ピルルルルッ…
翌日の昼過ぎ、アスランから電話が掛かって来た。
「もしもし?」
『?明日、午後から空いてる?』
「うん。空いてるけど…?」
『今年中にレポート、終わらせないか?』
「そうだね。そしたら年明け遊べるもんね♪」
断る訳無いじゃない♪
勉強とはいえ、アスランからのお誘いなんだもん!!
『じゃあ、明日2時に図書館でいい?』
「分かった。2時ね。」
やった!
勉強だけど2人きり!!
愛情と友情のはざまで
8
「どこまでやってる?」
「えっと…大まかな部分はほぼ終わってるから、後は全体をまとめるだけかな?」
「さすが…早いな。」
「そんな事ないよ〜。」
実は昨夜、家で頑張っちゃったのよね…。
早く終わらせて映画でも誘っちゃおうかなぁ…なんて思って///
「じゃあ、始めようか。」
アスランがカバンからレポート用紙を出した。
「アスラン?何か落ちたよ…。」
レポート用紙と一緒に、何かの冊子が出て来た。
「あ…」
その本を拾い上げて私は思わず手を止める。
私が誘おうと思ってた映画のパンフレット…。
「コレ、もう見ちゃったんだ…。
今日ね、早く終わったら誘おうかな…って思ってたんだけど。」
「あぁ、昨日カガリに誘われて…午前中に見て来たんだ。」
「…カガリ…に?」
それで…午後からだったんだ…。
パンフレットに視線を落とした私は、表紙に目を凝らす。
新作のアクション映画…。
アスランの好きなジャンルだと思ってチェックしてたんだけど…。
カガリもしっかり狙ってたんだ…。
「じゃあさ、今日一緒に夕食食べない?」
「あぁ…そうだな。特に予定も無いし…。」
「じゃ、そうと決まったらさっさと終わらせちゃおう!」
「そう言えば…どうなってるんだ?」
「え…?」
図書館の近くのイタリアンレストランで夕食を摂る事になった私達…。
運ばれてきたパスタを口に運ぶ私にアスランが問い掛けた。
「元彼の話…あれから何か言われたりとかしてるのか?」
「あ…うん。一応断ったんだけど…」
「けど?」
「私、今彼氏居ないでしょ?だから気長に待つって言われちゃって…。」
「…そんなに好きなんだな…の事。」
「でも…私には他に好きな人居るから…」
…言っちゃった…
アスラン…どんな反応するんだろ…
「初耳だな…」
「初めて言ったもん…。」
「で、誰?」
「それは秘密。」
本人なんだから言える筈無いじゃない。
言えたらどんなに良いか…。
「じゃあ…送ってくれてありがとね。」
「あぁ、気を付けて。」
「アスランこそ。」
律儀にも家の近くまで送ってくれたアスランに手を振る。
アスラン、本当に優しいのよね…。
それが誰にでも平等に…だから悲しくなる時もあるんだけど…。
来た道を戻って行くアスランの背中を見つめながら、胸を押さえる。
アスランが…好き…。
この気持ちを打ち明けてしまいたい…。
そう思う度に、カガリの顔が脳裏に浮かぶ。
もし、アスランの返事が「No」だったら…?
もし、「Yes」だったら…?
どっちの未来を想像しても、胸が苦しくなる…。
「アスラン!!」
私は思い立った様に、アスランを呼び止めた。
「…?どうした?」
「…一つ…聞いてもいい?」
「何?」
「自分を想ってくれる人と、自分が想ってる人…。
アスランだったらどっちを大切にしたいと思う?」
長く伸びた髪が夜風に靡く。
その髪を押さえながら、私は祈るような思いでアスランの答えを待つ…。
「俺だったら…自分が好きだって気持ちを大事にしたい。
その気持ちが無かったらお互いを支え合えないと思うから…。」
アスランの返事に、心の中で何かが弾けた。
『自分の気持ちを大事にしたい…』
アスランには…そう想える人が居るの?
だから、そんな答えをくれたの…?
再び背を向けたアスランの姿が見えなくなるまで、私は彼の背中を見送った。
部屋へ戻った私は、キラから貰った指輪の入った小箱を2つ取り出した。
その2つの箱をクローゼットの奥にある引き出しの中にしまう。
迷ってばかりじゃ何も始まらないから…。
カチャリ…
引き出しに鍵を掛け、クローゼットを静かに閉じた…。
私も…
私も、今の自分の想いを大事にしたい…。
例え片想いだとしても…
未来が見えない恋だとしても…
キラを傷付ける結果になってしまうとしても…。
【あとがき】
何か…ようやくアスランが出て来た〜ってカンジですね。
アスラン夢なのになぁ…。
今回、アスランの一言でヒロインも決心する訳ですが…。
まだまだ残ってる問題はたくさん♪
この作品の目標の一つ、ヒロインVSカガリもこれからですからね〜♪
では、ここまで読んでくださってありがとうございました♪
2005.4.23 梨惟菜