「以上で報告を終わります。」



「ご苦労。座って良いぞ。」




カナーバ議長代理に報告を終えたアスランは彼女に背を向け、その先に座るの隣に腰を下ろした。






「アスラン・ザラ、ディアッカ・エルスマン、
 以下の3名の処分については追って連絡する。
 今日の会議はこれにて終了する。」







「ふぅ・・・。」



背筋を伸ばして腰掛けていたは、ぐったりとしていた。




「処分は追って決定する・・・ねぇ。
 どうなるんだろうな、俺達はさ。」





「さぁね・・・。」



次々と会議室を出て行く議員達。


その中に、議員の上着を身に纏ったイザークの姿もあった。




イザークは達の元へと歩み寄って来る。










戦場の歌姫

    ACT.10 祈りの果てに












「すまんな。なるべく弁護してやりたかったが・・・。」



「仕方ないよ。イザークだってここでは新米なんだし?」




かつて、顔面を横切っていた痛々しい傷はキレイに取り除かれ、
イザークの本来の美しい姿が戻っていた。


それは・・・イザークにとってストライクに対する憎しみが消えたという事なのだろうか・・・。






キラとカガリと3人で何か話している姿は見たけれど、
何を話しているかまでは聞き取れなかった・・・。








「まだ仕事残ってるんだろ?行かなくていいのか?」



「あぁ、そうだったな。」



イザークは踵を返し、部屋を出て行った。





「さて、俺達は帰るとしますか。」




ひとまず処分が出るまでは自宅待機を言い渡された私達。



「アスランは・・・マンションに戻るの・・・?」



「そうだな・・・。でも、その前に寄りたい所があるんだ。」




「・・・どこ?」



の家。今から行っても大丈夫か?」





の胸がドクンと高鳴った。




『結婚して欲しい・・・』





最後の出撃前にアスランがくれた言葉が蘇る。




結婚・・・


アスランのお嫁さん・・・


小さい頃から夢見ていた事・・・。




本当に夢で終わるんだと思っていた事が、叶う所まで来た・・・。






「・・・うん。」







「なになに?もしかして、『お嬢さんを俺に下さい』ってヤツ?」





「ディ・・・ディアッカ・・・!!」



ディアッカにからかわれ、は真っ赤になった。



「そりゃ、きちんとご両親に挨拶は基本だろ?」



「マジ!?そこまで話は進んでるワケ!?」



「あんまりのんびりしてられないからな・・・。」



「・・・・?」




私にはまだ、この時のアスランの言葉の意味が理解出来ていなかった。



のんびりしてられないって・・・どういう事なんだろう・・・?










ディアッカと別れた私達はエレカに乗り、自宅へと向かった。



移動中、アスランの表情は終始強張っていて・・・。




緊張してるのかな・・・?




そう思いながら、私は隣に座る愛しい人の冷えた手にそっと触れた。





「緊張してる・・・?」



「そりゃあ・・・ちょっとは・・・な。」



そう言いながら握り返された手に、の顔が綻んだ。











エレカがゆっくりと邸の門をくぐる。





玄関先で待つのは使用人ではなく、の両親だった。



その様子に、アスランの緊張が高まる。




「ゴメンね。帰る前に連絡入れたら玄関で待ちたいって言うから・・・。」



「・・・うん。平気。
 ・・・行こうか。」





アスランはゆっくりとの手を解放すると、
先にエレカから降り、側のドアへと回った。




差し伸べられた手を恥ずかしそうに取り、外へと出る。



そんな光景を両親に見られているのが何となく恥ずかしかった。






「お帰りなさい、。アスランも。」



「ただいま帰りました。」



両親に迎えられ、屋敷へと入る2人。


そっと、包み込むように握られた手にこみ上げる想い。





ここへアスランが来るのは初めてではない。


けれど、それは『幼馴染』としての訪問であり、
『恋人』としては初めて。







の胸はいつになく高鳴っていた。













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