「おはよう、アス・・・アレックス。」



「おはよう、。」





未だに慣れない彼の偽名・・・



どうしても呼びたくはないのだけれど、ここで生活していく為には仕方の無い事。




・ザラと名乗る事を夢見ていた私にとって、一番最初の妥協となった。




小さい頃からの夢だったのだけど・・・。










戦場の歌姫

恋人達の憂鬱












どうもアスランのセンスはおかしいと思う。



アレックス・ディノだなんて偽名、どう思いついたんだろう・・・。




それはつまり、私に・ディノと名乗れって事?



よっぽど聞きたかったんだけど、結局聞けなかった。



本人は割と気に入ってるみたいだし・・・。






オーブの代表となったカガリの護衛役をする事になったアスランと

その側近のウナト・エマ・セイラン氏の秘書役の仕事を貰った私。




必然的に必要となったオーブ国民の証であるIDカード。


その発行の為に、私達は偽名を考える事になった。




まぁ、私はアスランほど有名人でも無いから変えたのは名字だけ。



いずれアスランと同じ姓を名乗る訳だしね。





でも本当は、『ザラ』以外の名字なんてピンと来ない。


別の人と結婚するみたいで嫌なんだけどな・・・。



私の我が侭だって分かってるんだけどね・・・。















穏やかに暮らすつもりだったけれど、現実はなかなか厳しい。


私達は未だに夫婦ではなく恋人同士。



状況が状況だから仕方の無い事だとは思うけれど。



ウナト様の1人息子のユウナ様と婚約しているカガリ。



せめて2人の結婚式が済んでからにしてくれってユウナ様に言われたから・・・。







私が仕方無いよね・・・ってアスランに言ったら、彼は不機嫌そうな顔で私にこう言った。



『最近の悩みは他にある』って・・・。



それがどういう意味なのか、聞いても教えてくれないの。











「ただいま。」



「あ、お帰りなさい。」




部屋の扉を開けると、愛しい恋人が俺を出迎えてくれた。



エプロン姿のはいつ見ても最高に可愛い。



まずはそんなを抱き締めないと気が済まない。



毛先から香る、俺と同じ香りのシャンプー。



自分も忙しい身なのに、苦手な料理を毎日一生懸命作ってくれる。




籍は入れてないけれど、俺の中ではもう俺の妻。




カガリが気を利かせて2人暮らし用の家を用意してくれた。



だから俺達は仕事以外では一緒に居られるんだ。








そんな可愛いにただいまのキスをしようとした時だった。






ピピピピ・・・







まるで狙ったかの様なタイミングで通信機が鳴った。



苛立つ俺の腕からするりと抜けたが通信に出た。








『やぁ、。今日もお疲れ様だったね。』




予想通りの相手に俺の苛立ちは増す一方。




「いえ、ユウナ様こそ。お疲れ様です。」




そう、ユウナ・ロマ・セイランだ。




『明日のスケジュールの事で相談なんだけどいいかい?』


「あ、はい。」





良くない!!


大体、何でお前が出てくるんだ!?


は父親の秘書だぞ!?


他に仕事が無いならお前が父親の秘書をすればいいだろう!?




・・・って言えたらスッキリするんだけどな・・・。



これだから雇われ者の民間人は辛いんだ・・・。









「アイツ、間違いなくを狙ってるよな・・・。」



通信を切った直後に、アスランは後ろからを抱き締める。



「やだ・・・何言ってるのよ。ユウナ様にはカガリがいるでしょう?」


「そんなのどうせ形だけの婚約だろ・・・。」



かつての俺とラクスみたいに、親同士が決めたとか何とか・・・

そんなのに決まってる。



カガリもそんなに乗り気には見えないし。


大体、を見る目がやらしいんだ。





「なぁに?妬いてるの?」


「・・・多分。」



拗ねた口調のアスランがあまりにも可愛くて、は思わず笑い出した。



「そんなに笑わなくてもいいだろ・・・?」


「だって・・・。」




それでも笑うを、思い切りギュッと抱き締める。




「でもね・・・私は2年以上も嫉妬してたのよ?」



腕の力が緩んだ隙に、はアスランの正面に体を向けた。



「だからちょっと嬉しかったりして・・・。」



いたずらに笑うに溜息が漏れる。


結局敵わないんだな・・・俺は。





の体を再び返し、後ろから抱き締める形を取る。



「アスラン・・・?」



ぎこちなくの左手を取ったアスランは、薬指に指輪を通した。





「え・・・コレ・・・」


「一応、本物だから・・・。」



確かめる様に、もう一度指輪に視線を落とす。


確かに薬指にはカットされたダイヤがキラキラと輝いていた。




「何か・・・順番とか無視でごめん・・・。」



「ううん・・・嬉しい。ありがとう。」




ふるふると頭を左右に振るの瞳は涙で潤んでいた。











「その指輪、絶対に外すな。」


「・・・絶対に?」


「出かける時は勿論、家の中でも寝る時も・・・。あぁ、特に仕事中は絶対に外さない様に」




その意味を理解したは再び笑い始めた。



「だから笑うなよ・・・。」


「だって・・・アスラン、心配しすぎ。」


「当たり前だろ。は可愛いんだから・・・。」




本当は外になんて出したくないんだけどな・・・。


ずっと家に居て、俺の帰りを待ってて欲しいんだけど・・・。



さすがにそこまで我が侭は言えないから・・・。





の細長い手が、そっとアスランの首に絡まる。


それに応える様に、アスランもそっとの腰に手を回した。




「大丈夫。他の男になんて興味無いから。」


「分かってても嫉妬はするだろ?」


「そうね・・・。」







「「愛してる。」」





同時に囁き合った2人は、愛の言葉と共に唇を重ね合った。













【あとがき】


『戦場の歌姫』番外編シリーズでした〜。

今回は嫉妬するアスラン。

お相手は本編の如くモミー様でした(笑)

他に思い浮かばなかったんだもの・・・。

モミーめ・・・今に見てろよ・・・?


カガリと幸せにしてやるぅ!!(意味不明)


番外編は書いていて面白いです。

本編全く無視なのでやりたい放題♪


まぁ、2人が結婚していない理由は簡単。

モミーが邪魔してるから(笑)



朔様、この度はリクありがとうございましたw

精一杯の嫉妬するアスランです。

本編では叫んでいない、アスランの心の叫びです。

こんな仕上がりになりましたがいかがでしょうか・・・?


また感想下さると嬉しい限りでございます。



2005.3.17 梨惟菜





TOP