激しい閃光を放つヤキン・ドゥーエ。



ヤキンの爆破と同時に、アイリーン・カナーバ女史の放送が宇宙空間に響き渡った・・・。





それは・・・


停戦の申し入れ・・・。







長きに渡った戦争が、

今、終わりを告げようとしていた・・・。











戦場の歌姫


 ACT.10 祈りの果てに








「・・・」



ようやく戦争が終わった・・・


けれど、エターナルに歓喜の声は上がらない。



コックピットのガラスに手を添えて、ラクスは不安な表情で宇宙を見つめる・・・。




未だ、エターナルに戻って来ないパイロット・・・。




キラを待つラクス・・・。


そして、アスランを待つ・・・。








「戻って・・・来るよね・・・?」





私を置いて・・・いなくなったりしないよね・・・?



募る不安・・・。



終わった戦争に、心から喜べない・・・。




アスランが居なくちゃ・・・


戦った意味が無いの。




一緒に幸せになろうって約束したんだから・・・。





慌しくMSや戦艦が往来する宇宙空間に、
未だ、私の求める赤い機体は現れない。





さん!アークエンジェルから入電です。」




送られて来た通信にすら気付かなかった私。


代わりに受けてくれたクルーが私を呼んだ。



「私・・・宛て?」



「はい。」




アークエンジェルからだなんて・・・。



一体何が・・・




「・・・はい。」



?俺だ!!』


「・・・ディアッカ・・・。」




画面に現れたのはディアッカ。


頭に巻かれた包帯が痛々しい・・・。



「ディアッカ・・・無事だったのね。良かった。」



終盤から大きく位置が離れてしまったアークエンジェルの状況はなかなか伝わらず、
どれだけの被害を被っていたかも分からなかったけれど、
通信が送れるくらいなら大丈夫だろうとは安堵する。




『今からそっち行く。アスラン、まだ見つかってないんだろ?』



「え・・・?」


『イザークがアークエンジェルに居るんだ。
 デュエルなら損傷も酷くないから出せるって言うからさ。』



イザーク・・・が?


『とにかく、イザークがエターナルに向かってるからさ、デュエルに乗って探しに行って来いよ。
 お前、そんな所で待ってるだけの女じゃないんだろ?』



「・・・そう・・・だね。ありがとう。」







涙が溢れそうになる瞳を押さえ、ブリッジを後にした。



帰りを待つだけなんて性に合わない。



アスランを探しに・・・迎えに行こう。




待ってるだけの女なんてごめんだから・・・。





!!」



ブリッジを出た私をラクスが呼び止める。



「ラクス・・・」


「私も・・・」



私も行きたい・・・。


そう瞳で訴えるラクスに、私は目を細めた。




「大丈夫。キラもきっと無事だから・・・。
 ここで待ってて。ね?」



「・・・お気を付けて・・・。」


「大丈夫だよ。もう戦争は終わったんだから。」





















『デュエル、収容完了しました。』


パイロットスーツに身を包み、格納庫へと入ったら、
目の前にはデュエルの姿があった。


コックピットから姿を現す懐かしい姿に微笑みを漏らす。



「久しぶりだな。」


「元気そうで良かった。」




目の前で揺れる銀髪に、
アイスブルーの瞳。




「迎えに行くんだろ?あの馬鹿を。付き合ってやる。」



「・・・ありがとう。」






イザークの温かい手に誘導されて、デュエルに乗り込んだ。





アスラン・・・今行くからね・・・。













「ディアッカの馬鹿から聞いた時には驚いたんだぞ。
 アスランと2人でプラント飛び出したって・・・。」



「・・・ごめん。」



「・・・アスランと・・・くっついたみたいだな。」



「うん。」





狭いコックピット・・・。


かつて、私が愛そうとしたイザークと2人きり。


でも、不思議と緊張や気まずさは無かった。




「アスランも・・・ようやく自分の気持ちを自覚したか。」


「イザークも気付いてたの!?」



「お前、馬鹿だろ・・・。
 気付いてないのは本人同士くらいだぞ。」




「う・・・」


ディアッカにも同じ様な事、言われたっけ・・・。


何だか、今まで色んな人を振り回してた自分が馬鹿みたい。







「これから・・・どうするつもりなんだ?」


「・・・う〜ん。アスラン次第・・・かなぁ?」







あの時・・・


イザークとカーペンタリアで別れたあの日・・・。


また、こうやって何事もなく会話を交わせる日が来るなんて思ってもみなかった。



私にとって、イザークはかけがえの無い人。



恋人としては見れなかったけれど、
イザークにはすごく感謝してる・・・。


こうして、離れてしまった後でも気に掛けてくれるイザークの為にも、
幸せにならなくては・・・


そう思った・・・。










TOP | NEXT