くそっ・・・


何故こんなにイライラするんだ・・・。


の苦しみに気付かなかったからか?


アスランのお陰でが笑うようになったからか・・・?


に自分の気持ちを口に出されたからか・・・?













たったひとつ望むもの

   後編


















そう・・・。



確かに、に対する気持ちは恋だったのかもしれない・・・。


だが、俺ではを笑わせる事は出来ない。


それが痛い程に分かった。


それだけでも十分じゃないか・・・。






書類を床に投げ付けた直後の・・・


の泣き出しそうな顔が頭から離れない・・・。


思わず感情的になってしまった・・・。


そんな自分が心底嫌な人間に思える・・・。



を・・・傷付けた・・・。















休憩時間になり、ラウンジへ入る・・・。


見慣れたいつものメンバー。



だが、の笑顔だけがない・・・。



はどうしたんでしょうか・・・?」


「調子良くないみたい。部屋で休むって。」




俺の・・・せいだろうな・・・。



の元へ行くべきだろうか・・・




いや、行った所で何がしてやれる?



また・・・悲しませる事しか出来ないんじゃないだろうか・・・














「あ・・・。」



はっと我に返り、振り返るとの姿があった。


「喉・・・渇いちゃって・・・」


コップに水を注いだは一気にそれを飲み干した。


は黙ってその場を離れた・・・。


「イザーク・・・」


が俺の前で立ち止まる。


「ごめん・・・なさい・・・。」


ただ、その一言だけを告げてラウンジを後にした・・・。



っ!!」














イザークを傷付けた・・・。


彼は自分の気持ちに気付いてなかったのかも知れない・・・。



私の無神経な・・・




ううん。




私の自分勝手な感情で口走った結果がこれだ。


彼が怒るのも無理は無い・・・。


嫌われて当然の事をしたのは・・・自分の醜い心。














!!」


突然、誰かが私の腕を掴んだ。


声の主は・・・イザーク。


「・・・イザーク・・・?」


急いで追って来たのか・・・彼は肩で息をする。




「さっきのは何だ?」


「・・・え?」


「何故、謝った?」

「何故って・・・」


「理由を言え。」









を好きなんじゃないか・・・って憶測を口にしてしまった事。

 あなたを・・・ひどく傷付けてしまったでしょ?」



「・・・それは・・・」



俺は感情的になった自分にひどく後悔した。


こんなにも、を思い詰めさせていたなんて・・・。



「私は・・・卑怯なの。イザークに、私だけを見て欲しくて・・・。

 好きになって欲しくて・・・。そして、あなたを傷付けてしまった・・・。」


何・・・だと・・・?


・・・今のは・・・」


「分かってる・・・。私の事なんて何とも想ってないんだって・・・。

 でも私にはイザークしか見えないの・・・。ずっと・・・好きだったの・・・。」




そう・・・ずっと・・・













アカデミー時代・・・

レポートの資料が欲しくてイザーク達の通う学校を訪れた時だった・・・。



偶然通り掛った射撃場。


響き渡る銃声に惹かれて近付いてみた・・・。


そこに居たのが、サラリとなびく銀髪に、アイスブルーの瞳・・・。


イザークだった・・・。



これを一目惚れと言うんだろうか・・・



飛び散る汗が輝きを増して、


私の心を支配する。










4人の誰かと恋がしたい・・・なんて嘘。


私にはイザークしか居ない・・・。


イザークだけがずっと好きで・・・大好きで・・・



他の誰も目に入らなかった・・・。


他の誰にも・・・渡したくなかった・・・。
















「困らせてごめんね・・・。」


はまた俺に謝った。


赤く染めた頬を涙が伝う・・・。



「今の・・・忘れていいから・・・。今まで通り、仲間として接して・・・ね?」


何を言ってるんだ・・・この女は・・・



「・・・イザーク!?」


気が付いたら、俺はを抱き締めていた。


「本当に自分勝手な女だ・・・。」


「・・・ごめん・・・。」


「忘れられる訳がないだろう・・・。」


「う・・・そうだよね・・・。」







うわ・・・ぁ


イザークが・・・私を抱き締めてる!?


何も・・・考えられない・・・よ。


イザークの柔らかな銀髪が頬に当たってくすぐったい・・・。




「全く・・・言いたい放題だな・・・。気は済んだのか?」



「・・・ごめ・・・」


「もう『ごめん』は聞き飽きた。」



そう言って、イザークの唇が私の唇を塞いだ。


まるで、言葉を遮るかのように・・・。



突然の出来事に、私の頭の中はパニック寸前だった・・・。





「・・・っ・・・イザーク!?」


に抱いていた感情とは全く違うこの気持ち・・・。


笑ったかと思えば沈んだ顔をして・・・

更には泣きながら俺に告白・・・


飽きない女だな・・・。



「間違っても今の話、誰かに喋るなよ!!」


「・・・はい。」






そう・・・

告白の返事は・・・



彼からのキスと、優しく握り締められた暖かい手が教えてくれた・・・。



















【あとがき】



イザーク編終了です。

イザークは難しいです。

やっぱり言葉で伝える事が上手く出来ない不器用さんだから??


本当は「好きだ」とか言わせたいんですけどね、

私の中のイザークさんが許してくれないんですよ(意味不明)

あくまでも態度で伝える。


これが私の中の俺様イザークですから・・・。



さて・・・


この次はディアッカ編に突入です。



2004.12.27 梨惟菜

















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