「僕の口からは…何も言えない…。」



写真に示されたの想いは明白だったけれど…

アスランに恋人が居る事は事実。


アスランの本心を知らないキラには、そう答える事しか出来ない。




「僕の口からに話す事は何も無いから…。
 この事は君の中で…君が思うように消化した方が良いと思う。」



「…ありがとう…。」







キラがアスランにそう告げたのは、の想いが通じないと信じて疑わないから。


しかし、アスランはキラの曖昧な一言で確信した。




の…本当の想いを…

















愛情と友情のはざまで


    12




















「アスラン?」



約束の時間に遅れてしまったカガリは肩で息をしていた。



何故か店内では無く、外で待つアスランを不思議に思う。



「中で待ってるのかと思ったのに…。」



カガリから伸ばされた手を、アスランは軽く払い除けた。




「アス…ラン?」



カガリの表情は不安に満ちていた。



しかし、アスランの表情によってすぐに掻き消される。



今にも泣き出してしまいそうな…思い詰めた表情…。










が俺と視線を合わせてくれなかったのは、気を遣ったからなんかじゃない。



俺が追い詰めて…そして傷付けた…。





『自分の気持ちを大事にしたい…』


あの何気ない言葉と、その後の俺の行動…。



俺は何て事を…








「アスラン…何かあったのか?」




「ごめん…カガリ…。」



「え?」



「もう…恋人のフリは出来ない…。」




















「どうしたんだ?急に…」



俯いたまま、決してカガリを見ようとしないアスラン。


時折、自らの髪をくしゃくしゃと乱し、溜息をつく。






が…好きなんだ…。」



「…え…?」




一番聞きたくなかった言葉が響く…。



消したくても消せない言葉が、脳内を巡る…。




アスランが好きなのは







「俺はの気持ちを知らなくて…そして傷付けた。」



まさか…自分と同じ想いを抱いてくれてたなんて…。




あの時は、どんな気持ちで俺に答えを求めた?


俺の答えに…は何を思った?






「本当にごめん…カガリ。」



カガリが何かアスランに訴え掛けたが、もうアスランには届いていなかった…。



それでも伝えなければ…





決意したカガリは、アスランの胸に飛び込んだ。








「カガ…」



「アスランが好きなんだ!!」





気付けば自然と溢れ出ていた涙が頬を伝う。






「なら…尚更その気持ちに応える事は出来ない…。」





『自分の気持ちを大事にしたい…』


に告げたその言葉は…本心だから…





















「遅かったね。」



ベンチで軽く足を揺らして待つの手には缶コーヒー。



「コーヒー、冷めちゃった。」



キラが缶に触れると、確かに温もりは無くなりつつあった。




「ごめんね。はい、手帳。」


「ありがとう。助かったぁ。」



は中身を確認すると、満面の笑みでバッグにしまい込んだ。



その笑顔を見て、キラは複雑な表情になる。




彼がの気持ちを知ってしまった…。



もしも、にそう言ったら…きっと傷付くに決まってる。



そんなは見たくない…。



だから、言うつもりは無いけれど…。








は…いつまでこんな報われない片想いを続けるの?」



「え…?」



「ごめん。中の写真、見ちゃったんだ…。」



「…いつまで…続くのかな…。こんな苦しい想い…。」





忘れたいのに…忘れられない。


目の前にある現実を受け入れられなくて…






「ごめん…帰る。」



「送ってくよ…。」


















部屋に戻ると、はドアに凭れる様にしてその場に座り込んだ。





西側の窓から差し込む夕陽が、部屋全体を真っ赤に染める。



カバンから手帳を取り出したは、手帳を開いた。








楽しそうな笑顔…。




キャンプの時には、何とも想っていなかった相手…。



夏が終わって、ミリィから写真を貰った時には特別になってた人。





「ふ…っ…っく…」




泣いたって何も変わらないけれど…



それでも自然と流れ出る涙を止める術は知らなくて…。



押さえても押さえても…止め処なく零れる涙は、何度もカーペットにシミを作っては消えた。






ねぇ…アスラン…



自分が大切に想う人との未来が絶たれたら…


その時は…どうしたら良いのかな…?




「アスラン…教えてよぉ…」



















【あとがき】


あ〜やだやだ。

カガリ暴走ですよ。

悪あがきかよ…。

まぁ実際、ヒロインを追い詰めたのはカガリなのにね。

アスラン、苦悩しちゃってます。

キラはキラで、まだまだ押す気満々です♪

さぁ…そうなるのでしょうか?

段々ゴールが見えて来た感じです♪

既に本編後の番外編が書きたくてウズウズしてます♪(え?


ここまで読んで下さってありがとうございました♪








2005.5.4 梨惟菜






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