今日3杯目の紅茶を口に運びながら、向かいに座るフレイの顔を見る。
気まずそうな表情で俯くフレイは、躊躇いながら口を開いた。
「あの…ごめんなさい。」
フレイは私に向かって頭を下げた。
「え…?」
「キラの事…私、さんから横取りした状態で…。
ずっと、謝りたかったんです。」
「そんな…別に気にしてないよ。終わった事なんだし。」
「私…その時付き合ってた彼と上手く行ってなくて…。
ちょうどその時、キラもさんとなかなか会えなくて辛そうで…。
本気じゃなかったんだと思います。」
「…そう。」
本気じゃなかったと言われても…。
それでも、別れを切り出したのはキラだから…。
「さっきの彼、付き合って長いの?」
フレイに声を掛けられ、一緒にいた彼は先に帰ると言って去って行った。
背が高くて…スーツが似合ってて…。
大人の男性って雰囲気だった。
「実は…キラと付き合う前に付き合ってた彼の友人で…。
色々と相談に乗っててもらったんです。
付き合いだしてからはまだそんなに経ってないんですけど…。」
そうやって彼の事を話すフレイの頬は少し赤く染まっていて…。
今幸せなんだって事が伝わって来た。
「さんは…?」
「え?」
「夏に会った時に一緒だった彼、同じカレッジなんですよね?」
「あぁ…うん。」
「カッコいい人でしたね。」
「でも…友達だからね…。」
「そうなんですか?私てっきり彼氏なのかと…。」
「片想いなんだ…。」
愛情と友情のはざまで
4
「じゃあ…元気でね。」
「はい。さんも…。」
1時間くらい話をした私達は、店の前で別れた。
「さん!!」
背を向けて歩き始めた私をフレイが呼び止めた。
「私、キラはまださんの事が好きなんだと思います!」
「え…?」
「それだけは…伝えておきたかったから!!」
フレイは私に頭を下げると逆方向に走り去って行った…。
キラが…まだ私を好き…?
そんな筈…ないじゃない…。
私達はもう終わったんだから…。
「?」
「え…?」
「話、聞いてなかったでしょ…。」
「ごめ…考え事してた。」
昨日の夜はなかなか眠れなくて…。
今日の授業が午後からで良かった…。
そう思ってまだ眠たい気持ちを抑えてカレッジに来たものの、上の空。
ミリィが話しているのにも関わらず、心ここに在らず…だった。
「どうしたの?何かあった?」
「…え?ううん。ちょっと寝不足で…。」
「何?夜更かしでもしてたの?」
「うん。まぁ…ね。」
「で?何の話だった?」
「だから、クリスマスの話。」
「あぁ。」
「カガリの家でやらないか…って言ってたでしょ?
それがね、カガリの家、お父さんがパーティーで使うんだって。
だから、ちょっと狭いけど私の部屋でしない?」
「私はいいけど…迷惑じゃない?」
「大丈夫よ。家だったら気兼ねなく遅くまで騒げるでしょ?」
「そう?じゃ、お言葉に甘えてミリィの家でやろっか。」
「決まりね。皆にも後で話さなくちゃ。」
フレイの言葉が頭から離れなくて…。
午後の授業は全く頭に入って来なかった。
気が付けば授業は終わってて、私のノートは真っ白。
ただでさえノートを取る量の多い授業なのに…。
「じゃ、お先〜。」
授業が終わると、予定の入っているカガリ、ディアッカ、ミリィは足早に教室を出てしまった。
「、帰ろうか。」
「あ…うん。」
アスランの誘いに私も立ち上がる。
「ねぇ、さっきの授業のノート、貸してくれない?」
「いいけど…どっか書き忘れた?」
「いやぁ…真っ白なのよ。」
「…がノート取らないなんて珍しいな。」
「昨日夜更かししちゃって…寝不足だったから。」
「じゃあ図書館寄って帰ろうか。」
「ごめんね、有難う。」
「夜更かしって…本でも読んでたのか?」
「え?あぁ、うん。面白いのがあって…。」
さすがに昨日の話をする事も出来ず、私は適当に相槌を打って誤魔化した。
せっかくアスランと2人きりなのに…。
繰り返し繰り返し同じ事ばかりが頭を巡って…。
そしてまた、ふりだしに戻るだけ。
消化出来ないこの気持ちをどうしたらいいのか分からず…
だって…分からないんだもの。
フレイの言葉も、キラの本当の気持ちも…。
そして、フレイの言葉に揺れてる私の気持ちも。
キラとの事はもう過去の話で…
今の私はアスランの事が好きで…
迷う事なんて何も無いじゃない。
「……?」
「…えっ…?」
いつの間にか図書館に着いていて…
私の顔を心配そうに覗き込むアスランと目が合った。
「やっぱり変だな…。」
「…な…何が…?」
「いや…ただの寝不足にしてはボーッとし過ぎだと思って…。」
「そ…そんな事無いよ…。気のせいだって。」
「何か悩みがあるならいつでも相談するんだぞ。
俺だって話くらいなら聞いてやれるだろうし。」
「う…うん。ありがとう。」
アスランの気持ちは嬉しいけれど、こんな事、話せる訳ないじゃない。
だって…私が好きなのはアスランなんだもの。
まだアスランに告白する勇気も無いし、キラとの事を勘違いされたくない…。
アスランの優しい言葉とは裏腹に、私の心の中には冷たい風が吹き付けて止まない…。
【あとがき】
話がなかなか進まない気が…。
このお話はヒロイン視点でばかり書いてます。
本当はアスランの視点とか、キラの視点とか…
色々書きたいんですけど…。
今は悩めるヒロインを表現する事にいっぱいいっぱいで…。
その内、他のキャラの心の内も明かして行く予定ですので…。
2005.4.16 梨惟菜