「あっつ〜い!!」



冷夏だった去年の夏とは逆に、猛暑を振るう今年。



もうすぐ夏休みも終わる9月下旬、私は課題を仕上げる為に図書館に向かっていた。



「もう10月になるのにな。」


並んで歩いていたアスランが夏空を仰ぎながら言った。





私とアスランの2人だけが選択していた科目…。


試験は免除してくれるものの、レポートや課題が山のように出されていて…。


とても1人で片付けるには時間が掛かるから、2人で手分けしてやる事にした。




カレッジに入って初めての夏休みで浮かれて遊び過ぎてたのも原因の一つなんだけど。











愛情と友情のはざまで


    3









暑い暑い夏が訪れて…。


私達5人はここぞとばかりに遊んだ。



海やプールに行って泳いだり、花火をしたり。


夏休みの中盤にはカガリの別荘のコテージで1週間過ごした。



何もかもが新鮮な夏休みで…。


すっかり忘れていた課題。




そのせいで、夏休みも後半を迎えた今はそれぞれに忙しい。













「最後に残った課題が厄介だよねぇ。」


「そうだな。試験が無いのは有難いけど…。」



重い荷物に暑い陽射し…。


早く空調の効いた図書館に行って涼みたい…。


課題よりも何よりも、それが本音。



















「……?」




図書館にに続く通りに差し掛かった時、ふいに誰かが私の名を呼んだ。



聞き覚えのある声に心臓が跳ねる…。



ゆっくりと振り返ると、そこには元彼の姿があった…。








「キ…ラ?」




半年振りに見る彼の姿は何も変わっていなくて…。


2人で過ごした幸せな時間がつい昨日の事のように蘇って来た…。



けれど、そんな記憶も隣に寄り添う少女の姿でかき消される。




「フレイ…」



1つ年下のフレイ…。


ハイスクール時代、同じサークルに所属していた後輩で…。


私ともキラとも仲が良かった。


甘え上手で可愛くて…。





そうか…。


彼は…キラは身近な女の子を選んだんだ…。






「…久し振りだね…元気?」



キラの声に我に返る。



「あ…うん。キラも…元気そうだね…。」



何とか笑顔を作って返事を返した私の心の中は複雑で…。


並んで立つキラとフレイの姿に、キラとの恋は終わったんだと改めて感じた。



もう期待はしていなかったけれど、かつて私が立っていた場所に他の女の子が居ると思うと…。


しかも、自分も良く知っている後輩で…。




何だか少し、悲しくなった。








の…彼?」



私の隣に立つアスランを見て、キラは私に問い掛けた。



「あ…彼は…。」



そっか…2人で並んで歩いてるとそう見えるんだ…。


困った表情でアスランに視線を送ると、その視線に気付いたアスランが私の手を取った。





「え…?アス…」



「初めまして。アスラン・ザラです。」



アスランは笑顔でキラに名乗ると、私の手をギュッと握った。



「あ…初めまして。キラ・ヤマトです。」




「悪いけど、急いでいるので…。、行こう。」


「あ…うん。じゃあ…。」




キラに背を向けると、アスランは私の手を引いて歩き始めた。






























「さっきの…元彼なんだろ?」



キラ達の姿が見えなくなってから、速度を緩めたアスランが口を開いた。




「…良く分かったね…。」


の顔、作り笑いっぽかったから…。」


「そう…かな?」






2人の姿は見えなくなったけれど、私達の手は繋がれたままだった。



夏だし暑いし…。


私の手、汗ばんでないかな…?


そんな風に思いながらも、不思議な感覚だった。



暑いはずなのに、アスランの手は暑いと言うよりは温かくて…。


何も言わない私の事、分かってくれた…。









図書館に着いて、冷房の効いた涼しい部屋に入っても、私の体温は上がったまま…。


こんなにドキドキしてるのは、キラに再会したからなのか…。



それとも、理由は別にあるのか…。




課題をこなしている間も、向かいに座るアスランが気になって…。


俯いて作業を進めるアスラン…。



濃紺の前髪で表情は伺えなくて…。



冷房の風でサラサラと揺れる柔らかそうな髪の毛に魅入っていた。






このまま…時間が止まっちゃえばいいのに…。

































「へぇ…。青春だなぁ…。」




2杯目のコーヒーを飲み干したディアッカはニヤニヤしながらカップを置いた。





「それからかな…。私がアスランを意識するようになったのは。」




「もう3ヶ月か…。」


「あっという間だったなぁ…。」




気が付けば日は落ちていて…。


並木道にはイルミネーションの点灯が始まっていた。





「さ、そろそろ帰るか。」



「うん、そうだね…。」



























キラキラ輝く通りを歩きながら、擦れ違う人々に視線を送る。




寒そうに腕を絡めながら歩くカップル達…。




宝石店のショーウィンドウを眺めながら、プレゼントの相談をする恋人達…。



幸せそうだなぁ…。




そんな気持ちになりながら、のんびりと歩いていた時だった。




正面から見覚えのある女の子が歩いて来る…。





「あ……さん。」



「…フレイ…?」




元彼の…キラの今の彼女…。



そう、その筈だった。




「フレイの…彼?」


腕を組んで歩いていた相手はキラじゃなかった。



もっと年上の…27、8歳くらいだろうか…。




「…はい。」



キラとは…終わったって事…?


私の頭の中は混乱していた。




「あの…少し、お話出来ませんか?」




そのフレイの表情は思い詰めたような真剣な表情で…。



「…うん。」





私は持っていたプレゼントの紙袋をキュッと握り締めて答えた。
























【あとがき】



元彼との再会編でした〜。

やっぱフレイなんだ…みたいな展開で。

まぁ、他に相手、思い浮かばなかったし。


ピッタリだし…♪



ここで初めて、ヒロインはアスランを異性として意識して、恋に発展するのです。


アスランの方は…どうなんでしょうね?


どういうつもりであんな行動に出たのか…。


何か普通の学生っぽいお話書くの楽しいです♪







2005.4.14 梨惟菜



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