失って気付く、大切な物の愛おしさ・・・
でも、二度と戻る事の無い幸福な日々をただ悔やむばかり・・・
あなたを心から愛して・・・
あなたに心から愛されて・・・
そして、その手を離してしまったから・・・
もうあの頃には戻れないのだろうか・・・
7Days Love
<<2>>
オノゴロへと向かう小型機の中では小さく溜息をついた。
昨日、突然外出したアスランが連れて帰った人物・・・。
ラクスからイザークが来ると聞かされ、正直驚きが隠せなかった。
イザークと別れて3ヶ月・・・。
何故、今になって彼は現れたのだろうか・・・?
イザークが来た理由を唯一聞かされていなかったにとって、イザークの行動は理解できなかった。
一生懸命笑顔を作ったけれど、ちゃんと笑えていただろうか・・・?
「お早うございます、イザーク様。良くお休みになれましたか?」
普段、異常な程に早起きのイザークだったが、慣れない環境に疲れたのか、目覚めると昼近かった。
「お早うございます、ラクス嬢。遅くまで寝てしまって申し訳ない・・・。」
「いえ。長旅でお疲れだったのでしょう。そろそろ昼食の時間ですわ。」
あまりの静けさに驚いた。
ここには都会的な喧騒も無く、静かに響く波音と穏やかな陽射しが全ての様に感じられた。
砂浜を歩く足音が心地良く耳に流れ込む。
こんなに穏やかな時間を過ごすのも久し振りだった・・・。
海辺の木陰に腰を下ろしたイザークは手に持っていた洋書を開いた。
読みかけのその本から栞を抜いたイザークはそのページからゆっくりと視線を動かし始めた。
波音のBGMが心地良く、読書はいつも以上にはかどった。
気が付けば陽は西の海に傾いていた。
時間を忘れる程に読書に熱中していたイザークは赤く染まる海を見ながら目を細める。
ちょうどその時、上空を一機の小型機が通過した。
恐らく、が仕事から帰ったのだろう・・・。
イザークは重い腰をゆっくりと上げると、家の方向へと踵を返す。
「あらあら。食事中はもっと静かにしないといけませんわよ?」
ちゃんとした食事もあまり取らないイザークにとって、こんなに賑やかな食卓は新鮮だ。
常に笑の絶えない華やかな食事。
子供達やラクス、そしての笑顔。
子供達に注意しながらも楽しそうに談笑に加わる。
以前と変わらない、華やかな笑顔。
その笑顔はイザークにではなく、子供達や他の仲間に向けられていた。
当然の事ではあるが、は決してイザークと視線を合わせようとはしない。
だから、イザークも時々遠慮がちに彼女の表情を伺うだけで、どうしても直視出来なかった。
あまりに眩し過ぎる笑顔・・・。
俺にはその笑顔と向き合う資格は無いような気がしてならなくて・・・。
イザークも気が付いていなかった。
時折、が寂しそうな表情になる事を・・・。
その時は決まって、同じ場所を見ていた。
そう、かつての恋人であるイザークの顔・・・。
相変わらず、無愛想な表情のイザーク・・・。
でも、それは彼が不器用だからで、決して怒っている訳ではない。
それを知っているから、は時々彼の整った顔に視線を送った。
どうしても直視する事が出来なくて・・・一瞬チラッと掠めるだけ。
視線は一度もぶつかる事のないまま、食事は終わった・・・。
「だいぶ笑うようになったんだ・・・。」
食後、浜辺へと出たイザークの後を追う様に、アスランが声を掛けた。
「そうか・・・。」
以前と変わらない彼女に立ち直るまで、アスランやラクス達はずっと傍らで見守って来た。
けれど、それは自身の問題だったから・・・。
何もしてあげられない無力さに誰もが思い悩んだ時期もあった。
だからこそ、今こうしてが笑ってくれるだけで皆嬉しかった。
「まだ・・・愛してるんだろ・・・?」
月明かりがイザークの銀髪を美しく照らし、夜風がその滑らかな髪を宙に流す。
『愛してる・・・?』
その言葉を頭の中で何度もリフレインさせる・・・。
鮮明に蘇る、と過ごした時間。
決して長い時間ではない。
2人が過ごした時間はあまりに短すぎて・・・。
それなのに、どうしてこんなにも苦しいのだろう・・・。
「簡単に消せる想いだったら・・・楽なんだろうな。」
「そうだな・・・。」
「イザークは・・・どうしてここへ来たのかな・・・?」
ゆっくりと夢の中へ沈んで行く子供達を撫でながら、は小声で呟いた。
「気になりますか・・・?」
優しく微笑んだラクスはにそう返す。
「そりゃあ・・・急に来たら気になるでしょう?」
もう、二度と会わないつもりでいたから・・・。
別れたあの日から、どうしても忘れる事が出来ないイザークの冷たい言葉。
忘れたくても忘れる事が出来なくて・・・。
毎晩、夢に見るの。
ディアッカからシャトルを撃ったパイロットの話を聞いた時の事・・・
イザークと初めて出会った瞬間の事・・・
イザークと初めて2人きりで食事をしたあの夜・・・
互いの想いが初めて重なり合ったあの夜・・・
そして、もう愛せないと言われたあの瞬間・・・。
何もかもが脳裏に鮮明に焼き付いている。
どれほど願っても、もう共に歩む事は出来ない。
一緒に居たいと願っても、それは叶わない。
彼に罪はない・・・
そう言ってもイザークは納得してくれないのだろう。
自分が許せないのだろう・・・。
だから、私達は終わったのだと・・・。
地球へ戻って、毎日苦しくて悲しくて・・・
それでも、生きているからお腹は空くし、疲れる・・・。
何もしたくなくても、働かないといけない・・・。
そうして日々を必死に生きている内に、少しずつ考えるようになった。
イザークの選択は正しかったんじゃないか・・・って。
一緒に居ても傷付け合う事しか出来ないのなら、離れてしまった方がずっといい。
お互いの心に刻まれた傷は深くて、簡単に消せるものではない・・・。
だから、イザークは私に別れを告げたんだ・・・って。
ようやく、現実を受け入れ始めようとしていた矢先だった。
「まだ・・・愛しているのでしょう?」
ラクスの言葉はいつも何か重みがあった。
確実に私が探している答えを導き出してくれるかのように・・・。
「簡単に消せる想いだったら良かったのにね・・・。」
「そうですわね・・・。」
【あとがき】
もどかしいですね・・・。
もう、自分でも何が書きたいのか分からなくなってきた・・・。
こんなんで大丈夫なんでしょうか・・・(汗)
よくよく考えると、1週間って長いようで短いようで・・・
2人にとって、この1週間はどっちなんでしょうね・・・。
お互いに不器用なので、誰かが助けてあげないとなぁ・・・と思って・・・。
今回はアスランとラクスに頑張って貰いました。
えっと・・・カガリ出て来ませんが気にしないで下さい。
出す予定はありません。
アスカガは有り得ないので・・・(笑)
まぁ、ココへ来て下さる皆様、同じご意見だと思いますしね〜。
では、3日目も全力で頑張ります!
2005.3.28 梨惟菜