、おはよう。」



「え…?キラ?どうしてここが…?」



の家に行ったらおばさんが多分ここだろう…って。」




特に予定の無い休日。


どうせアスランとカガリは一緒にデートなんだろう。


他に行く宛ても無いは退屈になると近所の図書館に入り浸る。



カレッジに入って、アスランと良く図書館にレポートを書きに行くようになってからの習慣だった。



昔はあまり好きじゃなかった、静けさの増す空間。



それでも、アスランとこの空間で過ごしている内に落ち着く空間へと変化していた。






だから、にとって図書館は癒しの場所…。












「昔のは図書館なんてイメージ無かったのにね。」



「悪かったわね。どうせ静かな空間とは無縁の女ですよ。」



「でも、今はそんな事無いよ?」



「…褒めたって何も出ないんだから。」


「ねぇ、読み終わったら食事に行かない?」



「…そうね…。」









読んでいた文庫を閉じると、は立ち上がり、荷物を肩に掛けた。




「読まないの?」


「ん。借りて帰るわ。家でも退屈するだろうから…。」




















愛情と友情のはざまで


    11

















「やっぱりここのデザートは最高ね。」



食後に出されたオレンジのシャーベットには舌鼓を打つ。



キラと付き合ってた時に何度かデートで来たこのお店。


いつも決まって同じメニューを頼む


それは今も変わらなかった事にどこか嬉しそうに目を細めるキラが居た。





「良かった。今日は泣いてないね。」



「…毎日泣いてたら涙枯れちゃうわ。」



スプーンをゆっくりと食器の上に置いたはポツリと寂しそうに呟いた。








それだけ泣いたって…悩んだって…


アスランは私の物にはならないんだもの…。


私だけの人にはなってくれないんだもの…。




きっと、今こうしている間にも、カガリの為に時間を費やしてる。


カガリの為に、アスランの時間がある…。






「キラこそ…暇なのね。わざわざ私の様子見に来てくれるなんて。」


「本当、そうだよね…。」





やっぱりこうして向かい合って話していても…。



昔の様な鼓動の高鳴りは感じられないし…。


一緒に居て楽しいのは確かなんだけれど…。


これが愛情とは到底思えない。



















「……?」




「え…?」



キラが席を立った直後、誰かがを呼ぶ。



その声の主に心当たりのあるの肩が一瞬強張る。



「…アス…ラン?」



やっぱり…。



目の前に居るのは、間違い無くアスラン。



カガリと一緒に居るのだろうと思ったら、彼は1人だった。





「…1人…?」



「…こそ…1人なのか?」



「あ…私は…」





アスランはテーブルに目配せする。


テーブルには2人分の水の入ったグラス。



誰かと一緒なのはすぐに分かった。





誰と…?



アスランの心臓が僅かに跳ねる。


けれど、その動揺を顔には出さない。


には悟られないように…。







、そろそろ出…」



不在だった空席に戻って来たのは、の元彼…。



あぁ…もしかして…




「キラ、そろそろ出よっか!」



「あ…うん。」




は勢い良く立ち上がると、隅に置かれた伝票を手に取る。






「じゃ、アスラン。またカレッジで…ね?」



「…あ…あぁ。」




キラが軽くアスランに頭を下げ、の後を追って入り口へと向かう。


















「…?」




さっきまでが座っていたテーブルの端に、見覚えのある手帳が置かれていた。



確かこれはの…



がいつもカレッジで愛用している手帳だ…。



これが無いと困るんじゃ…





慌てて手に取り、店の入り口に戻るが、すでに2人は店を出た後だった。






明日、カレッジで渡せばいいか…。


そう思って店内に戻ろうとしたその時、手帳から1枚の紙がヒラリと床に落ちた。







「…写真…?」



床に裏向きに落ちた写真…


脳裏を何かが過ぎる…。




の…想い人の写真…?


そんな予感がした。




微かに震える指先でその写真を拾うと、アスランの心拍数は確実に上がっていた。




の心を釘付けにする男が…一体どんな人物なのか…。



知りたい気持ちと、知りたくない気持ちが交差する。


けれど、この機会を逃したら分からないまま…。



その写真が想い人と決まった訳でも無いのに…。











「…え…?」
















写真に映し出されているのは、意外な人物だった。



一番、あり得ないと思っていた人物だった。




「まさか…そんな…」






と一緒に笑顔で映る男…。






「どうしてこの写真を…」






それは、間違いなくアスラン本人とのツーショットの写真だった。















夏に行ったキャンプ場で…ミリアリアが撮ってくれた写真だ。


それは間違い無い。



あの時、俺はに特別な感情は抱いていなかったが…


それでも良く覚えていた。




その写真をが自分の手帳に挟んでいる…。




の想い人は…俺…?



嘘…だろ?























「あ!!」



「…何?」



店を出て数分が経過した時、が思い出した様に急に声を上げた。




「手帳!お店に置いて来ちゃった!!」


先の予定が丁寧に書き込んである大事な手帳なのに…


しかも…あの手帳の中にはアスランと撮った写真が…!!






「僕が取って来るよ。」


「え…でも…」



「いいから。はここで待ってて。」



ちょうど側にあったベンチにを座らせる。




「ごめん、ありがとね。」



「うん、すぐに戻って来るからね。」





キラは来た道を小走りで戻って行った。










助かっちゃった…。


大事な手帳だから、取りに戻りたかったんだけど…


まだアスランが居るだろうから、行き難かった。


もしかしたらカガリと待ち合わせなのかも知れないし…。





「弱いなぁ…私。」




どうせ明日、カレッジに行ったら嫌でも2人の並ぶ姿を見なくちゃいけないのに…。


いつまでも避けて通れる訳じゃないのに…。




こんなんで…今まで通り、何も無かったフリ、出来るのかな…。













「あ…」




キラが店に戻ると、外にアスランの姿があった。




「あ…」



アスランもキラの姿に気付き、視線を向ける。




「あ、その手帳…」



アスランの手の中にあった手帳は間違い無くの物だった。



昔から使ってる…キラにも見覚えのある物…。




の…だよな?」


「…うん。」


アスランが手帳を差し出すと、キラは応えるようにそれを受け取った。






「君は…知ってるんだよな…?」



「え…?」



の…好きな人が誰なのか…」






そう言われて、キラは手帳に視線を落とす。



手帳の端からはみ出ている写真に目を見開いた。













【あとがき】


早々と気付いて貰っちゃいました。

だって…あんまりダラダラとカガリに付き纏われても困るんだもの。

ここからクライマックスに向けて急展開…でしょうか?

未だ、何話完結かハッキリとお伝え出来ません(コラ)

作者にも道の領域です。

こんな管理人でスミマセン。

最近、色んな感想がいただけて本当に嬉しいです。

12話も頑張って書きます♪

待っててくださいませ☆






2005.5.2 梨惟菜






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