってやれなかったから。
ミゲルの事・・・辛かっただろ?」
「そんな・・・私こそ。倒れちゃったりして迷惑かけたよね。」
「仕方ないさ。恋人だったんだろ・・・?」
「は・・・?誰が・・・?」
「誰って・・・ミゲルだよ。」
ミゲルが私の恋人・・・?
「まさか。ミゲルと私はそんな関係じゃないよ。
同期だったから色々相談に乗ってもらってただけで・・・。」
「・・・そうだったのか・・・?」
「うん。一番信頼してた仲間。
だから・・・辛かったんだけどね・・・。」
まさか・・・私とミゲルが付き合ってるなんて思われてたなんて・・・。
「私とミゲル、そんな風に見えたの・・・?」
「・・・ディアッカが絶対にそうだって言うから・・・。」
「・・・ディアッカの奴・・・。」
私が好きなのは・・・
アスラン、あなたなの・・・。
そう言えたらどんなに楽だろう・・・。
流れる星を眺めながら、
伝える事の出来ないこの想いを乗せ、
ヴェサリウスは宇宙の闇を進んで行く・・・。
私の想いが行く先に、何が待っているのだろう・・・。