「アスランっ!!」






ブリッジのモニターに映るジャスティスが力の抜けた様に海へと加速して落ちていく。





その様子をここから見守る事しか出来ない私は叫ぶ事しか出来ず…





与えられた仕事の手を止め、思わずモニターに釘付けになっていた。








そんなジャスティスを寸前で掴んだのがフリーダム。



そのまま、2機はゆっくりと艦へと戻って来た。














「ホラ、行ってやれよ。」





「え…?」





そう言って隣から肩をポン…と叩いてくれたのはノイマンさんだった。







「心配なんだろ?ここは俺達に任せて、格納庫、行って来い。」




俺達…





そう言われて振り返ると…






「アスランなら大丈夫よ。だから早く行ってあげて。」




「ここには沢山人が居るけれど、彼にはさんしか居ないのよ?」





ミリアリアや艦長もまた…笑顔で私の背中を押してくれる。







「…っ…ありがとう…ございますっ!」









インカムを外した私は、全力でブリッジを飛び出した。



























  もう少しだけこのままで





















「アスラン!!」





格納庫に駆け込むと、機体から彼を降ろしたキラが懸命に呼びかけていた。






「キラ!アスランはっ…!」




「意識無いみたい…」




「アスラン…!」





まだ回復しきってないのに無茶するから…



今になってそう言ってももう遅いけれど、そう思わずにはいられなくて…




キラは急いでアスランのヘルメットを外す。







「…っ…!」








整ったアスランの顔に流れる…鮮血…




頭の傷が開いて、再び出血をしていた。







「医療班を早く!」






流れる血の量は思った以上に多くて…赤いパイロットスーツを更に赤く染め上げる。




胸元のジッパーをキラが下ろすと…インナーにまで赤が染み込んでいた。























あれからどれくらい経っただろう…





止血を済ませ、今も静かに眠るアスランの傍らに座ったまま、ただ刻々と時間だけが過ぎる。






とにかく今は傍に居てあげたくて…無理を言ってずっとここに居座らせて貰って…




仕事も皆に任せてしまって…






目の前に眠るアスランを見ていると痛々しくて…でも何もしてあげられなくて…



せめてその痛みを半分でも貰ってあげたら…




そうやって意味の無い事ばかりを考えてしまう。



















「う…ん…っ…」





アスランの閉ざされていた瞼がピクリと動き…



小さな呻き声と同時にその瞼がゆっくりと開かれた。








「…アスラン…?」





「…っ……?」




意識もまだはっきりとしていないのに起き上がろうとするアスランを懸命にベッドへと押さえた。





「まだダメ…ちゃんと寝てて。」



「でも…っ…」





「戦闘なら今は落ち着いたから…今はしっかり休んで。」





きっと…その事を気にしているだろうと思ったから、それだけ告げる。



そうすると案の定、少し落ち着いた表情になってベッドに身体を沈めた。







「ゴメン…。」



力が抜けたように横たわるアスランはポツリと一言だけ謝った。




「何が?」




…忙しいだろ?それなのにこんな…」




人間、弱っていると精神的にも脆くなるって本当だと思う。




今のアスランは本当に身も心もボロボロで…放ってはおけない。






「大丈夫だよ。私の代わりならいくらでも居るんだから…。」





確かに、自分の仕事を他の人に任せるなんて不本意な事だとは思うけれど…




今は…それ以上に大切な事がある。







「でも…アスランの傍に居る事は私にしか出来ないの。

 ううん…他の誰にも譲りたくないの。」





無意識の内に手が伸びていて…アスランの髪に触れる。





「無事で良かった…」




気が緩んで…自然と涙が零れた。





…」



「ごめ…何か安心したら急に…」



残った手で涙を拭っていると、髪に触れていた手にアスランの手が添えられた。






「無茶して…ゴメン…」



「ホントだよ…バカ…」





私は一緒に前線には出られないんだから…




同じ様に戦う事は出来なくて…ただ見守る事しか出来なくて…




不安ばかりが募って…

















「しっかりと回復するまでは私が傍に居るから、何でも言ってね。」




「何でも?」



「…?…うん…。」




嬉しそうに柔らかく微笑んだアスランが小さく問い返した。






「じゃあ…お願いしてもいい?」



「なぁに?」











「キスして。」




「は!?」

















「何でも言って…って言っただろ?」




「そりゃ…言ったけど…」








それはあくまでも回復するまでに不自由な事があったら手助けするって意味で…




「エネルギー補充。」



「何言って…」



不足なんだ。今すっごく。」






この人は何でこんな…///



真顔でキスをせがむ仕草さえもカッコ良くて眩暈がしそう。





落ち着け…



相手は怪我人なんだから…















「じゃあ…私からも1つだけお願い。」




「何?」




「しっかりと傷が塞がるまではMSに乗らないで。」





どうせ…無茶するなって言ったって聞かないんだから。




せめて今の傷を癒すまでは無理をさせたくない。






「それまでは行くって言ったって行かせるつもりは無いけどね。」




「…分かった。約束するよ。」





「ありがとう。」













左手はアスランの手と繋ぎ合ったまま…




右手をベッドに横たわるアスランの肩に添えて…





そっと…唇を重ね合う。






アスランの空いた手が背中に回されて、抱き締められる形に…。






「アスラン…手…」




唇を離してもアスランは拘束を解いてはくれなくて…



そのまま、抱き締められた状態で体を沈める。






「もう少しだけ…このままで…」





耳元で囁かれたその声に逆らう事は出来ず…



結局はいつもの様に彼のペースに。













2人の空気を察知してしまったキラは中に入る事さえ出来ず…




アスランが回復したその後、はクルー達に散々からかわれる羽目になる事をまだ知らない。





















【あとがき】

戦闘から怪我をして帰って来るアスランを看病する

これがリクの内容だったのですが…

看病じゃなくてただ単にイチャイチャするだけで終わってしまいました(汗)

ちなみにこれは本編から頂いたシーンです。

私も大好きな43話「反撃の声」ですよ〜///

ここで本来ならメイリンが付き添うのですが…譲るかっての!

という訳で、全くもって看病出来ていないのですが…

花梨様、申し訳ありません!

せめて甘々に〜と頑張ってはみたのですが…いかがなものでしょう?











2005.8.29 梨惟菜










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