テーブルに並べられたコーヒーとクッキー。



お母様の手作りのクッキーも本当に久しぶりだったけれど、
あまりの緊張で手が付けられなかった。




どうしても落ち着かなくて・・・。


視線を斜め下に落としながら、時々アスランの表情を伺う。


そんな落ち着きの無いに見兼ねた母は、

、少しは落ち着いたらどうなの?
 アスラン君はもっと緊張しているのだから。」



苦笑しながらに告げた。














戦場の歌姫


   ACT.10 祈りの果てに
















と・・・結婚したいと思っています。
 そのお許しを頂く為に伺いました。」




アスランの一言に、俯いていたは頬が熱くなるのを感じた。



私の気持ちは両親も知っている。



ずっと昔からアスランの事が好きで・・・。



それが原因で他の人からの婚約も断った。


想いを断ち切る為に軍にも志願した。





だから、両親にとっても望ましい申し出。


この日をどんなに待ち侘びた事か・・・。




叶うはずも無いと思っていた娘の想い。



真剣な眼差しで自分達の前に座る娘の恋人。







は昔からアスランの事しか頭になかったからね。
 こんな日が来てくれる事を我々もずっと望んでいた。
 どうかを幸せにしてやってくれ・・・。」





頭を下げながらそう答える両親を目の前に、
の目頭が熱くなった。



嬉しさと・・・幸せな気持ちが同時に押し寄せる。






「ありがとう・・・ございます。」




私もアスランに合わせて深く頭を下げた。









、ご両親と話したい事があるんだ。
 ちょっと席を外して貰えないか?」



「え?・・・私が居たら話せない事?」



「そういう訳じゃないんだけど、どうしても話しておきたい事があるんだ。
 後でにもちゃんと話すから・・・。」



首を傾げながら問い掛けてくるの頭に軽く触れた。



「・・・分かった。庭で散歩でもしてくるね。」
















「それで・・・お話と言うのは?」



の父の問い掛けに、アスランは一息つくと口を開いた。





「プラントを・・・出ようと思っています。」




アスランの瞳は、真剣そのもので・・・。


その言葉が本気だという事は目が物語っていた。





















こうやってのんびりと庭を歩くのも久しぶり。



が不在の間も庭の花は美しく咲き乱れていた。



きっと、お母様がお世話をしてくださっていたに違いない。




一番お気に入りのバラ園へと足を踏み入れたは、綺麗に咲く2色のバラに目を細めた。



赤と白のバラの花がバランス良く咲いている。






「何を話しているんだろ・・・。」




花を見つめながら、アスランと両親の会話が気になる。



私より先に両親に話したい事・・・。


全く見当がつかない。





「これからは私がちゃんとお世話するからね。」





バラの花に優しく声を掛けたは、バラ園を後にした。




















「私達はの意見を尊重するわ。
 昔からずっとそうして来たもの。
 じゃなければ軍になんて危険な場所にだって行かせないわ。」




「ありがとうございます。」





出されたコーヒーを飲み干したアスランは立ち上がった。




の返事はすぐには聞けないと思います。
 また・・・改めて伺います。
 その頃には処分も決まっていると思いますから。」








屋敷を出たアスランは、迷わず庭園の奥へと向かった。



が庭で過ごす場所と言ったら、昔から変わらない。



それを良く知っているアスランはその場所へと足を進めていた。














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