「、お疲れ様ですわ。」
ステージから降りて来た所に待つのは、友人であり、同僚でもあるラクス・クライン。
「ラクスこそ。お疲れ様。」
自分で言うのも恥ずかしい話だけれど、私とラクスはプラントの歌姫という存在で・・・。
でも、私の歌はラクスには敵わない・・・。
戦場の歌姫
ACT.1 淡い淡い恋心
ラクスの奏でるメロディーはプラント中の人々を魅了する。
その壮大で深い歌声・・・。
私にはとても奏でる事が出来ない・・・。
そんな彼女が羨ましくて・・・
そんな彼女の才能が妬ましくて・・・。
彼女に抱く感情はそれだけでは無かったけれど・・・。
「ラクス、。お疲れ様。」
手から溢れる程の真っ白なバラの花束を抱え、アスランがステージ脇に現れた。
「まぁ、素敵なお花。」
「今日の記念に・・・。」
「ありがとうございます。」
その真っ白な花束をラクスは嬉しそうに受け取った。
「にも・・・。」
「・・・ありがとう。」
私は複雑な想いでその花束を受け取る・・・。
「じゃぁ、私は着替えてくるから・・・。」
そう言って二人を残し、控え室へと戻る・・・。
アスランとラクス・・・か。
お似合いすぎて・・・どうする事も出来ない・・・。
ラクスがもっと嫌な子だったら良かったのに・・・。
「様、花束が届いております。」
控え室の前で係員から渡された花束・・・。
真っ赤なバラの花束・・・。
一体誰から・・・?
添えられたメッセージカードを手に取る。
『心を込めて・・・ イザーク・ジュール』
イザーク・ジュール・・・。
どうして彼が・・・。
真っ白なバラと・・・
真っ赤なバラ・・・
二つの花束が私の目の前で揺れる・・・。
「あの・・・花束を下さった方は・・・?」
「すぐにお帰りになられました。
確か・・・5分程前だったと思います。」
「すいません。このお花、中へ入れておいて下さい。」
私は花束を係員に預け、外へと飛び出した。
「イザーク・・・様!?」
ホール前の公園で彼を発見した私は、思わず彼に向かって叫んだ。
「・・・嬢??」
驚いて振り返る彼・・・
揺れるサラサラの銀髪にアイスブルーの瞳・・・。
初めて正面から直視した彼の顔に、思わず魅入ってしまったくらいに美しい・・・。
「あの・・・」
呼び止めてしまったものの・・・
その後の言葉が浮かばない・・・。
「とりあえず、座りませんか?」
イザークが戸惑う私に手を差し伸べ、ベンチへと誘った。
「あ・・・ありがとうございます。」
私は彼と並んでベンチに腰掛ける。
「ごめんなさい・・・ステージ衣装のままで・・・。」
「いや・・・あまりに綺麗だったので驚きました。」
彼のその言葉に思わず頬が熱くなる・・・。
「あの・・・どうして・・・花束を?
私・・・あなたに失礼な事をしました・・・。」
婚約の話を断って、すでに2週間が過ぎていた・・・。
「嬢の気持ちは分かりました。
でも・・・俺は諦め切れません。」
「・・・え?」
「初めてステージであなたを拝見した時から気になっていた。
出来れば俺は・・・あなたを妻としたい・・・。」
真っ直ぐ私を見つめる彼に胸が高鳴った・・・。
「私・・・は・・・」
生まれて初めてだった・・・
誰かから1番目として扱われた事が・・・
・・・でも・・・
「ごめんなさい・・・好きな人が・・・居ます。」
「アスラン・ザラ・・・ですか?」
「知って・・・いたんですか?」
「それを承知で申し込んだのですから・・・。」
どうしてこの人の瞳には・・・迷いが無いのだろう・・・。
どうしてこうも惹きつけられるのだろう・・・。
「確かにそうです。アスランです。
彼にラクスという婚約者が居る事も分かっています。
でも・・・まだ正式に決まった訳ではないですから・・・。
まだ退けません。」
それでも・・・
譲れない想いがある・・・。
それ程に、アスラン・ザラという人が愛しい・・・。
例え彼の一番ではなくても・・・。