出会ってはいけなかった・・・。



惹かれ合ってはいけなかった・・・。



けれど・・・




もう、後戻りは出来ない・・・。






私達は出会ってしまったから・・・。











 7Days Love


   <<5>>













ピンポーン






5日目の朝・・・。




早くから起きて慌しく支度を整えるの部屋のチャイムが鳴った。





「・・・はい!!」




ドアを開けるとそこには・・・



ラフな格好をしたイザークの姿。




イザークは淡いピンク色のワンピース姿のに少し頬を染めた。







「支度は・・・済んだのか?」



「あ・・・う、うん。」




思わず私服姿のイザークに見とれてしまっていたは慌てて奥へバッグを取りに走った。








もっと可愛い服、持って来れば良かった。



はスカートの裾を軽く握った。




















「どこへ行きたいか・・・決めたのか・・・?」






「あ・・・うん。あのね、オペラ観たいの。」



「オペラ・・・?」




イザークが運転する車の助手席では昨日買ったばかりのガイドブックを開いた。



買ったばかりにしては随分と痛んでいる。



昨晩、遅くまで読み込んでいたのが良く分かる。





「今ね、ちょうど観たかったオペラをやってるの。」



「オペラか・・・。」



「あ、イザーク、オペラ苦手?」



「いや、以前は良く行ったが最近は時間も無かったからな・・・。久しぶりに行ってみるか。」



















「楽しかったか?」



「うん!最高だった!!」





期待していた通りの完成度には満足だった。


の手にはイザークに買ってもらったパンフレットが抱えられている。




自分で買うと行ったのだけれど、どうしてもと言われ、買ってもらった。


それが嬉しくては終始笑顔だった。




そんな彼女の笑顔にイザークも顔が綻ぶ。







「他に行きたい所はあるか?」



「う〜ん。一杯考えたんだけどね、どうしてもオペラが観たかったから、他の事は考えてないの・・・。」





困った顔でが考え込んだ。



「なら、買い物でも行くか?」


「・・・うん。」











ハンドルを握るイザークを横目で見たは、パンフレットをぎゅっと握り締めた。



どうしてこの人は私にこんなに良くしてくれるのか・・・。



その優しさの理由は何となく気付いていた・・・。




自惚れても良いのならば・・・。



私と限りなく似た感情を抱いてくれているのかもしれない。






嬉しいような・・・複雑な気持ちだった。



こんな気持ちは初めてで、どうしたらいいのか分からなかった。






イザークに優しくされる度に、心が温かくなる。


それと同時に、胸の奥がチクリと痛む。





何となく分かってた・・・。



私はこの人に『恋』をしているのだと。


そしてそれを認めないように・・・受け入れないようにしていた事を・・・。





















気が付けば赤く染まっていた夕暮れの時間も過ぎていた。



結局、今夜もイザークに連れられて高級なレストランでディナーを食べた。



慣れた様子でエスコートしてくれる彼に、住む世界の違いを感じさせられる。








「着いたぞ・・・。」




イザークに見せたいものがあると言われ、は黙って彼に付いて来た。



車から降りたの目に飛び込んできたのは、一面の夜景。



小高い丘から臨むそれは、人工的に作られた光が一面に散りばめられていた。





「うわ・・・ぁ・・・。」




「俺の部屋からの夜景よりもずっと綺麗だろう?」


「・・・うん・・・。」



「気に入っていたみたいだから、これも見せてやりたかったんだ。」



イザークに手を引かれ、は丘の頂へと立つ。






「すごいね・・・。こんな所もあるんだ・・・。」






全てを忘れて・・・このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・。



どうして・・・こんなにも私の心を掻き乱すの?


どうして・・・そんなに優しいの・・・?




私は決して口にしてはいけないの・・・。


例え、どんなにあなたを想っていたとしても。






















どれくらいの沈黙が続いただろう・・・



何も言葉が浮かばず、誤魔化すかのように無心で景色に目を向ける2人・・・



その沈黙を先に破ったのはイザークだった。







は・・・明後日にはオーブに戻るんだな・・・。」




明後日・・・



ここで過ごした時間の早さに改めて気付かされた。



無理を言って貰った1週間の休暇。


明後日にはオーブに戻って・・・またいつもの日常が始まる。


まるで今の出来事が夢だったかのように・・・。






言葉にする事の出来ないは、黙って頷いた。





「帰したくないな・・・」



その言葉と同時に感じる温もり・・・



イザークの力強い腕が、の小さな体をそっと包んだ。




「イザ・・・ク・・・」




「こんな気持ちは初めてだ・・・。を・・・愛している。」








私と・・・同じ気持ち・・・



離れたくない・・・一緒に居たい・・・



ダメ・・・言ってはいけない・・・





もう1人の私が必死に叫んでいるようだった・・・。






でも・・・止まらない・・・

止められない・・・







「私も・・・イザークと一緒に居たい・・・」


















【あとがき】


言っちゃった・・・

とにかくこの5話目はなかなか進まなくて悩んでました。

イザークの私服も微妙だもんなぁ・・・とか思いながら(殴)

ここから段々と泥沼化・・・もとい、シリアス化していく予定でございます。

何かいいカンジにくっついてんのに何だよ!みたいに思わないで下さいね。

そう簡単に幸せにはさせませんよぉ♪(鬼)


では、続きも読んでいただけると嬉しい限りでございます。




2005.3.22 梨惟菜






TOP | NEXT