「ゴメン。ちょっとだけ出掛けて来る。」


部屋に戻った私は掛けてあったコートを羽織り、ポケットに携帯を納めた。




「何?電話、何だったの?」



心配そうに見つめるミリィに視線を向けた私は目を細めた。




「さっきの電話…元彼からで…
 話があるからちょっと出て来て欲しいって言われたの…。」



その言葉にディアッカの表情が少し曇った。



「…大丈夫か…?こんな時間に。」


「うん。すぐ近くだし、すぐに戻って来るから…。
 ホント、ゴメンね…。」




「ううん、気を付けてね。」





皆に見送られ、私は部屋を出た。






愛情と友情のはざまで


    6
















よく待ち合わせをして公園はハイスクールの近くにあって…。


3年になってクラスが離れてしまった私達はいつもそこで待ち合わせて一緒に帰った。




春には桜が満開になって…

秋には黄色いイチョウが鮮やかに公園を染める。




そんな木々も今は冬の寒さで枯れ落ちていた。




公園の門をくぐると、中央のベンチにキラが座っていた。











「ゴメン。遅くなっちゃった。」



小走りでキラの元に駆け寄る。


何だか懐かしい気持ちが押し寄せて来て…胸がトクンと跳ねた。




「僕こそ…こんな時間に呼び出したりしてゴメンね。」



キラが柔らかく微笑み掛けた。


私はギュッと拳を握ると、俯きながら口を開いた。




「話したい事って何?」


「うん…。」




迷いながら頷くキラ…。



フレイの言葉が頭の中をよぎる…。




『キラ、まださんの事が好きなんだと思います。』




そんなまさか…


だからって今頃になって…




「座ったら?」


キラの言葉にハッと我に返る。



「…ううん。すぐに…帰るから。」


「…そう…。」














「こないだ…フレイに会ってね、話聞いたんだ。
 別れたんだってね。」


「僕も…全部聞いた。」


「…え?」



「夏に一緒にいた彼、片想いなんだってね…。」



「あぁ…うん。」




フレイ…そんな事話したんだ…。


キラとの事はもう終わった事だって言ったのに…。










「コレ…どうしても今日中に渡しておきたかったから。」



立ち上がったキラが小さな小箱を手渡した。



「何…コレ。」



「サイズ、今度は大丈夫だと思うから。」


…まさかコレ…


「約束…だったから。」



「ちょっと待ってよ…
 約束したからって…今更貰っても困る…。」


小箱をキラに突き返す。


その手首を優しく握ったキラが、もう片方の手で私の肩に触れた。






「…どうしても…忘れられなかったから。
 僕がした事、すごく…最低な事だったと思う。
 ずっと謝りたかったけどタイミングが掴めなくて…。」



「気にしてない。もう終わった事だから…。」



「でも…今日なら言えると思ったんだ…。」


キラの強い瞳が私を真っ直ぐに見つめた。





駄目…


言わないで…






の事…まだ好きなんだ…。
 僕と…もう一度付き合ってくれないかな…?」














何が起こったのか分からなかった…。



キラに掴まれた手首が熱い…。



キラが…私の事を好き…?


今更…何を言っているの…?










「どうして…言ってくれなかったの…?」



「え…?」





「受験勉強で会えなかった時…どうして言ってくれなかったの?
 会いたい時は会いたいって言って欲しかったよ…?」



「それは…邪魔したら悪いって思ったから…」


「邪魔なんて思う筈ないじゃない!!
 その間に他の女の子と…フレイと会ってる位なら言ってよ!」




夜の公園に私の声が響いた。




…」


「私、そんなに余裕無いように見えた?」



「そうじゃなくて…」


「好きな人と会う事が、勉強の妨げになるなんて思ってないッ!!」




「…っ…ごめん…。」





いつも…


一生懸命に頑張ってたのは何だったの…?




合格したら、キラとたくさん会えるって思って頑張ってたのに…。




「何で今更そんな事言うのよぉ…。」



溢れ出した涙で視界が滲む…。


耐え切れなくなった私はその場にしゃがみ込んだ。




「僕…の事、たくさん傷付けた…。
 その分も、これから大事にして行きたいと思ってる…。」




キラの言葉に迷いは微塵も感じなかった…。





「…ゴメン…考えさせて。」

























「…!?」



私が泣き腫らした目でミリィの部屋に戻ったのは、日付が変わる15分前…。




「…ちょっと…色々ともめちゃって…。」


「ちょっとじゃないでしょ…!?
 気にしないで話してよ!少しはスッキリするから…。」



ミリィの優しい言葉に、枯れていた筈の涙がまた零れた。




「…やり…直さないかって…今更…
 でも…どうしたらいいか分かんな…」


…」







自分の気持ちが分からない…。

アスランの事が好きなのに…。


カガリに渡したくないって思うのに…。



キラの言葉を迷わずに断ち切れる筈なのにどうして…?


それとも…

私、まだキラの事が好きなの…?










、ちょっと話そう。」


ディアッカが私の肩に手を置いて言った。




「ディアッカ…」


「ちょっと外で話して来る。」













「落ち着いた?」


「うん。ありがと…。」




近くの自販機で買ってくれたミルクティーで手を温めながら、ようやく落ち着いて来た。



「…迷ってる?」


「何で…ハッキリ断れなかったんだろう…。」



「そりゃ…嫌いになって別れた訳じゃないから…じゃねぇ?」



そうだ…。


キラの事、嫌いになった訳じゃない。



すごく好きで…大好きで…


振られてからも恨んだ事なんてなかった…。


その気持ち、時間が経って行く中で薄くなっていっただけで…。




「でも、アスランとは比べられない…?」



「うん。全然違うタイプの2人だから…。」






ディアッカはすごい…。


迷ってる私の気持ちを悟ってくれて…

冷静に分析してくれる…。




「焦っても仕方ねぇじゃん?
 その内自分の気持ち、ハッキリ分かる時が来るって。」



「そう…かな?」


「ま、悩んだって仕方ないって。同じ事の繰り返し。」



「そう…だよね。ありがとう…。」


「よし。戻るか。」






ディアッカはポンッと肩を叩いて微笑んだ。

















【あとがき】

ああああ…

アスランが出て来ない〜!!

何やってんだ私…。

下手するとディアッカ夢…。

真剣に管理人はディアッカが好きなんじゃないかと勘違いされそうな夢!!

キラは…どうなんでしょうねぇ?

本編のごとく、フレイにフラフラ〜っと傾いちゃってた訳で…。

今更都合よ過ぎだって!

すみません…しばらくキラ優勢な気がします…。





2005.4.18 梨惟菜





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