『アスランの事が好きになったみたいだ…。』
そんなメールがカガリから届いたのは深夜0時を回った頃だった。
たった一行のメッセージが表示される携帯を見つめながら、返事に迷う自分が居た。
どう返事を返したらいいのだろうか。
何度も文字を打っては消し、また打つ。
その間にも時間は刻々と深夜になり…。
私は深い溜息をついた。
カガリからメールが届いて30分。
ようやく返した返事は…
『私もアスランが好きだよ。』
友情と愛情のはざまで
眠い目をこすりながらようやく辿り着いたカレッジ。
なのに、掲示板には『1限休講』の文字。
昨日の時点で分かってたらもっとゆっくり寝れたのに…。
私は深く溜息をついた。
「!!」
落ち込む私を呼ぶ声。
一気に機嫌の直った私はすぐさま振り返る。
視線の先には…大好きな人の姿。
「アスラン!おはよう。」
「おはよう。」
笑顔で告げるとアスランも笑顔で返してくれる。
「1限、休講だって。せっかく起きたのに損した気分。」
「そうだな…。2限も空きだから時間余ったな。」
少し混雑して来た掲示板の前から抜け出した私達は、側のベンチに腰掛けて話し始めた。
「ね、せっかく3時間も空いたんだから、どこか遠出しない?」
「…そうだな…。カレッジに居てもする事もないし…。
行きたい所でもあるのか?」
「ん。海行きたい♪」
「海!?こんな季節にか!?」
「急に見たくなったの。」
確かに今は11月…。
海に行くには少し肌寒い季節な気もする。
でも正直、海じゃなくてもいいんだ。
アスランと2人で居られるなら…。
「…寒い…。」
エレカを飛ばして辿り着いた海で、2人は軽く震えていた。
さすがに季節外れの海に人影は無い。
平日だというのも原因の一つだろうが…。
「ゴメン。やっぱハズレだったねぇ。」
確かに広がる景色は綺麗なんだけど…。
肌に突き刺さる秋の風は少し痛い。
「とにかく、どこか店に入ろう。」
「ん。」
私達は近くにあった喫茶店に入る事にした。
「あったかぁ〜い。」
ミルクティを口に運びながら思わず笑顔がこぼれる。
そんな私の顔を見て、アスランはクスクスと笑った。
「な…何?」
「ってさ、何か食べたりしてる時が一番幸せそうな顔するよな。」
「だ…だって!美味しいんだもん!!」
アスランに指摘され、思わず顔が赤くなる。
それだけじゃないんだよ…。
好きな人と2人きりで向き合ってお茶してるんだもん…。
幸せに決まってるじゃない…。
ピルルルル…
喫茶店に入って30分が経過した頃、アスランの携帯が鳴った。
「忘れてた…。」
「え?何?」
「ディアッカからだ…。」
携帯のディスプレイを私に向ける。
画面にはディアッカの名前と番号。
「いっけない…連絡入れるの忘れてた。」
「悪いディアッカ。連絡入れるの忘れてた。
今?と一緒。1限が休講だったから遠出してるんだ。
3限には戻るから…今日は3人で食べてくれ。
あぁ…じゃあまた後でな…。」
「…戻らなくて良かった?」
「あぁ。せっかく遠出して来たし…。
このままここでランチでも食べて行こう。」
そう言いながら、アスランがランチメニューを指差す。
「今日のランチ。の好きなパスタだろ?」
「ご馳走様♪驕ってもらっちゃって本当に良かったの?」
「たまには…な。2人じゃなかったら驕ってないさ。」
「ラッキー♪」
店を出た私達はエレカに向かう。
そろそろ出ないと3限に間に合わないから…。
私とアスランはカレッジに入ってすぐ、意気投合した仲間の1人。
いつも一緒にいるメンバーは全部で5人。
カガリ、ミリアリア、ディアッカ…。
そしてアスランと私。
同じ科だから履修科目もほとんど同じで…。
ただ、月曜の1限の選択科目だけは私とアスランの2人きり。
何となくそれが嬉しかったり…。
2限は空きだから、いつも5人で早く集まって遊びに行ってランチしてから3限出るのが当たり前になっていた。
勿論、今日もその筈だった…。
それを私もアスランもうっかり忘れていて…。
私としては嬉しい事なんだけどね…。
けれど、カレッジに戻るエレカの中で昨夜のメールが蘇る。
『アスランの事が好きになったみたいだ…。』
こういうの、抜け駆けって言うのかな…。
カレッジに戻ったのは始業5分前だった。
「アスラン、!こっちこっち!!」
教室の後ろの方でディアッカが手を振る。
「ゴメンゴメン!席、ありがとね〜。」
5人掛けの机の端2つが空けられていて、そこへ並んで腰掛ける。
「、おはよ〜。」
カガリとミリィが笑顔で手を振って来た。
『おはよう』と言うには少し遅い時間だけれど…。
「おはよ〜。今日はゴメンね〜。」
「いいって。気にしないで。」
ミリィが笑顔で返した時、始業のベルが鳴った。
「、一緒に帰らないか?」
4限まで終わって、カガリが私に声を掛けてくれた。
「うん。」
荷物をまとめるとカガリと並んで教室を出た。
授業ではいつも一緒の5人だけど、一緒に揃って帰る事はあまり無い。
今日も帰りはバラバラだった。
アスランは5限に選択科目が入っていてまだ帰れないし、
1人暮らしのミリィはこれからバイトだと言って急いで帰ってしまった。
寮生活のディアッカは1年上のルームメイトと帰る約束をしているらしく…。
特に用事の無い私とカガリは良く一緒に帰っている。
「今日、ゴメンね…。」
「何がだ…?」
「その…アスランと…」
謝るのも何だか変だとは思ったけど…。
かと言って昨日の今日だし…。
「あぁ、気にするな。私はただ、自分の気持ちをに話しておきたかっただけだから。
の気持ちには驚いたけどな…。」
「私も…ビックリした。」
「立場はお互い同じなんだし、今まで通りでいいんじゃないか?
恋愛にルールなんて無いと思うからな。」
「そう…だね。ありがと。」
カガリは市長の一人娘で、いわゆるお嬢様だ。
けど、本人の口調や仕草からはそんな雰囲気は全く感じられなくて…。
常に自然体な感じが何となく羨ましい。
カレッジに入って8ヶ月…。
違うハイスクールから集まって来た5人には色々あって…。
去年の今頃は、皆それぞれに恋人が居たけれど、今は偶然にも全員がフリーだったりする。
結構年上の彼と付き合っていて別れたカガリ。
遠距離が原因で破局になったミリィ。
女友達との関係を疑われて振られたディアッカ。
すれ違いの生活から別れを告げられたアスラン。
そして私も…。
2年越しの片想いが実り、晴れて付き合う事になったのは去年の夏。
毎日が楽しくて仕方なくて…。
けれど、冬が過ぎて受験シーズンに入った頃…。
志望校の違う私達はお互いの受験に一生懸命で…。
受験が終わるまでは我慢しようね…って会うのを控えてた。
彼はもう推薦で決まっていたけれど、本命一本に絞っていたから必死で…。
受験が終わったら一緒にいられる…。
それだけを目標に頑張って…そして志望校に合格した。
でも…その間に彼の気持ちは冷めていた。
合格通知と共に告げられた、別れの言葉。
返す言葉も無く終わった恋…。
去年の今頃は幸せの絶頂だったのになぁ…。
秋の空を仰ぎながら、柔らかい陽射しに目を細めた。
【あとがき】
これは…学園モノとでも言うのでしょうか?
複雑に絡み合う男女5人の恋愛模様。
何となくそんな雰囲気の物語が書きたくなって書いてみました。
ヒロインVSカガリ
アスランVSキラ
こんな感じのお話です。
でもまぁ、アスラン至上主義の管理人なので結局はアスラン夢なんですけどね。
2005.4.12 梨惟菜