「どうした?酔った?」





「え!?う…ううん、大丈夫!!」




急に問い掛けられて驚くの声は裏返っていた。





「もしかして…緊張してる?」




「あ…当たり前でしょ!? …って言うか、何でそんなに平常心なの!?」




ハンドルを握るアスランの横顔は穏やかでとても楽しそう…。



…って言うか、何でそんなに落ち着いていられるの!?




動揺してる私が変なの!?









「折角2人で初めての旅行なんだから、もっとリラックスして欲しいんだけどな…。」





「だ…だって…」







そんな事言われても私の頭の中はいっぱいいっぱいで…



車窓から見える景色にすら目をやる余裕は無かった。





























静かな夜に




























私とアスランが付き合い始めて間もなく1年…




友達として出逢った私達はいつもグループ行動をしていて…



友達になって初めての夏は皆で別荘に行って…



恋人同士になって初めての夏休みも同じだった。






そんな私達に訪れた、『初めての旅行』。



そう…



恋人同士として、2人きりで行く初めての旅行…。










きっかけは秋の学園祭だった…。



























「へぇ…1枚で4名様まで使えるんだ…」






手元にあるのは2枚のチケット…




それは私とアスラン揃って優勝しちゃったからで…




このチケットを欲しがっていたカガリは目をキラキラさせていた。






「今度の冬休みにでも行かないか?折角2枚も手に入ったんだし…。」





カガリは行く気満々…



去年の冬休みは色々とあってそれ所じゃ無かったし…




皆でのんびり温泉も悪くないかも…










「カガリ、俺の分のチケットをやるから諦めてくれないか?」








「え…?」








計画されようとしていた温泉旅行を遮ったのはアスランの一言だった。






「悪いんだけどこの冬はちょっと忙しくて…時間取れそうに無いんだ。」





アスラン…?




カガリが不思議そうな顔で私を見るが、私も何も聞いていないからどう反応したらいいのか分からない…。






、そろそろ帰ろう。送ってくよ。」





「え?ちょっと…」






珍しくアスランは強引に私の手を引いてカレッジを後にした。



















、2人で行かないか?」



「?何処に…?」





「だから、温泉。の招待券を使って…。」




「…だってアスラン…冬は忙しいって…」







…本当に鈍いな…は…






「だから、2人で行きたくて嘘を吐いたに決まってるだろ?」




「へ!?」







ふふふ…2人で!?







「…何赤くなってるんだ?」





2人で旅行って…



それはつまり…その…






「もうすぐ付き合って1年だし、その記念に行こう?

 それとも…俺と2人は嫌?」





「そ…そんな事無いっ!い…行く!!」
































…なんて事になって…





私達はアスランの運転する車で人里離れた温泉宿に向かう途中。





2人きりで長時間車に乗るなんて初めてだし…




色々と考えちゃって会話は上手く弾まないし…




…って言うか、私がアスランの問い掛けに一言しか返せない状態。





アスランは緊張しないのかなぁ…



だって…初めてだよ!?




2人きりで遠出して…しかも泊まりで…部屋は当然…同じな訳だし



緊張しない方がおかしいじゃない…



















「そうだ。その温泉、部屋に露天風呂が付いてるんだ。」





「へ…へぇ…」





露天風呂かぁ…



部屋に付いてるなんて豪華じゃない…。




のんびり夜空を眺めながら…なんてロマンチックでいいかも…




露天風呂のイメージを頭に浮かべ、少し落ち着いてきたのに…




アスランの次の一言では再びパニックに陥る事になる。






「折角だから一緒に入ろうか?」










「…な…え…!?」





一緒に!?





「な…何言ってんの///」





無理無理!



そんなの絶対に無理だから!!







「…冗談だよ。」





本当に…アスラン1人でこの状況を楽しんでる。




こっちは緊張で頭の中一杯で昨日はロクに眠れなかったのに…。











…って言うか…


アスラン、ちゃんと旅館の下調べとかしてくれてたんだ…。






流石と言うか…何だか申し訳ないなぁ…



私なんて何も考えてなかったのに…









「旅館に行く途中に水族館があるみたいなんだけど、時間もあるし寄って行かないか?」




「水族館?」




「あぁ。結構有名らしいんだ。」





「うん、行く。」






























「ねぇ…」




「どうした?」



「何か…視線を感じる気がするんだけど…」






水族館を一通り回り、展望台へと移動した所ではアスランに問い掛けた。




水族館に入ってから何となく気になり始めた視線…




誰かに見られいるような…そんな気がしてならない。









「気のせいじゃないのか?」




「そう…かな?」




「もしかしたら、その辺の男がを見てるのかもしれないな。」




「…まさかぁ…」












が苦笑した時、繋いでいた手を離したアスランはそれを腰へと回す。




「…アスランっ///」




「ん?」




「…流石にこれ…恥ずかしいんだけど…」




「誰も見て無いよ。」





そりゃ…周りは知らない人ばっかりだけど…







「そろそろ日が暮れてきたし…旅館に行こうか。」




「う…うん…」








視線は気になったけど…アスランは気のせいだって言うし…




きっと初めての遠出だから緊張しちゃってるだけよ…ね?





































「長旅お疲れ様でした。」




「アスラン・ザラで予約を入れていたんですが…」





アスランは手馴れた様子…



…やっぱり、こういう旅館は初めてじゃないのかな?




想像以上に豪華な温泉旅館…




学園祭の景品にしては豪華すぎる気もするんだけど…










「アスラン・ザラ様ですね。お連れ様はもうお先にお見えになっておりますよ。」




「は…?」





「お連れ様って…どういう事?」





「あの…確かに2名で予約をお願いしたと思うんですが…。」




「いえ…今朝になって人数を6名に…お部屋を2部屋にして欲しいとご連絡がありましたが…」





6名…?








「「もしかして…」」



























「遅かったじゃないか!」






あぁ…やっぱり…






部屋で寛ぐのは予想通りのメンバー…








「…キラまでいるし…」




「いや…カガリさん…に無理矢理…」






「ホラ、偶数の方がいいだろ?」






そういう問題じゃないんだけど…





「もしかして水族館で感じた視線って…」




「そ、俺達♪」









「ね、折角来たんだから温泉行こうよ。」























「わ!って胸大きいっ!」





「ミリィの方が大きいじゃない!」




「そんな事無いって!」




「わ!ちょっとカガリ!触らないでよぉ!!」



















「…盛り上がってるな…女湯」





「…///」





「何怒ってんだ?」




「怒って当然だろう。折角の旅行が…」






女同士の会話に赤面するキラと、膨れっ面のアスラン。



それに、ニヤニヤしているディアッカ。









「何お前…下心アリアリだった?」




「ディアッカお前…っ///」




「ま、気持ち分からないでも無いけどな…。」










そりゃあ…下心が無いと言えば嘘になるけど…




でも、焦るつもりも急かすつもりも無い。



単純に2人だけでのんびり過ごしたかったんだ。






















「ん…」





あれから部屋で遅くまで盛り上がって…




真冬で寒い筈なのに、体が火照ってなかなか寝付けない。









「散歩でもして来ようかな…。」

























?」




「あ…アスラン…」





庭園に出ると、同じく浴衣姿のアスランと遭遇した。





「アスランも眠れないの?」




「あぁ。も…みたいだな」



「何だか気が抜けちゃって…」






冬の空はとても澄んでいて、2人を照らすように星がキラキラと瞬く。








「もしかして…2人で旅行するの、嫌だった?」




「まさか!そんな筈ないじゃない!」




そりゃ…確かに緊張してた…けど…





「朝から晩までアスランと2人きりなんだなぁ…って思ったら…緊張しちゃって…。」





私とアスランは付き合ってるんだし、キス以上の事があったっておかしくは無いんだけど…







「焦らなくていいよ。」




「え?」





の気持ちは分かってるつもりだし、が大丈夫だって思えるようになるまで待つから。」




「アスラン…」




「今回だってそんなつもりで誘ったんじゃないんだ。

 単純にと2人で過ごしたくて誘ったんだ。」





「…うん。」





「予想外の邪魔者が入ったけどね。」




「そうだね。」





顔を見合わせて笑顔になる。




吐く息の白さに冬という季節を感じながら、2人は互いに手を絡め合った。









「春になったら…今度こそ2人で旅行に行こうか。」




「…うん。」























【あとがき】

温泉旅行です。

学園祭のお話をリクで書かせて頂いた時に、今度は温泉旅行を書こうと思っていたのですが、

リクエストして頂けたので思った以上に早く書く事が出来ました。

案の定、お友達乱入ですね〜。

甘くしたかったんですけど…失敗失敗(汗)

まぁ…タイトルが「愛情と友情のはざまで」ですからね。

友達絡んでなんぼのこのお話です。


ユーリ様、リクエストありがとうございました。

なにやら生ぬるくて済みません。







2005.11.4 梨惟菜











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