『メリークリスマス!!』



クラッカーの音と共に、華やかな声がミリィの部屋に響いた。



ミリィの部屋はワンルームのマンションで、5人入ると少し狭く感じた。



テーブルの上には色鮮やかな料理が並ぶ。



料理の得意なミリィと私で昨日から準備した物だ。


アスランとディアッカがお酒を買って来てくれて…。


カガリが大きなホールケーキを持って来てくれた。







「こうやって皆でパーティーもいいわよね〜。」


シャンパンを口に運ぶミリィが嬉しそうに言う。



「確かにな。来年は皆で出来るとは限らないし…。」


ミリィの言葉に便乗してディアッカも口を開いた。



去年はそれぞれに相手が居て…。


素敵なクリスマスを過ごしていたんだと思うと、不思議な感覚だった。


今は誰も恋人と呼べる相手が居なくて…。


でも確かに『恋』と呼べる感情を抱いている人が居て…。




シャンパンの入ったグラスをテーブルの上にコトリと置いた私は、チラッとアスランに視線を送った。







愛情と友情のはざまで


    5











「じゃ、そろそろプレゼントの交換しよっか♪」



食事も粗方無くなり、お酒を煽り始めていた頃にミリィが提案した。



「ね、交換ってどうやってすんの?」


「コレ。用意しておきました〜♪」



ミリィが箱を取り出す。



「…くじ?」


「そ。ここに1から5までの番号を書いた紙が入ってるの。
 で、皆が持って来たプレゼントにも番号を付けて、当たった番号のプレゼントを貰う…って事でどう?」



「いいんじゃない?簡単でさ。」



「じゃ、引く順番をジャンケンで決めよっか。
 もし自分の番号引いちゃったらもう1回って事で。」





満場一致でプレゼント交換は始まった。



狙うはアスランのプレゼント!

それで、私のプレゼントがアスランに届けばもっと良し!



そう願いながら拳に力を込めた。





















「…じゃあ次、アスランの番ね。」


ミリィが箱をアスランに差し出す。



運良く、私の番号もアスランの番号も残っていて…。


アスランが私の番号を引いてくれたらまずは目的達成なんだけど…。





私の番号は1番…。


アスランが引いてくれますように…。


そう願いながらアスランの手に集中する。



「1番だ。」


来たぁ〜!


「はい。気に入ってくれるといいんだけど…。」



大声で叫びたい気持ちを抑え、私はアスランに箱を手渡す。


「ありがとう。」



笑顔で受け取ってくれたアスランに思わず顔が綻んだ。







「じゃあ次はカガリね。」



ジャンケンで負けてしまった私は一番最後で…。


箱の中に残っている紙はあと2枚。



1つはアスランのプレゼント…



確率は2分の1…。


外れたらそのプレゼントはカガリの物になっちゃう訳で…。








「3番だ。」


「あぁ、俺のだな…。」



そんな願いも虚しく、アスランのプレゼントはカガリの手の中に収まってしまった。




「じゃあ、最後の残りが自動的にのだね。」



残ったプレゼントはミリィの物…。



「うん、ありがとう。」
















私のプレゼントはキーケース。

カガリが財布でアスランがマフラー。

ディアッカは時計でミリィは香水。




マフラー…


よりにもよって身に着ける物…。



箱を開封したカガリが嬉しそうに微笑んでいる姿が目に飛び込んできて…。


ちょっぴり切なくなっちゃった…。





でもまぁ、私がアスランの為に選んだプレゼントが無事彼の元に届いただけでも良しとしなくちゃね。
























ピルルルルル…



「誰か携帯鳴ってるわよ?」



部屋に携帯のコール音が鳴り響いたのは夜10時を回った頃だった。



のカバンから聴こえないか?」


「え?私?ミリィ、携帯取って〜」




一番近くに居たミリィに頼む。





「何コレ…番号しか出てないわよ?」


外のディスプレイを見てミリィは首を傾げた。



「え〜?間違い電話かなぁ…?」



携帯を受け取った私は開いて画面を確かめた。



「…。」



番号しか出ていない画面に視線が止まる。


つまりは電話帳に登録していない番号。



知らない番号、もしくは、電話帳から削除した番号…。




けれど、確かに見覚えの在る番号…。





空で覚えて言えてしまうくらいに良く使った番号…。




キラの…


間違いなくキラの携帯の番号だった。















ピッ


電源ボタンを押してコール音を止める。



「出なくて良かったの?」


「うん、知らない番号だし。」



携帯をテーブルの端に置こうとした時、再び携帯が鳴る。



ピルルルル…






「やっぱ知ってる人からじゃないの?」






携帯をギュッと握り締めながら、必死で考えた。




何で今頃、キラから電話が掛かって来るの…?



クリスマスの夜なんかに…



出るべきか…出ていいものなのか…


決めるのは自分なんだけど、どうしていいか分からなくて…。


それでも鳴り止まないコール音。











「ごめん…ちょっと出て来る。」




携帯を持ったまま、部屋を出る。



廊下に出て端まで移動した私は通話ボタンを押した。




「…もしもし?」


『…?』



キラの声を聞くのは夏以来だった。


変わっていない、優しい声…。



『出てくれて良かった。』


「…何かあったの?」



優しさの中に感じる違和感。


何だかキラの声が微かに震えているように聞こえて…

私は眉をしかめた。




『今から…少しだけ出て来れないかな?』



「え?今から…?」



『少しだけ…10分だけでいいんだ。
 どうしても話しておきたい事があって…。』




どうして…こんな日に電話を掛けて来るの…?


キラの声に心が大きく揺れる。




「今…どこに居るの?」


『よく待ち合わせした公園…。』



「…15分で行く。待ってて…。」



















【あとがき】

クリスマスの夜になにやら起きる予感!?

アスランの気持ちも明かされないまま、キラが動き出しちゃいました〜。

未だヒロインVSカガリな気配が無いです。

甘くも無ければ辛くも無い…。

相変わらず生温い展開ですみません。





2005.4.17 梨惟菜




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