幸せな時間
片想いの人に贈る誕生日プレゼントは何をあげたら良いのか迷う。
だけどそれ以上に、もう3年も付き合っている彼氏に贈るプレゼントのほうが何をあげれば良いのか迷う。
定番である手作りのお菓子?
それともキーケース?
最終的な手段はお祝いの言葉のみ?
アスランと3年という長い月日を『彼女』として過ごしてきた私、・は・・・
今、とっても困っています。
今日はアスランの誕生日だというのに、何にも用意していないのです。
決して忘れていたわけじゃなくて・・・何をあげれば良いのかずーっと悩んでいたのです。
とは言うものの、現在私の居る場所はアスランの部屋の前。
どうしてこんな場所に居るのかって?
それは、彼女である私が一番最初にアスランを祝いたいから。
3年一緒に居たって、彼を想う気持ちは変わらないんだよね。
「アスラーン?入るよ〜」
部屋の中に居るであろうアスランからの返事は無かったが、は入室を試みる。
そっと部屋に入ってみれば、ベッドにも行かずにデスクで眠りについているアスランを発見。
は横からアスランの寝顔を覗き込み、微笑む。
「気持ちよさそうに寝ちゃって・・・今日が誰の誕生日かわかってるのかな〜・・・」
独り言を言いつつも、はアスランの髪に触れる。
すると、アスランはそれに少し反応を見せる。
だがまだ彼は夢の中。
それが少し面白くないは、デスクに顎を乗せてアスランの寝顔を鑑賞する。
「アスランの寝顔って結構貴重かも・・・」
アスランがこんなに無防備な姿を見せるのは、彼女であるだけ。
眠っていても、部屋に入ってきたのがで無かったら彼は起きているかもしれない。
自分だけは特別なんだと感じ、は嬉しさで顔が緩む。
あんまり気持ちよさそうに寝てるものだから、せっかくの誕生日だが起こすのは可哀想だと思い、部屋から出ようと考えていた。
だがちょうどその時、タイミングよくアスランが目を覚ました。
思いっきり目と目が合い、寝顔を見ていたことを悟られるのが嫌ではデスクから離れようとする。
しかしアスランはの手を掴み、逃げられないようにする。
離れることができなくなったは、アスランから咄嗟に目を逸らした。
「おはよ」
「えっ・・・あ・・・おはよう」
何か言われるんじゃないかと思っていたが、朝の挨拶をされては肩透かし。
ホッと一安心したと思えば、次の瞬間にはアスランにキスされていた。
そっと触れるだけの優しいキス。
アスランは唇を離すと、にやわらかい笑みを浮かべた。
「俺に何か言うことは?」
「へ・・・?」
「どうして朝から俺の部屋に居たんだ?」
「あ・・・」
は本来の目的を思い出したように、アスランを見つめる。
「誕生日おめでとう。アスラン」
「ありがとう。・・・やっぱりからの言葉が一番嬉しいな」
「アスラン・・・////」
微かに頬を染めて照れる。
そんなを、きょとんとした眼差しでアスランは見つめる。
視線を感じたは、首を傾げながらアスランを見つめ返した。
「・・・何?アスラン」
「いや、今日は手ぶらなんだなと思ってさ」
「何あげて良いのかわからなくて・・・」
「あぁ、それでがプレゼントってことか」
「は?」
「俺にとっては一番嬉しいプレゼントだな」
「ちょっ・・・はぁ?!何言って・・・」
アスランはガタリと椅子から立ち上がると、の手を引いて自分の胸の中へと収める。
いきなりアスランに抱きしめられたは、さらに混乱していた。
「ちょっと待ってアスランっ!さっきから何を言ってるの?!」
「だから、今日は自身が俺への誕生日プレゼント」
「・・・え゛」
「最高のプレゼントをありがとう、」
「待って待って!だってまだ朝っ・・・」
そんなつもりでプレゼントを用意してこなかったわけじゃないのに。
アスランはそれを良いように解釈していた。
「今日は誰の誕生日だ?」
「アスランだけど・・・」
「じゃあ俺の我が儘、一つだけ聞いてくれないかな」
「・・・とっても嫌な予感がするんだけど?」
「は勘が良いな」
クスっと笑いながらアスランは抱きしめる腕をに少し力を込める。
は観念したように苦笑する。
「それで、その我が儘ってなんでしょうか?王子様」
「君の全てを俺に・・・」
はその言葉を聞いて笑みを浮かべ、アスランの首へと腕をまわす。
そしてはアスランの唇へ自分のそれを重ねる。
そっと唇を離すと、アスランの耳元でこう囁いた。
「・・・大好き」
その小さな一言を受け取ったアスランは、幸せそうに微笑んだ。