「いざぁくっ♪」
私は思いっきり甘い声(のハズ)でイザークに囁いた。
「・・・何だ?」
・・・・
・・・・・・
無表情・・・。
少しくらいドキッとしてくれたっていいじゃないっ。
「あのね、ちょっとお願いがあるの。」
「嫌だ。」
「即答しなくてもいいじゃん。」
「もうのお願いシリーズは聞き飽きた。」
・・・シリーズって・・・
White X’mas Eve
「この間はこの俺にハロを作れと言ったな?」
「だって・・・ラクスのピンクハロ、可愛いんだもん。」
「その前は猫好きの俺に犬が欲しいと言った。
更にその前はデュエルに乗せろ、
更にその前にはクルーゼ隊長の素顔が見たい、
更に・・・」
「あぁ、もういいってば!!」
私でさえ忘れてた事まで覚えてるのかよ・・・
なんて記憶力・・・
「カワイイ彼女のお願いくらい俺が叶えてやろう!とか思わないワケ?」
「よく自分の事を可愛いなんて言えるな。」
「彼氏が言ってくれないから自分で言うんですー!!」
「・・・で?何なんだ?話だけなら聞いてやる。」
「・・・さっすが!ダーリンっ♪大好きぃ♪」
私は笑顔で愛しい彼に抱き付いた。
「あのね、もうすぐクリスマスでしょ?」
「・・・だから何だ?」
「イヴにイルミネーション見に行きたいの♪」
「イルミネーション・・・だと?」
「そ。海岸通りの木がライトアップされて綺麗なんだって♪」
「断る!!」
「何でよっ!!」
イザークさん・・・態度豹変・・・。
「そんな人の多い場所なんか、誰が行くか!!」
・・・逆ギレかい・・・
やっぱり・・・な。
イザークが人込みを掻き分けて歩く姿なんて想像出来ないもん・・・。
想像出来ない・・・けど。
「行ーきーたーいー!!」
「そんなに行きたかったら一人で行け!!」
・・・冷たい・・・
この男は外の気温よりも冷たい・・・
本当に私の事・・・好きなのかよ・・・
「何よっ!!今までのお願いに比べたらマシじゃんかっ!!」
私はイザークに怒鳴りつけて部屋を飛び出していた。
・・・イザークと付き合って5ヶ月。
でも、付き合う前とあんまり変わってない気がする・・・。
そりゃぁ・・・確かにキレなくなったけどさ・・・。
ちょっと優しくなったけどさ・・・。
足りないのよ・・・。
甘々ムードが足りないのっ!!
・・・って、あの俺様イザークに要求する事が間違いなのかなぁ・・・。
冬の夜は寒いです。
一人ぼっちで歩いてると寒さが身に沁みるよぉ・・・。
よく考えたらイザークとしたデートって・・・
人の集まらない場所ばっか・・・。
ドライブしたり・・・海に行ったり・・・
私は遊園地に行きたいのに、いつも
「人が多い。」
の一言で却下される・・・。
イザークは何で私なんかと付き合ってるんだろ・・・。
冬空の寒さは私の心を一層冷たくさせた・・・。
「自己中め・・・今に見てろよ・・・」
12月24日・・・クリスマス・イヴ。
半ばヤケになった私は一人、海岸通りに居た。
あれからイザークとは会ってないし、連絡も取ってない。
連絡しようって気にもなんないのか・・・アイツ・・・。
ここでいい男引っ掛けて見せ付けてやるんだから・・・!!
・・・ってカップルばっかだよ・・・
幸せそうに腕組んだり、手を絡めて繋いだり・・・。
寒い夜なのに暖かそう・・・
こんな日に絶好のデートスポットでナンパしようなんて物好きは居ないか・・・
バッカみたい・・・。
あ〜あ・・・
私、何であんな自己中がいいんだろう・・・
もう・・・帰ろうかなぁ・・・
イザーク・・・家に居るかな・・・?
謝ったら・・・許してくれるかな・・・?
本当は謝りたくないんだけどなぁ・・・。
ピルルルルルッ
・・・携帯の着信音・・・
しかもこの音は・・・
「もしもし?」
何よ今更・・・と言いたいのを堪えて電話に出る。
「遅い。さっさと出ろ。」
・・・第一声がそれですか・・・
「・・・すみませんでしたぁ。」
相変わらず反抗的に謝る私。
今まで放置しておいて何よ・・・。
・・・ってお互い様なんだけど・・・。
「どうせ海岸通りに居るんだろ?」
「うっ・・・」
バレバレ・・・。
「今すぐ中央広場のツリーの前に来い。」
それだけ言って電話は一方的に切れた。
何なのよ・・・もう。
ツリーの前まで行ったら、イザークが腕を組んで不機嫌そうに立っていた。
「どうも、お久しぶりですぅ。」
笑顔で思い切り嫌味を言ってやった私。
ホント、可愛くないなぁ・・・。
「・・・こんな人だらけの場所の何が楽しいんだ?」
「だったら来なきゃいいじゃない・・・。」
ホント、ムードの欠片もないな・・・この人。
「行くぞ。」
急にイザークは私の手を取り歩き始めた・・・。
「行くって・・・どこに!?」
「そこのレストランだ。窓側の席を押さえてある。
そこからなら見えるだろう?」
「え?嘘・・・。だってあのレストラン・・・すごい人気で・・・。」
雑誌にもよく紹介される高級レストラン。
イルミネーションが一望できるスポットとして人気も高く、半年以上前から予約で一杯のお店だ。
「ジュール家の子息をなめるなよ?」
「うわぁ・・・すっごいキレイ!!」
テーブルからは海とイルミネーションが一望出来た。
キラキラと輝く幻想的な光に酔いしれそうになる。
「満足か?」
「うん!!お料理もすごく美味しいし・・・。」
さすがはジュール家のご子息様・・・。
何かお姫様気分だわ♪
「・・・無理言って・・・ゴメンね?」
自然と口から出た言葉にイザークは目を見開いた。
「何だ・・・やけに素直だな・・・」
「クリスマスだし・・・ね。」
「の我が侭には慣れたけどあまり無理な事は言うな。
俺にだって限度はある。」
「・・・はぁい。」
普段は愛想のないイザークだけど、時々見せる優しい一面・・・。
そっか・・・
私はそんなイザークが好きになったんだ・・・。
「・・・あ!雪!!」
空から舞い降りてきた雪の結晶。
その光がイルミネーションに溶け込んで、街は一層美しく煌いた。
こんな日に大好きなあなたと過ごせる私は幸せ者ね・・・
「・・・メリークリスマス。」
そう言ってイザークは、小さな箱を私の前に置いた。
聖なる夜の・・・素敵な贈り物。
【あとがき】
クリスマス目前という事で書いてみました。
イザーク夢は難しいです。
あまり甘く書いてしまうとキャラ崩れるだろうしなぁ・・・と。
ある意味一番難しいキャラです。
でも一番書きたいキャラです。
こんな稚拙な作品を最後まで読んでくださってありがとうございました。