好きで好きで大好きで・・・



子供の頃から側に居たあなた・・・



いつか、あなたの一番の存在になれると信じてた。




それが・・・



私のささやかな願い・・・。












戦場の歌姫



 ACT.1  淡い淡い恋心









庭一杯に咲き乱れる花・・・




その庭に響き渡る甘い甘い歌声・・・







恋焦がれて望むもの


それは夢か幻か・・・


あなたの側にいられるならば


どんな苦しみも乗り越えられる


それだけが真実・・・








!!」



歌を紡ぐ少女の元へ駆け寄る一人の少年。




濃紺の髪をサラサラと揺らし、少女の前で立ち止まった。





「アスラン。どうしたの?」



と呼ばれたその少女は、アスランと言う名の少年に顔を綻ばせた。






「ここに居たのか・・・。
本当、は庭が好きなんだな。」




「・・・花を見てると気持ちが安らぐの。」



そして・・・


あなたを見るともっと安らぐの・・・よ。




そう言いたいのは山々だったけれど・・・



そんな事を簡単に口に出せる程、素直でもなく・・・。



14歳になるにとって、恋というものはそう簡単な感情でもなかった・・・。







「おば様が呼んでるぞ。」


「・・・母様が?どうしたのかな?」




は大好きな花壇を後にし、屋敷へと足を進めた・・・。
















「じゃあ、俺は帰るよ。」




「お茶でも飲んで行けばいいのに・・・。」



「母に頼まれた物を持って来ただけだから・・・。
また今度ゆっくり・・・な。」




そう言って、アスランは玄関前でと別れた。




門を出て、姿が見えなくなるまで彼の姿を黙って見送る・・・。



一度でもいいから・・・振り返ってくれたらいいのに・・・。




そんな複雑な想いを抱きながら、は屋敷の中へと入る・・・。












「・・・婚約・・・ですか?」






「えぇ、先方から是非に・・・と申し出があったの。
とても素敵なお相手なんだけど、どうする?」



優しい母様。




私の意見を何より大事にしてくれて・・・



「お相手は・・・どんな方なんですか?」




「ジュール家のご子息のイザーク君よ。
もお名前くらいは知っているでしょう?」





「・・・えぇ。」




イザーク・ジュール・・・。


アスランの家程ではないが、なかなかの名家。



「家柄は申し分ないし、何より、遺伝子の組み合わせがとても良いらしいのよ。」



確かに・・・


彼は名家のご子息で、素敵な人だし・・・。


すごく女性から人気もある・・・。



申し分のないお相手・・・だと思う。





・・・でも・・・






「母様・・・ごめんなさい・・・私・・・」






思わず俯くに、母は優しく微笑んだ。




「・・・あなたの気持ちは分かっているわ。
残念だけど、ジュール家には私がお詫びしておくわね・・・。」




「・・・ごめんなさい・・・。」










この想いだけはどうしても捨て切れなくて・・・



例え叶わない想いだったとしても・・・



望みがある限りは抱き続けたい・・・




これは・・・



私の我儘なのだから・・・








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