ジリリリリ…
終業のベルが講義室に鳴り響く…。
12月28日…
冬休み中の冬期講義も今日で終了。
ようやく解放された気分で私は腕を大きく伸ばした。
「今日は皆用事無いだろ?
家でお茶でも飲まないか?」
一番に立ち上がったカガリが皆を誘う。
「あぁ、いいんじゃない?」
皆は軽くOKし、荷物をまとめ始めた。
「ゴメン、私、これから用事あるんだ。」
「そうなのか…じゃあ、またな。」
「うん。また連絡する。」
私は皆に手を振って、一足先に講義室を出た。
今日もカガリの首にはアスランの買ったマフラーが揺れている…。
愛情と友情のはざまで
7
「!こっち!」
待ち合わせの相手はキラ。
校門のすぐ近くに停めてあったエレカから手を振る。
「どっかのお店で待っててくれたら良かったのに…。」
「久し振りだからドライブでも…って思って。」
本当に…久し振りだった…。
前は当たり前の様に座っていた助手席…。
少し懐かしい気持ちでそこへ乗り込んだ。
「海でも行く?、好きだったよね?」
「…うん…。」
昨夜キラから届いたメール。
『明日、会えないかな?』
本当は断ろうと思ったんだけど…。
逃げてばっかりじゃ意味が無いと思ったし…。
断るにしろ、復縁するにしろ…
今のままじゃ何も変わらないと思ったから…。
でも、今更隣に座っているのがキラだと思うと…
その事に違和感を覚えていた…。
やっぱり来るんじゃなかったな…。
言葉も見つからなくて…
気まずい沈黙が車内に続く。
キラも同じ事を考えているのだろうか…。
「返事、聞かせてくれる?」
海へ着いて、ゆっくりとエレカが停まる。
キラが真剣な表情で私の言葉を待っていた。
「私…」
「うん。」
「彼が…アスランが好きなの…。」
私の言葉に車内には再び沈黙が広がった。
「片想いだけど…それでも好きだって思うから…。
だから、キラとは付き合えない。ごめんなさい…。」
「僕の事…嫌いになった?」
「そうじゃない!違うの…。
すごく好きだったし…別れようって言われて別れてからも嫌いにはなれなかった…。
でも…あの頃の気持ちとは違うから…。」
「うん。そうだよね…。」
目の前に広がる海…。
その上には重たい灰色の雲が広がっていて…。
何だか冴えない天気…。
まるで私の心を映しているかの様だった…。
「でも…僕はが好きだから…。
その気持ちは変わらない…。
だから、もしもがもう一度チャンスをくれたら…絶対に幸せにするから。
それだけは覚えておいて。」
「キラ…」
「しつこいって思うかもしれないけど、もう自分の気持ちに嘘つきたくないから…。」
「うん…ありがとう…。」
そう答えると、キラは嬉しそうに微笑んだ。
私が好きだった、キラの笑顔…。
すごく久し振りに見た気がする…
「送ってくれてありがとう。気を付けてね…。」
「うん。」
「じゃあ…。」
「…」
ドアを閉めようとした時、キラが私を呼び止めた。
「…何?」
「また…誘ってもいい…?」
「え…?」
「の気持ちは…ゆっくり待つから…。
だから、前みたいに友達として、2人で遊びに行ったりしたい。」
「キラ…」
「また…電話するから…。」
部屋へ入った私は机の引き出しを開けた。
2つの指輪がケースの中でキラキラ光っている。
新しく貰った指輪を取り出し、そっと指に通してみる。
違和感無く、すんなりと左手の薬指に納まった指輪…。
キラは…どんな顔でコレを買ったんだろう…。
そう思うと胸が苦しくて…。
どうして…私達は擦れ違っちゃったんだろうね…。
別れ話を切り出されたあの時…
私がほんの少しでも縋り付いていたら…
私はまだ、キラの隣で笑っていられたのかな…?
アスランとキラの顔が頭に浮かぶ…。
2人には違う優しさがあって…
違う魅力があって…
私を想ってくれる人と、
私が想っている人…
どっちの道を選ぶのが最良なのか…。
ディアッカは焦るなって言ってくれたけど…
早く決めないと手遅れになっちゃう気がして…。
悩み過ぎて何も手につかない…。
アスランの事が好き…。
でも、この想いが実る保証なんて無い。
だからってキラの手を取るなんていい加減な事は出来ない…。
それは分かってるんだけど…
キラの優しさが心地良いと感じてしまう自分が居て…。
そんな自分がすごく嫌な人間に思えた。
【あとがき】
揺れるヒロインです。
何だかウジウジしてるなぁ…と思いつつ、書いてて楽しかったり♪
何となく気持ち分かるんですよね〜。
好きな人が居て、別に好きだって言ってくれる人が居て…。
その相手の事、特に嫌いじゃなかったら揺れちゃうんだと思います。
好きな人の気持ちは見えない訳だしね…。
ここまで読んでくださってありがとうございます〜☆
2005.4.20 梨惟菜