「さ、どうぞ。」



「「お邪魔します」」





に案内され、キラとアスランは建物の中へと入った。




「まぁ…いらっしゃい。」



笑顔で出迎えてくれたのはに良く似た女性。



まるで数十年後のを見ている様でドキドキする…。




「あ…母なの。」



「初めまして。がいつもお世話になってます。」




「「こ…こちらこそ!!」」



2人が同時に叫ぶと、とお母さんは揃ってクスクスと笑った。






「2人とも…さっきから綺麗にハモッてばっかり。仲良いよね。」








2人は複雑そうに互いの顔を伺った。





















選択問題























「で…どっちがの彼なのかしら?」





ぶっ…!!


お母さんがポツリとに問うと、2人は飲んでいた紅茶を喉に詰まらせた。





「お…お母さん!何言って…!!」



突然の質問には真っ赤になって動揺する。



「だって…2人とも素敵じゃない?には勿体無いくらい。」









2人も頬を染めながらチラリとを見る。


気まずそうに俯いたは紅茶を流し込むように飲んでいた。








「この子、色々と迷惑掛けたでしょう?そそっかしいから…。」




「いえ…彼女のお陰で色々と助かりましたよ。」



すかさずアスランが笑顔で返した。


その様子にキラはムスッとした表情になる。








は…女の子なのにしっかりしてて…俺の機体の整備もいつも丁寧にやってくれてました。」



「まぁ…そうなの?」





少しでも役に立ちたいと言って家を出たはモルゲンレーテへと向かい、整備士として働くようになった。



そこでアークエンジェルの人々と出会い…クサナギのクルーとなり…


キラやアスランと共に戦争を経験した。




主にフリーダムとジャスティスの整備を任されたと2人の接点は多く…

2人が目の前で汗を流しながら働く彼女に惹かれるようになるのに時間は掛からなかった。





つまり…

キラとアスランは親友でありライバルでもあるのだ。





ところが…


肝心のは何を考えているのか分からない程に鈍感な子で…。


さり気ないアプローチを続けている2人の気持ちにも全く気付いていない。










「2人とも…魅力的な子じゃない。どっちが好みなの?」



「だからお母さん…2人にはそんな気は無いってば…。」




紅茶を入れ直す為にキッチンへ向かった母を手伝う為にもキッチンへ入る。


母からの質問攻めには困り顔で答えた。




「ホント…恋に関して疎い子に育っちゃったのね…。」



「え?」



「いいえ。何でもありません。」



1人で納得してニコニコ笑う母に首を傾げながらはトレイにポットを乗せ、キッチンを出た。


















そりゃ…私だって…



別に疎い訳じゃないの。



一応…16歳なんだし…恋したい年頃なのよ?





でも、戦争でバタバタしてて…それどころじゃなくて…。


しばらくは恋愛なんて無縁なんだって思ってたのに…。



戦争中に出会った2人の男の子…。




茶色い髪にアメジストの瞳…

和やかな空気を持った、柔らかく…可愛く微笑む男の子…




濃紺の髪…深い翠の瞳…

優しく…いつも見守るように側で支えてくれる男の子…





キラもアスランも…私には勿体無いくらいに素敵な男の子。





もしかして…私の事を?


なんて自惚れてしまうような態度を取られる事も何度もあって…



その度にドキドキするの。






でもね…


怖いんだ…。




何か行動を起こしてしまったら…3人の微妙なバランスが壊れちゃうんじゃないか…って。




















「アスラン…分かってるよね?」



「…あぁ…。今日こそ…ハッキリさせよう。」



2人が無理を言っての家に遊びに来たのには訳があった。


いつまでも曖昧な3人の関係…。


それをハッキリさせる為、2人でに告白をしようと決めたのだ。



がどっちを選ぶのか…


それとも…どちらも選ばないのか…


他に好きな人が居るのか…











ガチャ…



トレイを持ったが客間に入る。


その後ろには母の姿。




「私、ちょっとお買い物に行って来るわね。」


「あ…うん。」



「キラ君にアスラン君、ゆっくりして行って頂戴。」



「「あ…はいっ!」」



















…今日は大事な話があって来たんだ。」



「な…に?」



アスランの真剣な瞳にゴクリと息を呑んだ。




「僕…の事がずっと好きだったんだ。」


「俺も…の事が好きだ。」




「え…」





2人から同時に告げられた想いには硬直する。




「ごめんね…2人同時に…なんて。でも…僕達は親友同士で…」


「でも…への気持ちは譲れないから…だからハッキリさせたかったんだ。」




迷いの無い瞳で言葉を綴る2人を前に、の顔は次第に沈んで行った。



「…?」


「やっぱり迷惑…だった?」



「…違うの…。そうじゃないの。凄く…嬉しいよ。」




誰もが見惚れる男の子に告白を受けるなんて…

しかも2人から同時に…




「でも…私は傷付けたく無いの…。」


キレイ事だって言われるかも知れない…。


でも…1人は傷付いてしまうのは事実だから…





そんなの思い詰めた言葉に、2人は顔を見合わせた。



それでも…彼女を想う気持ちは今にも溢れそうだったから…




「ごめんね…。優しい君にこんなに悩ませて…。」


キラが優しく髪を撫でた。



「でもな…それは俺達だって覚悟して来たんだ。
 傷付いても…のハッキリとした気持ちが欲しいんだ。」



「キラ…アスラン…」






優しい紫と翠の目…













「キラ…ごめんなさい…。」


潤んだ瞳のがキラに向かってそう告げた。



「アスランが…好きなの…。」




申し訳なさそうな瞳で見詰められ…キラはニッコリと微笑んだ。



「うん…ありがとう。ちゃんとそう言って貰えてスッキリしたよ。」



キラの笑顔に、は真っ赤になって俯いた。



表情は伺えないけれど…頬を伝う雫が顎を伝ってポタポタと床を濡らす。






「じゃあアスラン…後はお願いね。」


アスランの肩を叩くと、キラは部屋を出て行った。





















「…何か恥ずかしい…。」


「…それは…俺も同じなんだけどな…。」



溢れる涙を指でそっと掬ったアスランは腕の中にを収めた。


小柄で華奢で…強く抱き締めたら壊れてしまいそう…





「俺でいいのか…?」


「アスランこそ…」



あんなに素敵な婚約者が居たのに…



が好きだ。」


「私も…アスランが好き。」





















【あとがき】


お待たせしてしまって申し訳ありません!

久々のVSモノに悩んでおりました。

なのにありがちなパターンですみません(汗)

お陰様で3万Hit♪

皆様のお陰でございます!

読んで下さってありがとうございました。


沙羅様…いかがでしたでしょう?

またご感想頂けると幸いでございます。



2005.6.11 梨惟菜











《おまけ》


「ただいま〜   …ってあらあら♪」



「「…っ///」」


突然開いた扉に気付くのが遅かった2人は…

抱き合った姿をのお母さんにしっかりと見られてしまった。



「気にしないでごゆっくり♪  若いっていいわねぇ…」










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