出会ってはいけなかった・・・。
惹かれ合ってはいけなかった・・・。
けれど・・・
もう、後戻りは出来ない・・・。
私達は出会ってしまったから・・・。
7Days Love
<<6>>
「ん・・・」
寒い・・・
体がひんやりとしている・・・
重たい瞼を上げたは、見慣れた天井から目を逸らし寝返りを打った。
その直後に視界に入った銀髪に目を見開く。
「あ・・・」
ようやく昨夜の出来事を思い出したは頬を染めた。
寒くて当然なのだ。
衣服を身に纏っていないから・・・。
目の前で静かに寝息を立てるイザークも同じだった・・・。
「ん・・・」
眉間にしわを寄せたイザークは、無意識に目の前にあるものを抱き締める。
「ひゃ・・・!」
突然伸ばされた手をかわす事が出来なかったは、そのままイザークに抱きすくめられた。
イザークの滑らかな銀髪が頬をくすぐる・・・。
そっと指に絡めて遊ぶの表情は穏やかで・・・
これが『幸せ』という感情なのだと実感していた。
ピルルルルッ!!
突然のコール音に驚いたは遊んでいた手を慌てて引いた。
「・・・何だ・・・?」
目を開いたイザークは何事も無かったかの様に、枕元の携帯に手を伸ばした。
「・・・何?・・・あぁ、分かった。あぁ。」
誰からの電話かも分からないの耳元でイザークは冷静に会話をする。
それでもを抱くその手は解放される事が無く・・・
は戸惑いながらも頬を赤く染め俯いた。
「・・・すまん。評議会からの呼び出しだ。」
「・・・そっか・・・。」
携帯の電源を落とし、腕の中で恥じらうの額に唇を乗せた。
「大した用件でもないみたいだ・・・。一緒に行くか?」
「え・・・でも・・・。」
「本当は一日中こうしていたかったんだがな・・・。」
「な・・・何言って・・・。」
「・・・冗談だ。」
イザークは意地悪に微笑むとベッドから抜け出し、シャツを羽織った。
「シャワー、先に借りるぞ。」
シーツに包まったは、胸元に刻まれた赤い印にそっと手を触れる。
イザークと愛し合った証・・・。
バスルームから聞こえる水音・・・
まだ信じられなかった。
まだ夢の中にいるような気分だった。
「じゃ、ここで待ってるね。」
イザークを送り出したは、ラウンジへと足を踏み入れた。
時間帯のせいか、人の気配は無い。
ソファに腰を下ろしたは先程入れたばかりのレモンティーを口に運んだ。
大好きな人と同じベッドで迎えた朝・・・。
何とも言えない幸福感に包まれて・・・。
でも、今になって冷静に見える現実。
本当に・・・これで幸せなのだろうか・・・。
無意識の内に漏れた溜息。
「その溜息は幸せと不幸せのどっちの意味なんだろうな・・・。」
慌てて振り返ると、そこにはディアッカが居た。
「ディアッカ・・・」
「2人で過ごせ・・・なんて、無神経だった?」
ディアッカは複雑そうな表情での隣に腰を下ろした。
用事を済ませたイザークは、愛しいの待つラウンジへ足を踏み入れようとした。
「イザークに・・・本当の事、話さなくていいのか?」
本当の・・・事・・・?
ディアッカの意味深な言葉に、イザークの足が止まった。
俺の知らない事・・・?
何故ディアッカが・・・
「もう・・・過ぎた事だもの・・・。言ったって彼を苦しめるだけよ。
このまま何も言わなければ・・・私達はずっと一緒に居られる。」
「それで本当に幸せになれるワケ?」
「知らない方が幸せな事もあるわ・・・。」
2人の言っている事がまるで理解出来ないイザークは、黙ってその場で立ち尽くしていた・・・。
「、待たせたな・・・。」
一通り会話が終わったのを見計らって、イザークはに声を掛けた。
「お疲れ様。」
は笑顔で立ち上がり、イザークの元へと歩み寄る。
その光景を黙って見つめるディアッカに、イザークは視線を向けた。
「ディアッカ、仕事は済んだのか・・・?」
「あぁ、お陰様で何とか・・・ね。今日は早く帰れそうだ。」
「イザーク、これからどうする?」
屈託の無い笑顔で腕を絡めて来るを直視する事が出来なかった。
「すまん。少し用事が出来た。今日はもう時間を作ってやれそうに無いんだ。」
「そう・・・なの・・・。」
がっかりした表情で俯くの頭に手を乗せた。
「ホテルまで送る。明日は朝一番で会いに行くから。」
「・・・で?俺に改まって話って何?」
をホテルに送り届けたイザークが向かった先はディアッカの家だった。
「何を隠している・・・。全部話せ。」
イザークの言葉にディアッカは視線を逸らした。
「・・・俺の知らない真実とは何だ・・・?」
「に・・・口止めされてる。」
「構わん。話せ。聞く権利はあるのだろう・・・?」
イザークの真剣な瞳に、ディアッカはこれ以上逆らう事が出来なかった。
2人の未来の為に・・・話すべきではないのかも知れない・・・。
でも、黙っていてもいずれ分かってしまう事・・・。
「お前、前に大気圏突入前にストライクと戦って、1機シャトル落としただろ・・・?」
また随分と昔の話を・・・
イザークは必死に記憶を辿った・・・。
「あぁ・・・脱走兵の乗ったシャトルか・・・。」
「アレな、軍人じゃなくて民間人が乗ってたんだよ。俺もだいぶ経ってから聞かされた話なんだけど。」
「何・・・?」
民間人・・・?
馬鹿な・・・
「何故民間人が戦艦のシャトルから出てくるんだ・・・。」
「ヘリオポリスの住民。救命ポッドが遭難してた所を偶然保護されてたんだってさ。」
「そのシャトルが何か関係して・・・」
急に何かを悟った様に黙り込んでしまったイザークに、ディアッカは戸惑った。
もう気付いているんだろう・・・。
「まさか・・・それにの家族・・・が?」
馬鹿みたいな話だ・・・。
初めて愛した女の家族を奪ったのが自分だったとは・・・。
『知らなかった』では済まされない。
何をやっているんだ・・・俺は・・・。
何も知らずに無我夢中でを求めた・・・。
必死に愛の言葉を耳元で囁いて・・・。
今にも泣き出しそうなを必死に抱き締めて・・・。
あの表情の本当の意味も知らないまま・・・
俺にを愛する資格なんて無い・・・。
の幸せを奪っておいて・・・
何が『帰したくない』だ。
自分の愚かさと・・・昨夜の出来事をただ悔やむ事しか出来なかった・・・。
俺は・・・どうしたらいい・・・?
【あとがき】
いきなり急展開になってしまいました。
何となく予想ついてしまった気もするんですけどね・・・。
とうとう2人は一線を越えてしまったワケです。
でも、裏無しなんでその辺勘弁してくださいね。
さすがに裏書く気力は無いんです。
期待された方、すみませんです。
皆様のご想像にお任せしますんで、イザークとの夜を激しく妄想して下さい。(鬼)
さて、遂にヒロインに隠された過去が明かされた訳ですが・・・。
これでイザークはどうするのか?
まだまだ試練の連続です。
そう言いつつ、次で1週間なんですけどね・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
続きも読んでいただけると嬉しいです。
2005.3.23 梨惟菜