「お前、馬鹿じゃないのか!?」
ヤキンから無事に脱出して、カガリからの第一声が罵声の言葉だった。
「仕方ないだろ。ああするしか思い浮かばなかったんだから・・・。」
「その後先考えずに行動する性格、何とかしろよ!
迷惑するのは周りの人間なんだぞ!!」
「アスランもカガリも・・・それくらいにしなよ。
せっかく皆無事だったんだから・・・。」
さすがにルージュに3人も入り込んでいるとキツイものがある・・・。
思うように移動もままならないし・・・。
その上、カガリの罵声・・・。
戦場の歌姫
ACT.10 祈りの果てに
「が聞いたらどんな反応するか分かってるのか?
下手すると殴られるぞ?」
「・・・カガリじゃないんだから・・・は殴ったりしないよ。」
「何だと!?」
「カガリ、前科があるんだし・・・。」
キラの言葉に、カガリが気まずそうに頬を赤く染めた。
「キラ・・・カガリに殴られた事あるのか?」
「うん。まぁね。」
「う・・・煩いぞお前ら!!
と・・・とにかく!!早くクサナギに戻る方法を考えろ!!」
「考えろって言われても・・・。」
「素直に助けを待つしかないんじゃない?
大丈夫だよ。そんなに離れてるわけじゃないんだから・・・。」
「ホント、キラはお気楽だよなぁ・・・。」
そんなキラの瞳にも悲しみが滲み出ていた。
ようやく終わった戦争・・・。
でも、失ったものも大きかった。
フレイ・・・
キラは目の前で撃ち落とされてしまった彼女の姿を思い浮かべた。
父親を失ったアスランとカガリもまた、切ない瞳で宇宙を仰ぐ。
「イザーク!!あそこ!!」
静かに漂うルージュが視界に映った。
「カガリの機体!!」
デュエルはストライクルージュに向かって機体を走らせた。
「おい!アスラン!!あの機体、デュエルじゃないか!?」
アスランもまた、カガリの声に視線の先を向ける。
「・・・イザーク!?」
間違いない・・・。
デュエルがこちらに向かって来る。
まさか・・・デュエルが捜索をしてくれていたとは・・・
「アスランっ!!」
コックピットが開かれ、中から現れたのはイザークでは無く、だった。
「・・・!?」
パイロットスーツに身を包んだが機体から宇宙へと飛び出す。
アスランもまた、狭い機体から身を乗り出し、体を外へと押し出した。
「アスランっ!!」
涙を浮かべながらアスランを求める・・・。
その小さく、華奢な体を、アスランはしっかりと抱き締めた。
「・・・」
夢じゃない・・・
が自分の腕の中に居る。
「無事で・・・良かった・・・。」
を腕の中に収めて初めて、
自分がヤキンでしようとした事を後悔した。
俺は・・・
を置いて逝こうとしていた・・・。
取り残されたの気持ちも考えずに・・・。
1人取り残されるの姿を想像して身震いした。
を手放したくないと思ったのは自分なのに・・・。
イザークに嫉妬して、ようやく気持ちを伝えて手に入れた想いなのに・・・。
俺は馬鹿だな・・・。
カガリの言う通りだ・・・。
「残念。」
「・・・?何が残念なの?」
「ここじゃ、ヘルメットが邪魔でキス出来ない。」
「な・・・何言ってるのよ!!」
にもっと触れたい・・・。
こうして君を再び抱き締める事が出来るのが、こんなにも幸せな事だなんて・・・。
「・・・皆で帰ろう?
世界はこれから変わって行くんだから・・・。」
「・・・そうだな。」