君が望む暁

 PHASE−08 愛しいと気付いても…





















「フレイ…落ち着いたみたい…。」










取り乱し…泣き疲れて眠ってしまった彼女を確認したミリアリアが部屋から出て来た。






「そう…良かった…。」










心配で仕事を抜けて来たもホッとした。







先の戦闘で…この艦は窮地に立たされた。



アークエンジェルを迎えに来てくれた先遣隊が、先回りしていたザフト艦に攻撃を受け…



応戦したものの、戦闘の最中、先遣隊が全滅した。




その先遣隊と一緒にフレイの父親も居て…共に還らぬ人となった。








泣き崩れ…サイの胸に縋って泣く彼女…




戻って来たキラにフレイが放った一言…






『アンタ…自分もコーディネイターだからって本気で戦ってないんでしょう!?』













衝撃を受けた…。




必死に…死に物狂いで戦っていたキラ…




でも…彼女にその必死さは伝わらない…




逆に彼女を追い詰める結果となってしまって…






痛くて…胸が痛くて…














「じゃあ…私もそろそろ仕事に戻るね…。」






「あ……」





「?何…?」







再び振り返るの顔を覗き込み、ミリアリアは告げる。






「大丈夫?疲れてない?」




「ん?大丈夫よ?」




「ならいいけど…無理しないでね?」




「ありがとう。じゃあね…。」




















「あ…」






フワリと…ピンクの髪が展望デッキへと吸い込まれていくのが見えた。






さっきの戦闘で…人質として晒されてしまった彼女…。




不本意ではあったけれど…あの戦闘を脱するには仕方の無い手段だったと…




でも…彼女の部屋にはしっかりと施錠されている筈なのに…







何故…展望デッキなんかに…












そっと中を覗き込むと…




息が詰まった…。











視線の先には…彼女とキラの姿…












何を話しているのかはこの距離では聞き取れない。




でも…優しく微笑む彼女と…悲しそうに俯く彼…







背後には広がる宇宙の闇と、瞬く星。






2人の姿が幻想的に照らし出されて…




胸が…痛い…







愛しいと気付いても…私には何も出来ない。





余計に自分がちっぽけな存在なんだと感じてしまうだけで…





どう足掻いてもキラには釣り合わないんだと実感させられて…






だって…私はナチュラルだもの…







気付かれないように…そっと展望デッキから遠ざかる。






















、何をしていた?遅いぞ。」






ブリッジへ戻ると同時に、姉様のお叱りが待っていた。






「…済みません。」





重い足取りでシートへと向かう。






「おい…何か顔色が悪くないか?」




の異変に気付いたノイマンは彼女を気遣って声を掛ける。




「あ…大丈夫です。」





そう微笑んでシートに手を掛けた瞬間…




視界が歪む。




「あ…れ…?」





!!」
























「…ごめんなさい…迷惑掛けちゃって…」






「いいって。気にするな。この状況では良くやってるよ。」






ブリッジで倒れてしまったはノイマンに運ばれて部屋へと戻る。





「お前、軍医資格、持ってただろ?自己管理くらいはちゃんとしとけよ。」




「知って…たんですか…?」





姉様しか知らないと思ってたのに…。






「とにかく…今日はゆっくり休め。な?」




「ありがとう…ございます。」
























天井を見つめながら自然と漏れる溜息…。




情けない。





これで軍人だなんて…笑っちゃうよ…







無重力空間なのに体が重い…





休まなきゃ…って分かってるんだけど…




頭の中をグルグルと駆け巡るあのビジョン…





苦しいよ…




好きな人が他の人を見てるの…苦しい。





分かってるのに抜け出せない。




止めたいのに…この想いは止まらない。





顔を見る度に愛しさが募って…胸が苦しくなって…





こんな気持ち…初めて。






誰かを愛しいと想うのも、彼の傍に居る他の人に嫉妬するのも…







ずっと憧れてた。




誰かを特別に想う事。



普通の女の子みたいに恋をして…ドキドキワクワクする事。






でも…現実はそうじゃない。




ちっともキレイなんかじゃない。





こんなドロドロとした醜い感情…



私…最低だ。





彼女が…ラクスさんが居なかったら…って思ってる。




そんな自分が嫌で嫌でたまらない…






瞳から溢れる涙の粒が宙を舞う。




休まなくちゃいけないのに…眠れないよ…























ビーッ!!







ようやく眠りに就きそうになった頃…




艦内のアラートが鳴り響く。






…敵襲!?






重い体を無理やり起こし、掛けていた上着を羽織って飛び出す。




ここが無重力空間で助かった。



もしも地上だったら、思うように走れなくてきっともどかしかっただろうから。













「何があったんですか!?」







ブリッジには夜勤組のクルーが残っている。







「坊主が無断で飛び出しやがったんだよ!しかもピンクのお姫様を連れてな!」





「キラが…!?」




彼女を連れて?



まさか…脱走…!?






「どうやら彼女をザフトに返すつもりらしい。俺も待機する!敵が仕掛けてくるかもしれん!」






大尉が抜けたシートに腰を下ろす。




キラが…彼女をザフトに返す?




モニターに映し出されたストライク…。



あの中に…キラとラクスさんが?









また…色んな感情が頭の中を渦巻く。









2人が一緒に飛び出して行った事に対する嫉妬…




彼女がキラと離れる安堵感…




そして…キラは戻って来てくれるのか…という不安…








キラは…戻って来てくれるよね…?




一緒にザフトに行ったりしないよね…?







気が付けば不安が感情の大半を占めていて…




まだ回復しきっていない頭がクラクラとする。








愛しいと気付いても…




この想いは叶わない。




それでも傍に居たいと思うの。




少しでもいい…私の事を見て欲しいと思うの。


















今まで何かを心の底から望んだ事なんて無かった。




でも…




少しだけでもいい…





夢を見させて?









キラの…傍に居たいです…。




















【あとがき】

え〜

相当なスローペースではありますが…

コソコソと省略しつつ…ですね。

ここではラクスに嫉妬。

これから先はフレイに嫉妬。

更に暗くなるヒロイン。

まるで昼ドラの様なドロドロとした展開。

書いてて楽しいような…複雑な…ねぇ。

種でのキラは精神的に脆い部分が強いですね。

ヒロインも精神的に脆いです。

共倒れ?心配な2人。


ここまで読んで下さってありがとうございました♪








2005.9.22 梨惟菜










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