「あのさ…俺と付き合う気、ない?」



「へ…?」




いつになく真面目な顔をするディアッカが妙に可笑しかったのだけれど…

あまりに真面目すぎて逆に笑えない…。



コレは…マジ告白ってヤツなのでしょうか…。




「あの…本気で…言ってる?」



半ば疑いながら返してみると、ディアッカからは溜息が洩れる。




「…一応、本気なんだけど?」


「あ…そうなんだ…。」


「じゃ、考えといて。」



「え?ちょっ…」





















贅沢な悩み事
























困った…。


はひたすら悩んでいた。



実は告白されたのなんて生まれて初めてで…


しかも…その相手がディアッカ…。



艦内の女子の中で、『友達にしたい異性No.1』…。


だから、恋愛対象になんて勿論入っていなくて…。




でも、ディアッカは十分過ぎる位に魅力的だし…。


だから困ってしまう。



ディアッカが私の事を好き…?













…ちょっといいか?」


「え…?あ、うん。どうしたの?」



悩むの前に現れたのはイザーク。


丁度考えるのに疲れていた所だし…

…なんて言ってしまったらディアッカに失礼なんだけど。




珍しくイザークは困った表情での隣に腰掛ける。



困ってるイザークなんて見た事が無い…。






「何か…悩み事?」


「いや…そうでは無いんだが…その…」


「何…?」




は…付き合ってる奴はいるのか…?」


「えっ…?いない…けど…。」




先程、生まれて初めての告白を受けたばかりです。





「なら…俺の恋人になる気は無いか…?」


「はい…?」




気まずそうに私に背を向けたまま、イザークは頭を掻く。


普段、見せる事の無いイザークの仕草に驚くのも当然だと思う。





「その…ずっと気にはなっていたんだが…なかなか言い出せなくて。
 もしも好きな奴とか居ないんだったら…考えて欲しいんだ…。」



「え…?ちょっ…」


















何なの一体…


ディアッカに加えてイザークまで…?


もしかして…からかわれてる?




イザークはクルーゼ隊の中で一番隠れファンの多い人物。



感情の起伏が激しいから、近寄り難い存在で…。


だから、陰から密かに想いを寄せる女の子も多数。



勿論、彼と付き合いたがってる女の子も多数。



そんなイザークが並み居る女子を掻き分けて私に告白?



そんな馬鹿な…












驚くべき出来事の続出で頭の中が混乱してしまう。


一生懸命考えてみるものの…思考回路が追い付かない。











「あぁ…もうっ!!」









皆して言い逃げしちゃってさ!


何なのよ一体!



持っていた紙コップを思い切りテーブルの上に置いたら、その勢いで水が零れてしまった。




「わわ…!」



自業自得…




「……何してるんだ?」



慌ててテーブルを拭いていると誰かが私の名を呼ぶ。




「あ…アスラン…。」



振り返るとそこにはアスランの姿…。




「ちょっと…零しちゃって…あは…。」



「ホント…って意外とドジなんだよな。」



「…失礼ねぇ…。」



苦笑しながら、アスランも作業を手伝ってくれる。


そんなさり気ない優しさがクルーゼ隊No.1のモテ男の証なのかも…。






「まぁ…そんな所も好きなんだけどな…。」


「へ…?」



ポツリと呟かれた一言に頭を上げると、少し紅潮した表情のアスランが視界に飛び込む。









「今の…本気だから…。」













ちょ…ちょっと待って下さい…




コレ…何のイタズラなんですか…!?







ストン…と腰を下ろし、再び頭を抱え込む。



冗談にしては性質が悪いと思うんだけど…。




クルーゼ隊のトップガン3人が…私に告白…。



信じろって言われても信じられない…。








生まれてこの方、告白なんてされた事のない私。


軍の中でも秀でて優秀な人間の集まるクルーゼ隊に私が配属されたのも不思議な話なのに…。









「どうしたんですか?」



…今度はニコルが私の顔を覗き込んだ。




「ま…まさかニコルも!?」


「…はい?」



これでニコルも同じ事を言ったら…

確実にドッキリ決定だ!



それならその方が助かるんですけど…。


















「…それで驚いてたんですか…。安心して下さい。僕は告白じゃありませんよ。」



「だよね…自惚れるなってカンジだよね。」



「そんな事ないですよ?僕も告白したかったんですけどね?
 さすがにあの3人相手じゃ勝てませんからね…。」




「…っ///」




やっぱりからかわれている気がしてならない。




「ね…本気…なのかなぁ…。」




イザークやアスランは冗談でこんな事を言うタイプには見えないし…。


冗談を言いそうなディアッカには本気だって言われたし…。





は僕達のアイドルですからね。」


「アイドル!?」


「そうですよ。癒し系アイドルなんです♪」





癒し…系…??






何だか本当に頭が痛くなって来た…


こんな状況を他の女の子達に見られたら、何をされるか分かったものじゃない。




「で…は誰を選ぶんですか?」


「えぇ!?」




そうだった…


告白を受けたという事は…返事をしなくちゃいけないという事で…。



誰か1人を選ぶにしろ、残りの2人には断らなくちゃいけない。



…って言うか…



無理だ…。



私があの3人の内の誰かと付き合うだなんて…

想像も出来ないよ…。





















「あの…昼間の話なんだけど…。」



全員が一斉に集まる時間と言えば夕食時しかない。


何故か向かいに並んで座る3人に話を切り出すと、3人は同時に顔を上げた。





こ…怖い…






「ちゃんと返事したいから、30分後にデッキに来てね!」




トレーを持って足早に立ち去った。



その光景をニコルだけが楽しそうに見守っている。




勿論、それぞれ告白をしたのは自分だけだと思っている3人は緊張のあまり、周りに目を向ける余裕など無かった。





















「「「な!!」」」



約束の時刻、約束の場所…


そこにの姿は無く、鉢合わせとなった3人は同時に声を上げた。




「貴様ら!どうしてここに居る!?」



「それはこっちのセリフだっつの!」



「…もしかして…2人もに告白を…!?」








同時に始まった睨み合い。



互いに言葉を発する事も無く…ただひたすらの到着を待つ。









「…ごめんね!呼び出しておいて遅くなっちゃった!」


約束の時間から5分遅れてが到着した。







…3人のピリピリとした空気に圧倒される。


きっと一悶着あったに違いない。







「じゃあ…早速聞かせて貰おうか…?」



いつにも増して不機嫌そうなイザークが一番に口を開いた。



ディアッカとアスランも無言で訴え掛けて来る。












「…えっと…ごめんなさい。」




「「「!?」」」



「誰とも…お付き合い出来ません。」



「「「何で!?」」」



やっぱり怖い…!!









「だって…3人とも恋愛の対象として見た事無かったし…。」



私達の間ではアイドル的存在なんだもの…。



今にも泣き出しそうな困り顔で断られてしまったら反論のしようが無い。





他の2人には負けたくないけれど…を泣かせるのはそれ以上に許される事では無い。








「まぁ…その。今すぐに付き合って欲しい…とかじゃないからさ。」



「そうだ!もう少し考えてみてくれたらいい!!」



「俺達も返事を急ぎ過ぎたから!!」





「…へっ…?」





「「「だから、もう少し悩んだ上で誰がいいのか選んでくれ!!!」」」






「…はい!?」













聞く耳持たず…。





結局、返事保留という形で幕を閉じた…らしい。







翌日からの3人のアピールぶりは凄まじい勢いで繰り広げられ…



その様子に他の女の子達は引いてしまう始末。



は日々、泣き出しそうな顔でニコルの元へと相談に訪れるのだった。









「ニコル〜助けてぇ〜〜〜!!」



「…またですか?」




















【あとがき】


…またいつもの如く謝罪から。


申し訳ありません。


書き上げて気付きました。

パラレルじゃない…(汗)

単なるギャグ作品に仕上がってしまいました。


逆ハーちっくですね…これ。

ある意味美味しいとは思うんですよ。

落ちなし…ってのも好きなんです。

たまにはギャグもいいと思います。


コリス様、お待たせしてしまって済みませんでした。

お気に召していただけましたでしょうか?

また感想・苦情等、お気軽に書き込んで下さいませ。







2005.6.1 梨惟菜












TOP