失って気付く、大切な物の愛おしさ・・・




でも、二度と戻る事の無い幸福な日々をただ悔やむばかり・・・





あなたを心から愛して・・・


あなたに心から愛されて・・・







そして、その手を離してしまったから・・・





もうあの頃には戻れないのだろうか・・・















7Days Love


   <<3>>

















「6時か・・・」




ゆっくりと体を起こしたイザークはベッドから抜け出した。



家の中はまだ静まり返っている。



この時間に起きるのが当たり前になっているイザークにとっては苦になる時間ではない。





窓から裏庭を覗くと、が使用している小型機は既に無かった。



わざわざオノゴロまで仕事に出ているのだから当然だが、あまりの早さにイザークも驚く。








物音を立てない様、イザークはゆっくりと、静かに外へ出た。





朝日が照らす海辺を散歩する。



地球へ来るのは初めてでは無かったが、以前来た時は戦争の真っ最中で海をゆっくりと見る機会も無かった。



ここから見る景色は嫌いではない・・・。


時間がゆっくり流れているように感じられるからだろうか・・・。








残された時間は少ない・・・。


未だ解決していない問題はあるけれど、どうしろと言うのだろうか・・・。




に話して何か解決するのか?


逆に彼女を苦しませてしまうだけではないのか・・・?




罪を犯したのは自分だし、は被害者だ。



それなのにまだ、自分の状態を伝えて慰めてでももらえと・・・?




都合の良すぎる話だ。




やはり、このまま何も語らずに帰るのが正しいのではないかと思い始めていた。



乗れないのなら仕方ない。


それが罰だというのなら・・・それで償えると言うのなら、大人しく従うまでだ。





たかがMSに乗れないだけではないか・・・。



の受けた傷はもっと大きくて深い・・・。
























海辺という場所は不思議な場所だ・・・。


あまりの穏やかさに、普段考えたくもない事まで真剣に考えてしまう。



気が付けば、昨日読書をしていた場所へと足が向かっていた。



しかし、その場所には先客が居た。




栗色の髪を靡かせて、無言で陽が昇る水平線を眺めている少年・・・。





キラ・・・ヤマトだったな・・・。





アスランの親友で、元ストライクのパイロット・・・。



俺の顔に傷を残した宿敵・・・。



いつか、奴を撃つと心に誓った事もあった。




だからこそ、素顔を見た瞬間、驚きが隠せなかった。



あまりにも優しそうな、穏やかな顔立ち。


決して、人を傷付ける事が出来るような人間には見えなかった。



彼を見た瞬間、イザークの脳裏に蘇ったのはかつての戦友、ニコル。



アイツと同じ、戦争には向かない人間だと思った。












「早いんですね。」



先に口を開いたのはキラだった。



「あぁ・・・お前も・・・」



「戦争が終わってから、あまり眠れなくなって・・・。
良かったら少し話しませんか・・・?」















キラとが出会ったのはオーブ解放戦の時だった。



クサナギで共に宇宙へと上がった



彼女の家族がヘリオポリスの避難民のシャトルに乗っていたと聞いた瞬間、あの時の記憶が鮮明に蘇った。






自分が守ろうとして守れなかった人達・・・。


その中に、の家族も居た。





自分の無力さが悔しくて・・・いたたまれない気持ちに襲われて・・・。



ただ謝罪する事しか出来なかった自分を、は一度も責めなかった。



『戦争なのだから仕方ない。』



彼女の口癖だった。




そんなが心から愛した人が、皮肉にも家族の乗ったシャトルを撃ち落したMSのパイロット。





プラントからボロボロに傷付いて戻って来たを見て、衝撃を受けた。



それ程に愛していたのに、別れなければならなかった事に・・・。




だからこそ、今回のイザークの話をアスランから聞いた時、彼と話がしたいと思った。


自分の、戦争に対する思いを話したいと思ったのだ・・・。



















「僕は・・・あなた達の仲間を沢山殺しました。」


「あぁ・・・俺も同じだ。」



淡々と語るキラにイザークも相槌を打つ。








「あの時、僕がアスランの友達を撃って・・・アスランが僕の友達を撃って・・・。
だから、もう僕達は二度と肩を並べて歩く事なんて出来ないと思ってました・・・。」





だいぶ経って、ディアッカから聞かされた話を思い出す。



アスランとキラは昔からの友達で、互いにそれを知っていて戦い合っていたと。




「でも、こうして僕達はまた共に戦って、こうして生きている。
戦争で大事な人を失っても、戦って生きている。
ずっと、考えていたんです。
どうして僕はまだ生きているんだろう・・・って。
人の命を奪ってまで生きているのはどうしてだろう・・・って。」




キラの言葉に重みを感じた・・・。




『平和の為』



そう、確かに俺達はその平和を願って戦って来た。


そして、多くの命を奪い、多くの仲間を犠牲にした。




そして訪れた平和・・・。





けれど、大事な人を失った人にとって、今は平和なのか・・・?



大事な人が側に居てこそ意味のある平和なのに・・・。









「でも、こうしてここで過ごしている内に自分なりに考えたんです。
今、僕に出来る事があるとしたら、それは生きる事なんだって・・・。」




「・・・どうして・・・そう思う?」



「確かに、犯した罪は大きいです。
だからって、僕が死んだ所で失った命が戻る訳じゃないから・・・。
生き続ける事が・・・一生懸命に生きて行く事が僕に出来る償いだと思ったから・・・。
もう二度と、同じ過ちを繰り返さないように・・・。」






『同じ過ちを繰り返さないように』




イザークにとって、大き過ぎる言葉だった。


普段なら年下の話などまともに聞かないであろう彼が、真剣に聞き入っていた。



償える事があるとしたら・・・。








俺は・・・まだを愛している・・・。



愛する資格など無いと思っていた。



それでも一緒に居たいと言ってくれたのあの瞳を思い返す。



側に居たいと・・・


俺が家族を奪った憎い相手だと知っていて愛してくれた・・・。







俺にとって、それは重荷だったのか・・・?



だから、捨てたのか・・・?







自分の想いが正しいのか・・・


自分の理性が正しいのか・・・




このまま、望むままに生きてもいいのか・・・






それが分からない・・・。





ただ、キラの言葉が重く圧し掛かって頭から離れない。





キラが出した答え・・・。




俺は、自分の答えを見つける事が出来るのだろうか・・・。






もし、が求めてくれるのであれば・・・


自分で傷つけておきながらも、まだそんな淡い期待を胸に抱く自分を心底馬鹿だと思った・・・。



















【あとがき】


今回はキラに頑張ってもらいました。

どうなんだろう・・・この2人・・・みたいな。

何か、イザークってキラには勝てない気がするんですよ。

キラの前では大人しい・・・みたいな。

何だかんだ言って、キラの方が精神的に大人な気がするんですね。


・・・って、今回ちっともヒロイン出てないし・・・

絡んでないし・・・。


ここからです!

地球編も折り返し地点ですからね〜♪





では、ここまで読んでくださってありがとうございました♪





2005.3.30 梨惟菜





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