「じゃあ、また明日な!」





「送ってくれてありがとう。また明日。」










ハイネに送られてホテルへと辿り着いたのは夕刻だった。





未だ、一般客も利用するホテルに滞在していた



流石に軍服で戻るのは目立ってしまうから、私服に着替えてハイネに送ってもらって今に至る。








予定では明日、このホテルをチェックアウトして、軍の宿舎へと移動する事になっていた。








ホテル住まいも贅沢で素敵だけど…こう何日も続くと気が引けるのよね…。





そう思いながら中へと入ったその時…




















…っ!!」










高いトーンの声が私を呼んだ。































「え…あ…!?」







呼ばれて振り返ると…



ヒラヒラとピンク色の髪の毛を揺らした少女がこちらへと駆けて来る。








「お久し振りです!お会いしたかったですわ!!」











飛び付く様な勢いで、彼女はに抱き付いた。







「あ…えっと…あの…」







ここでは「ラクス」なのだろうけど…私の中で彼女はラクスじゃないし…



けれど、彼女の本当の名前は知らないし…





何と声を掛けたらいいか分からず、は戸惑うばかり。




















「ミーア・キャンベルよ。」




「え…?」




小さく、耳元で囁かれたのは女の子の名前。






「私の本当の名前。でも、人前ではラクスって呼んでね。」







抱き付いていた体を離したミーアと名乗る少女は無邪気にウインクして見せた。






















戦場の歌姫 〜Destiny〜







  ACT.2 新たなる旅立ち



























「初めまして。です。」






「勿論、知ってます!私、様の大ファンなの!」







「…私の?ラクスじゃなくて?」







「あ…勿論、ラクス様も大好き。とっても素敵だから!」









ミーアに腕を引かれ、何故か着いた先は最上階のレストラン。





用意された個室に通され、何故か向かい合ってディナーが始まっていた。










「私、ずっと歌手になりたくて…いつも様の歌を歌っていたの。」




「あ…ありがとう…。」





「でも、声はラクス様にそっくりだね…って言われてて…そしたら議長に呼ばれて…」




「それで…ラクスの身代わりを…?」





「そうなの!ビックリしちゃった。議長に、今のプラントには君が必要なんだ…って言われちゃって!」







嬉しそうにこれまでの経緯を語る彼女は本当に輝いていて…




似てるけど…似てない。





でも…他の人から見たら彼女はラクス・クラインに映るんだ…。




















「私…ちゃんとラクス様に見えます?おかしくないですか?」






「あ…うん…大丈夫…だと思う。」







彼女を良く知る人物でなければ…問題無いと思う。




だからこそ、今彼女はプラントのアイドルとして脚光を浴びてるんだよね…?









「あの…様はラクス様の親友なんでしょう?」





「…そう…ね。」






「ラクス様の事、色々と教えてくれませんか!?ラクス様って余りメディアに出られない方だったでしょう?」







確かにラクスは率先して何かの取材に応じる子ではなかった。





テレビの前に出るのも必要最低限。





街中でも流れるのは彼女のプロモーション映像ばかり。













「アスランにも色々と教えてもらおうと思ったのに、彼、何も教えてくれないんですよ?婚約者なのに変〜。」






「え…?アスランに…会ったの?」







ミーアの口から出た『アスラン』という単語に思わず反応してしまった。





「はい!先日…アスランがザフトに復隊する前にお会いしました♪

 実物も本当にカッコ良くて素敵!

 あんな素敵な人の婚約者になれるなんて最高♪…って思っちゃったり…。」








そっか…




プラントではまだ…アスラン・ザラとラクス・クラインは婚約者として通ってるんだ…





彼女も何も知らない…



だから、議長には彼の婚約者として振舞うように言われてるのね…。











胸がチクリ…と痛んだ。










本当の婚約者は私だけど…それは言えない…。





言っちゃいけないんだ…。














様…?どうしました?」







急に塞ぎ込んでしまったを心配し、顔を覗き込むミーア。





「あ…ううん。何でもない。それよりも…その『様』って呼び方、止めてくれないかな?」




「え…でも…」




「本物のラクスは『』って呼んでくれるよ?そうじゃないと不自然でしょ?」




「そ…っか…。じゃあ……?」




「うん。そう。」










得意の作り笑い。




アスランや本物のラクスなら簡単に見破って指摘されちゃうけど…この子は気付かない。





ミーアは嬉しそうに微笑みながら、運ばれて来た料理を口に運んだ。

































「偽者…だよなぁ?やっぱ。」





「気付いてた?」




「そりゃあ…全然違うだろ…格好とか歌い方とか…」






プラントの人間はイメチェン程度にしか受け止めていないみたいで…。





それでも、彼女と接触した事のあるイザークやディアッカにはすぐに分かった事。










「確かに…ラクス嬢のカリスマ性はプラントの人間には大きいからな…。仕方なかろう。」





「で?本物の彼女は?」





「多分…アークエンジェルに乗ってるんじゃないかな?キラやカガリと一緒に…。」






「で、は置き去りにされたんだ?」






「…まぁ…そういう事になるんだよね…。」






「でもさ、結果的には良かったんじゃねぇ?アスランと会えた訳だし…。」






ミーアと別れ、部屋に戻ると今度はイザークとディアッカが訪ねて来て…。





食後のデザートと一緒にコーヒーを飲んだばかりだけど、再びルームサービスを取る事になった。









「明日には軍の宿舎に移動かぁ…で、地球降下?大変だね、も。」






「まぁ…出来れば早く地球に戻りたいとは思ってたし…。」






アスランと一緒に戦いたくて選んだ道だから…




早くアスランに会いたくて…








「ホント、相変わらずのアスラン馬鹿だな。」




「うっ…煩いなぁ///」





ディアッカにからかわれ、は頬を赤く染める。




そんな様子をイザークは面白く無さそうに見ていた。







「で?2年の間に2人の関係に進展はあった訳?」




真面目な話は一変して、ディアッカはに探りを入れ始めた。





「し…進展!?」




「お?その反応は…。」





更に真っ赤になったは、先日の出来事を思い出す。





「な…何も無いっ!!」




「俺に嘘は通用しないぜ?、顔にでるからな〜♪」




更に追い詰められ、は今にも泣き出しそうな顔になる。







「煩いっ!俺達はそんな話をしに来たんじゃないぞっ!」





遂に耐えかねたイザークはディアッカを一喝する。




…と言うか、これ以上、2人の惚気話を聞かされるのも我慢の限界。








「あ…ゴメン。」





「いや…俺も急に声を出したりして驚かせたな…。」





ディアッカよりも先にに謝られ、イザークは罰が悪い気分だ。
















「とにかく…何か地球の情勢に変化とかあったら連絡入れるね。

 ようやくミネルバと合流出来るみたいだし…。」






「あぁ、アスランにも宜しく言っといてくれよ。」




「うん。」





「無理はするなよ?久し振りなんだからな…。」




「イザークも…頑張ってね…。」







こうして2年振りに再会した私達…。




あの頃の…クルーゼ隊のメンバーが揃う事はもう叶わぬ夢だけれど…




ミゲルやオロール…ラスティにニコル…




彼らの命を無駄にはしたくない…


ううん…させないから…







今度こそ…争いの無い、平和な世界にする為に…。








1人になった部屋で、私は今は亡き戦友達に誓った。


















  ACT.2 新たなる旅立ち



           end



















【あとがき】

お次はミーアの登場でした。

何話か前のお話で、ルナマリアが同性に人気があるのはラクスよりヒロインと発言していたので…

ミーアもラクスではなく、に憧れていたという設定にしちゃいました♪

ヒロイン、同性にもモテモテ♪

私、ミーア嫌いじゃないんです。

何だかんだ言って、一番可哀想な役だったんじゃないかなぁ?

同じ女の子として何となく気持ちも分かるし…最初は悪意は無かったんだと思う。

気が付けば議長お得意の洗脳(?)に…。

ミーアもヒロインが成長する過程で重要なキャラになります。









2005.9.26 梨惟菜














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