こんな休暇…本当に久し振りで…



昨日の夜はあんまり眠れなかったけれど。





寝不足なんてちっとも気にならないし、平気。




それくらいに、君と過ごす時間が大切なの。


















「海なんて2年ぶりくらいかなぁ…。」




「僕はもっと来てないと思いますよ。」




海って言っても…人の手で作られた物なんだけど…。





プラントにある物は人工の物ばかり。



でも、限りなく地球にある自然に近いものを作ってる…って誰かが言ってた。




私は地球に行った事が無いから分かんないんだけどね。





















「晴れて良かったね。」




「そうですね。折角の休暇ですから…。」





私とニコルはゆっくりと砂浜に腰を下ろした。



ニコルと出逢ってからずっと伸ばし続けていた髪が潮風で絡まる。



風の強い日は切ってしまおうか…と真剣に悩むんだけど、今日はそれも気にならない。




そんな事に気を取られている時間さえも勿体無いって感じる。





















一時間くらい海を眺めてから…私達は海辺のコテージへ入った。






「…ずっと外に居たから日焼けしちゃった…。」



玄関に置かれた大きな鏡を見つめながら…腕を擦ってみる。



その様子を見ていたニコルが小さく笑った。








「大丈夫ですよ。は色白なんですから。」



「…だから嫌なんじゃない。ニコルだって色白いし…。」








やっぱり女の子としては、彼よりも色白でありたいものなの。





「さぁ、どうぞ。冷たい飲み物も用意してありますから。」




ニコルにエスコートされて、中へと入った。




















「わぁ!凄い!!」




リビングの大きな窓…



そこから見えるのは、一面に広がる海。




その壮大さに思わず窓辺へと駆け寄った。





太陽の光でキラキラと輝く海に思わず目を細める。










「あ…ピアノだ。」




部屋の一角に置かれた、白いグランドピアノ。





ニコルの自宅にも大きなピアノがあるのに…ここにも置いてるなんて…。






「周囲に建物もありませんから、防音しなくても良いんですよ。」





海辺のコテージで聴くニコルのピアノ…贅沢だろうなぁ…。





「何か弾いて!聴きたい。」





「いいですよ。何かリクエストはありますか?」



「何でも。ニコルの弾く音、全部大好きだから。」





「分かりました。」





ニッコリと微笑み…ニコルは椅子へ腰を下ろした。



向かい合うように置かれたソファに自分も腰を下ろす。






















波の音と…それに混ざり合うニコルの旋律…。



あまりの心地良さに、溶けてしまいそう。






普段は少し幼く見えるニコルだけど、ピアノを弾いている時は違う。




穏やかで…優しげで…




そして、真剣な顔…。





君が『男の人』だと感じる瞬間。






2歳年上の私とニコルは恋人同士にはなかなか見えなくて…



歩いていると、姉弟と間違われてしまう事だってある。




でも、そんな事を微塵にも感じさせないその姿が凄く好き。











海辺で君とロマンチックに過ごす夏…




ずっと、憧れてたの。




夏と呼ぶには少し遅いかもしれないけれど…。





休暇が終わったら、また軍へと戻ってしまう君…。




こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのに…。




















「…あ…れ…?」




ニコルのピアノが心地良すぎた所為か…



いつの間にか眠ってしまっていた。




ソファに横たわっていた私の身体には白いシャツが掛けられている。



微かに香る…ニコルの香り…。



何だかホッとする。








恋人の姿を求めて部屋中を見渡してもその姿は無く…



少しだけ隙間の開いた窓に気が付いて、そこへと足を進めた。




















カラカラカラ…















…お目覚めですか?」



柔らかい表情で迎えてくれるニコル。



そして、再び彼が見つめた先には夕焼けで赤く染まる海原。




「…キレイ…」



その壮大な美しさと、夕陽の眩しさに目を細める。




「そうですね。僕もこの景色、大好きなんですよ。」




ニコルが大好きと言うこの景色を共に臨む事が出来る喜び…。




夕陽が海に落ちるまでの…僅かな至福のひととき。








「でも、ここから見る朝焼けも本当にキレイなんですよ。」




「本当?それ、見たいなぁ。」



「そうですね。と一緒に見られたらきっと…」




「ね、泊まって帰らない?」




「え!?」




「折角来たんだもん。見て帰りたいじゃない?」





「そ…それはそうですけど///」





頬を赤く染めたのはニコル。




原因が夕陽の所為だけでは無いと気付いた私は、おかしくて思わず吹き出した。






このチャンスを逃したら…



次はいつになるか分からない…って思ったのが本当の気持ち。




でも、口には出さないよ?



言ってしまったら、きっと君は悲しい顔をしてしまうから。




















「……?」




急に何も言わなくなったの顔を覗き込もうとすると…




彼女の方から重ねられた唇…。






「…っ…!!!」





不意打ちでキスを贈った私に、彼は更に真っ赤になる。








「ニコル…あいしてるよv」




もまた…頬をほのかに赤く染め…




小走りで部屋へと戻って行く。










2人だけの夏が…来年も過ごせるようにと海に祈りながら、ニコルもまた部屋へと姿を消した。


















【あとがき】

お題夢、初出演のニコルです〜♪

ニコル夢、とても久し振りなのでちゃんと書けているか心配です(汗)

ニコルはやっぱりほのぼの系が一番ですね♪

書いてて穏やかな気持ちになっちゃいます♪




2005.9.5 梨惟菜








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