「!!演習、終わったのかぁ?」
「うん。今から休憩に行く所なの。」
腰まで伸びた茶色の髪の毛を二つに束ね、
堅苦しい真っ赤な軍服を身に纏った少女。
が軍に志願してもう1年半になる。
は16になり、軍でもトップガンと呼ばれる赤服を与えられた。
軍での彼女は優秀で、年上だが同期であるミゲル・アイマンも一目置く存在だった。
「俺も休憩なんだ。一緒に行ってもいいか?」
「もちろん。」
戦場の歌姫
ACT.2 開かれし扉
以前から悪化しつつあった地球とプラント間の情勢。
7ヶ月前の「血のバレンタイン」で情勢は一気に悪化した。
農業用プラント、「ユニウスセブン」に仕掛けられた核攻撃により、
プラントは罪もない民間人が犠牲となった・・・。
母からの通信で、その犠牲者の中にアスランのお母様も居たと聞かされた時、
私の心は胸で締め付けられたのを今でも忘れない・・・。
それ程に・・・
まだ、彼の事が愛しくて堪らない・・・。
想いは褪せる所か・・・
加速していく一方だった・・・。
「そういやさ、明日から新人来るんだってよ。
しかも5人!!
俺、指導係に指名されちまったよ・・・。」
「へぇ・・・大変ねぇ・・・。」
私の所属するクルーゼ隊は、ザフト軍の中でも一目置かれるエリート部隊。
そんな部隊に配属された事が、正直嬉しかった。
もしかしたら、ステージの上よりも自分の力が発揮できる場所なのかも知れない・・・。
歌を歌うのは好きだったけれど・・・
ステージを離れ、プラントを離れてようやく分かった。
私の歌が・・・ラクスより劣る理由・・・。
私の歌は・・・心に響かない・・・
誰か一人の為に歌われた歌が・・・他の人の心に響くはずが無いんだ・・・。
「・・・で?その新人さんとやらは優秀なの?」
「・・・赤らしいしなぁ・・・。」
「ふぅん・・・。」
戦況も日々変化している・・・。
このままだと前線に出るのも時間の問題かもしれない。
私も・・・
この手を血に染めないといけない日が来るのだろう・・・。
「?どこ行くんだ?
もうすぐ新人が来るってのに・・・。」
翌日の午後の事だった・・・。
「指導係はミゲルなんでしょ?私には関係ないもの。
射撃練習でもして来るわ・・・。」
踵を返して射撃場へと足を運ぶ。
本当・・・新人なんて興味ない。
私は私の仕事をするだけ・・・。
足手まといにならないように・・・
自分の信じた道を進める様に・・・
14の春のあの日・・・
私は捨てたんだ・・・
愛する人から愛されるという願いを・・・。