失って気付く、大切な物の愛おしさ・・・




でも、二度と戻る事の無い幸福な日々をただ悔やむばかり・・・





あなたを心から愛して・・・


あなたに心から愛されて・・・







そして、その手を離してしまったから・・・





もうあの頃には戻れないのだろうか・・・















7Days Love


   <<6>>

















「じゃあ、元気でな。」



「あぁ、世話になった。」




固い握手を交わすイザークとアスランを、は嬉しそうに見つめる。




2人分の荷物を両手に持ったイザークは、小型機に向かって歩き始めた。




「じゃあ、行って来ます。明日の夕方には帰るね。」



「お気を付けて・・・。」













残った休日を2人きりで過ごしたい・・・。


2人の気持ちは同じ。



だから、6日目の朝早くにイザークは島を離れてオノゴロへと向かう事にした。


自分の荷物と、の一泊分の荷物。




両手が塞がれていて、手を繋げないのがもどかしかった。


それはも同じで・・・。




2人が同じ気持ちを抱ける事が何よりの幸せに感じられた・・・。




















「ねぇ、イザーク・・・。」



「ん?どうした?」



オノゴロに到着した2人は行き先を考えながら昼食を取っていた。



「・・・モルゲンレーテに・・・行かない?」


「モルゲンレーテに?何か用事でもあるのか?」



「MSのシュミレーション・・・モルゲンレーテなら出来るから・・・」



戻る前に一度乗ってみたら・・・?



心配そうに提案するに、イザークはフッと笑みを零した。


久し振りに見せる彼の笑みに、の頬が赤く染まる。



「心配するな。」


「でも・・・」


「そんな事をしている時間よりも、と過ごす時間の方が数倍貴重だ。」



普段と変わらない冷静な表情でコーヒーを口に運ぶイザーク。



心配してるのになぁ・・・。


そう思ったけれど、イザークの言葉が嬉しくて・・・。



素直に従う事にした。







「どこか、行きたい所はないのか?」



「たくさんあるわよ・・・。イザークとならどこにでも行きたい。」




「じゃあ、片っ端から行くとするか。」























「コレ!すごく似合ってるよ!!」



「・・・そうか・・・?」



黒いシャツを当て、嬉しそうに笑う

その笑顔につられ、イザークも頬を緩める。




「私ね、プラントで色々良くしてもらったでしょう?
だから、イザークに何かプレゼントとかしたかったの。」



でも、もう出来ないんだって諦めてたから・・・。




「ね、このシャツ、どうかな?好みじゃない?」


「いや、悪くないデザインだ。」


「じゃ、プレゼントさせて?いいでしょう?」


「あぁ・・・。」



そう答えると、は急いでレジへと駆けて行った。








そんな彼女の後姿にイザークは思わず頬を緩める。



その美しい容姿に目を奪われる女性は少なくは無かった。






















からプレゼントされたシャツの入った袋を片手に、2人は駐車場へと歩く。



通りを歩く2人を何人もの女性が振り返って見る事には気付いた。



改めて感じる、隣に立つ恋人の魅力。



きっと・・・プラントでもモテるんだろうな・・・。



そう考えると幸せな気持ちとは裏腹にちょっとした嫉妬が心に芽生える。










「・・・どうした?」




思わず彼の腕にギュッとしがみ付くに、イザークは目を細めた。




「・・・幸せだなぁ・・・って思って。」



「そうか・・・俺もだ。」










優しい恋人…。


色々悩む事は多いけれど、こうして一緒に並んで歩く事が出来る…。



それも明日までの話。





明日になったらイザークはプラントに帰ってしまう。


軍に戻って、ちゃんとMSにも乗れるようになって…。



また離れ離れになっちゃうんだ…。









にもの生活がある。


だから、再び離れてしまう事が悲しくても互いに言い出せない。





ずっと一緒に居られたらいいのに…。






戦争が終わっても、やるべき事はたくさんあり過ぎる。















「そろそろホテルへ行くか…。」



「うん、そうだね。」





2人きりの夕食を堪能し、イルミネーションの輝く通りを散歩した後にイザークが言った。




「この近くに大きなホテルがあるよ。空港からもそう遠くないし…。」



「そうか。じゃあそこへ行ってみるか。」





停めてあってエレカに乗り込んだ2人は、の勧めるホテルへ向かう。




時折、運転するイザークの横顔にチラリと目を向けては視線を前に向ける。



そんな様子に気付かないイザークはホテルへ向かってスピードを上げていった。






















「2人だが部屋は空いているか?」



「お部屋のタイプがシングル・ツイン・ダブルとございますが…?」



そう言われ、イザークが突然考え込んだ。


この場合、どうしたらいいものか…。




確かに恋人同士ではあるが…。


やはり同じ部屋にするべきなのか…。


それとも別々に…?





隣にいるに意見を聞くのも格好が悪い気がして、イザークはある結論に達した。




「では…シング…」



「ダブルでいいです。」



シングルを2部屋頼もうとしたイザークに割り込んで、がそう告げた。



…」


「…ダブルで構いませんか?」



「はい。お願いします。」


「かしこまりました。ご案内致します。」














部屋まで案内されるまでの道程に互いの言葉は無く、2人は部屋へと通された。





「では、ごゆっくりおくつろぎ下さいませ。」







2人きりになった部屋…。



広さは申し分なく、窓からの景色も最高。


部屋の中央には大きなダブルベッドが一つ置かれている。





は羽織っていたコートを掛けると窓際のソファに腰掛けた。






イザークは無言でに視線を向ける。





「…イザーク…らしくない。」



「何がだ…?」



「今更別々の部屋なんて嫌だもの…。それじゃ島を出て来た意味が無いじゃない。」




そう言われての本当の想いに気付く。



離れたくないという気持ちは共に同じなのだと…。



女の子から切り出すなんて勇気のいる事だったに違いない。



窓に映るの表情は少し恥ずかしそうで…。


窓越しに目が合った…。









「…そうだな…。すまん。」



そっと後ろから抱き締めると、僅かにの肩が上がる。



「緊張してるのか?」


「あ…当たり前でしょ…。」


「初めてじゃないのに?」



「…そういう事は言わないで。」









落とされた照明で部屋に闇が訪れる。



重なる2つの影…。



愛しい恋人の髪に指を絡め、額に、頬に…

そして唇に自らの唇を落とす。





「イザーク…」


キスに答えるようにの手がイザークの背中に回される。




…愛してる…。」









少しでもこの距離を縮めたくて…。



残された時間を惜しむように…2人は互いを求め合った…。


















【あとがき】


ようやく6話が完成…

お待たせしましてすみません。

少しは甘くなったのではないかなぁ〜と私自身は感じているのですが…。

実際の所、どうなんでしょう?

しかも最後はイザークが微妙にヘタレ…。

あの場面では男性にビシッと「ダブルで」って言ってもらいたいものじゃありません?

梨惟菜はそうなんです。

イザークにそんな事言われたら死んじゃう〜〜〜(死ね)

次でラストになります。

ここまで読んで下さってありがとうございました。






2005.4.6 梨惟菜






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