「だとしたら、ものすごくひねくれた愛情表現ね。」






ひねくれた・・・か。





でもね、


私は知ってるんだよ・・・。



これは間違いなく『愛情表現』なの・・・。



不器用な彼の精一杯なんだよ・・・。



そんな風に想われてるを・・・


心底羨ましいと思ったの・・・。
























たったひとつ望むもの

   前編




















彼女は少しずつ笑うようになった・・・。



初めて会った時には全く笑わなかった彼女。




目は伏せたまま・・・


口は閉ざしたまま・・・




綺麗なその青色の瞳は何も映さない。




まるで全てを拒絶するかのように・・・。











アイツ・・・



いや、は変わった女だ。



休憩になると、1人フラッと姿を消す。




女とは群れて騒ぐものではないのか・・・?




明らかに他の女とは異なる存在。




一体、何を考えているのか・・・理解不能だった・・・。











が笑うようになったのは紛れも無く奴の影響だ。



アスラン・ザラ



何かにつけて俺の妨害をして来る嫌味な奴だ。



勝負を挑んでもいつもあと一歩の所で負ける。


あの余裕ぶった表情が気に入らない・・・。



しかも奴には婚約者が居る筈だぞ・・・?



プラントの歌姫、ラクス・クライン。



あんな申し分の無い婚約者が居るクセに・・・
















「イザーク、隣、いい?」



「・・・好きにしろ。」



作業を終えて遅めのランチにしようとしたら、食堂にはイザークが居た。



「イザークはシュミレーションでもやってたの?」


「まぁな。」



素っ気無い態度・・・。


ここ数日はいつもに増してそうだった・・・。



そんなに・・・が好き?


こんな事聞いたら、間違いなく怒鳴られるなぁ・・・






「何故隣に座る?」



「は?」


数分経ってからイザークが口を開く。


「2人しか居ないんだ。席はいくらでも余ってるだろう?」



「だぁって・・・1人で食べてもつまらないでしょう?」


「・・・・。」



また黙っちゃった・・・。


つまんないの・・・。


もう少し喋ってくれたっていいのに。
















は・・・どうして笑わなかったんだ?」


「・・・は?」



また突然喋り出して・・・


しかも珍しく自分からの話。



「その・・・ここへ来た頃は冷たい目をしてただろう?」


「そっか・・・。知らないんだっけ・・・。」



「・・・何をだ?」


、ラスティと付き合ってたの・・・。」


「ラスティ・・・と?」





「本人から直接聞いた訳じゃないんだけどね。」











ラスティが戦死した数ヵ月後・・・。


偶然見てしまった2人の寄り添う写真・・・。


ずっと1人で抱え込んでいた・・・。



きっと、人知れず泣いてたんだろうな。



でも、私達には何もしてあげられなかった・・・。













とラスティが恋人同士だった・・・?


ラスティにも婚約者が居た筈だ・・・。



名家の令嬢。


明らかに政略結婚という雰囲気ではあったが・・・。



アスランはその事を知っているのか?


だから・・・は奴を受け入れたのか?



俺は、に無神経な事ばかり言っていた気がして、後悔の気持ちで一杯だった・・・。














言うべきじゃ・・・なかったかな?



イザークの気持ちが少しでも吹っ切れれば・・・と思ったんだけど逆効果だったのかも知れない。


昨日までの不機嫌な顔が、今日は落ち込んでいた。



「こりゃぁまた、昨日までとは全く逆の落ち具合ねぇ・・・。」


「・・・・・・。」


「何かあったの?」


「ちょっと・・・ね。」


「・・・話してみ?」


は何でもお見通しだった・・・。










「これはまた・・・複雑ね・・・。」


「私が余計な事、言っちゃったから・・・。」


重たい溜息が一つ漏れる・・・。


「何で?は悪くないでしょ?」


「・・・え?」



「イザークも悪くなければも悪くない。アスランもラスティも・・・。そうでしょ?」


「・・・でも。」



はさ、イザークに聞かれたから・・・。イザークの為を思って教えてあげたんだもん・・・。」



「・・・違うッ!!」


「・・・・・・?」







「私、イザークの為に言ったんじゃない。きっと・・・自分の為に言ったんだよ・・・。

そしたらきっとイザークはを諦めてくれる・・・って。」



プシュッ



その時、部屋の扉が開いた・・・。



「イザ・・・ク」


「今のは・・・何だ?」



今の話・・・聞いて


彼の手には書類らしき物。


私は観念して口を開いた。



「イザークが・・・の事好きなの知ってたから・・・。見てられなかったのよ・・・。」



「俺が・・・を・・・好き?そんな事、いつ言った?」




部屋中に緊張が走る・・・。



「そんなの・・・見てれば判・・・」



「判った風な口を利くな!!」




そう叫ぶと彼は書類を床に投げ付けた・・・。























【あとがき】



遅くなりました。

イザーク編、前編です。


書き始めて早速スランプ気味でした・・・。

これで年内に完結出来るのか心配です(*>Д<)o”


このまま一気に後編も書いてみようと思います!!

では。



2004.12.27 梨惟菜










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