「こんばんわ。アスラン。」
深夜1:00
今日も彼が私の部屋を訪れる。
そんな彼を笑顔で迎え入れる私。
それはそれは・・・
秘密の時間・・・。
SEACRET
私、とアスランは恋人同士。
私がこの戦艦ヴェサリウスのCICとして乗艦して私達は出会った。
他に女性クルーの居ないこの艦で不安だった私。
それをいつも気遣ってくれたのがアスラン。
そんな彼を好きになってしまった私から告白をして・・・
晴れてお付き合いが始まりました。
・・・と言っても2人の関係は秘密。
何故なら・・・
彼には婚約者がいるから・・・。
俺とは恋人同士だ。
ヴェサリウスに唯一の女性クルーとして配属された。
明らかに彼女狙いのディアッカ。
手の早いディアッカだ。
下手に騙されない様にと気に掛けている内に好きになっていた。
どうやって告白しよう・・・なんて考えていたら、
突然、から告白された。
嬉しくて、即OKの返事をして・・・
俺達は恋人同士になった。
・・・でも、2人の関係は誰にも言っていない。
俺には父が決めた婚約者がいて・・・
しかもその相手はプラントの歌姫、ラクス・クラインだ。
父の立場上、まだ自分の気持ちがはっきりと主張できない俺。
だから、きちんと解消するまでは誰にも言わないと決めた。
そんな俺にとって、は世界で一番大事な人。
・・・そんな事情から、私達が2人きりで会えるのはこんな時間。
彼はニコルと同室だから人目を忍んで私の部屋へ来てくれる。
並んで座って、他愛の無い話をしている間、アスランはずっと私の手を握ってくれる。
そして、3時になったら私の額ににそっとキスをして帰って行く・・・。
毎晩2時間だけの秘密のデート。
彼が私の額以外にキスをくれた事は・・・まだない。
そんな優しいキスが物足りなくて・・・
私はいつも、枕をぎゅっと抱き締めて眠りに就くの。
俺の勝手な都合のせいで2人きりで会えるのは深夜。
同室のニコルが寝ている事を確認してから、外で読書をするフリをして、本を片手に部屋を出る。
向かう先はもちろん、一人部屋のの元。
絶対にバレないデートスポットだ。
の手を握りながら話をする。
の手の温もりが心地よくて
の甘い声が心を支配して・・・
ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
3時になったら淋しそうな瞳のの額にキスをして、俺は自分の部屋に戻る。
本当は強く強く抱き締めて、その柔らかそうな唇にキスを落としたいけれど・・・
こんな曖昧な俺でに触れるのはとても怖い・・・。
「あれ?アスランはいないの?」
休憩で立ち寄った食堂に、イザーク、ディアッカ、ニコルの姿。
愛しいアスランの姿は無かった。
「アスランならラクス嬢からの通信が入って席を外してますよ。」
あぁ・・・彼女から・・・
「仲良いのね。羨ましい。」
「プラント中が祝福する公認カップルですからね。」
公認カップル・・・か。
アスランは私の告白をOKしてくれたけど・・・
本当は私とラクス嬢、どっちが好きなんだろう・・・?
この戦争が終わったら・・・
日常の生活に戻ったら・・・
私達はどうなるの・・・?
そんな事、怖くて聞けない。
2人の間に割って入ったのは私だから・・・。
「あぁ、アスラン。お帰りなさい。」
ラクスからの通信を切って食堂に戻ったら、3人の輪の中にが加わっていた。
「彼女、お元気でしたか?」
「・・・あぁ、またニコルのピアノで歌いたいと言っていたよ。」
「そうですか。嬉しいなぁ。」
俺はニコルの隣に腰掛ける。
向かいに座ると目が合って、彼女は俺を見て優しく微笑んだ。
可愛いの笑顔に俺も微笑み返す。
「相変わらず仲良しで羨ましいって話してたんだぜ?な、。」
「・・・え?あぁ、そうね。」
気の抜けた返事の・・・。
こんな話題を彼女に振るなよ・・・。
「何ならさ、俺らも婚約とかしちゃう?」
「はぁ!?」
突如、俺のを口説き始めたディアッカ。
よりにもよって俺の目の前で・・・。
いや、俺の居ない所で口説かれても困るが・・・
「俺、マジだぜ?。」
「・・・無理。」
は考える間も無く即答した。
「考えてみようって気にもなんないワケ?」
「私、好きな人いるもん。」
「・・・じゃ、仕方ないか。」
あっさりと引くディアッカに俺は驚いた。
来る者拒まず去る者追わず・・・
これがディアッカの恋愛論なのか・・・?
でも、人前で堂々と告白をやってのけるディアッカが本当は羨ましかった。
ここで「は俺の彼女だ!」と言えない自分が情けない・・・。
「・・・何か・・・怒ってる?」
「・・・いや。」
せっかくの2人きりの時間なのに、どうも落ち着かない。
これも昼間のせいだ・・・。
何だかんだいって、は美人だ。
明るく誰にでも優しいから気に掛けてる男も多いはずだ。
実は他にも誰かから言い寄られてるんじゃないか・・・?
そう思うと心配でしょうがない。
「・・・私、ちゃんとわかってるから大丈夫だよ?」
「・・・何が?」
「ラクス嬢の事。アスランにとって大事な人だもの。」
「は?」
「・・・え?その事で怒ってるんじゃないの?」
「俺はディアッカの告白の事を考えていたんだぞ?」
「え?何で?」
私、ちゃんとアスランの前で断ったよね?
何でそんな事気にしてるの・・・?
「他の男からも告白されてるんじゃないかな・・・って心配になった。」
「・・・されてないよ。されたって断るんだもん。」
そんな事・・・気にしてたの・・・?
これって・・・もしかして・・・
「・・・ヤキモチ?」
「えっ!?」
の質問に思わず声が裏返る。
そうだよ。嫉妬なんだよ。
を誰にも渡したくないんだ。
2人の関係を秘密にしておいて何を・・・って思うかもしれないけど。
を独占したい。
堂々と人前で手を繋いで、俺の彼女なんだってアピールしたいんだよっ!
あぁ・・・何だかもう、どうでも良くなって来た。
父上の立場も・・・ラクスの存在も・・・
さえ居れば、他には何もいらないんだ・・・。
「公表しようか・・・俺達の事。」
「・・・え?」
突然のアスランの言葉に、私は目を見開いた。
いつものアスランらしくない・・・。
余裕の無い目が私を見つめる。
そんなアスランの表情に胸が締め付けられそうになった。
「もう・・・世間体とかどうでも良いよ。が居てくれたらそれでいい。」
「・・・それは・・・ラクス嬢じゃなくて私を選んでくれるって事?」
その気持ちは・・・本当なの?
「何言ってるんだよ。の告白を受け入れた時点でそうだろ?」
・・・そう・・・なの?
「まさか、俺がとラクスで迷ってるとでも思ってた?」
「・・・だから秘密なんだと思ってた。」
はぁ・・・そういう事だったのか。
まさかがそんな風に思ってたなんて・・・。
俺の愛情表現、足りなかったのかな?
ちゃんと伝えてるつもりだったんだけどな。
「父上の立場上、断り切れなくて・・・。今度プラントに戻った時にちゃんと話すつもりだったんだ。
俺には決めた人が居るから・・・って。」
「・・・そう・・・だったんだ・・・。」
「それだったら・・・公表しなくても、今まで通りで良いよ?」
アスランの気持ちが分かっただけで十分。
「・・・嫌だ。明日には皆の前で見せ付けてやる。」
「何でよ・・・?」
ザラ議長の立場をあんなに気にしてたクセに・・・。
「俺が我慢できないんだよ。に悪い虫が付いたら困る。」
「・・・悪い虫って?」
「とりあえず・・・艦内の全員?」
「・・・何それ・・・」
私達は顔を見合わせて笑った。
アスランがこんなにもヤキモチ焼きだったなんて・・・。
ちょっと嬉しいかも・・・
「やっぱ秘密にしとこうよ。バレたらその時言えば良いじゃない?」
「・・・でも。」
何だかアスランが可愛い・・・。
「誰かに言い寄られたらアスランが守ってくれるんでしょ?」
「仕方ないな・・・」
アスランが優しく笑った。
そっと私の体を抱き寄せて・・・私の唇に初めてのキスを落とす。
アスランからのキス・・・どんな感じなんだろうって想像してたんだけど・・・
全身の力が抜けちゃって何も思い浮かばない・・・
明日からもアスランは私の秘密の彼氏。
ちょっとスリリングな関係も楽しいかもしれない。
・・・なんて思えるのはアスランからのキスのお陰かな?
の体・・・こんなに小さかったんだ・・・
抱き締めて改めて、が大事なんだと実感する。
の唇にそっと自分の唇を寄せた。
色々とロマンチックなシチュエーションを考えてたんだけどな。
もうそんな余裕、無くなっていた。
ただ彼女が愛しくて・・・今の俺は世界で一番幸せ者なのかも知れないと思った。
明日からもは秘密の彼女。
皆の前で独り占め出来ないのは悔しいけれど、
前ほど気にならないと思う。
今のキスでちょっとだけ自信が付いたから。
愛してるよ。
【あとがき】
「秘密の恋」みたいなカンジの作品が書きたくて・・・
ふと仕事中に浮かんだ作品です。
アスラン=ラクスの婚約者のイメージが強いので、どうしても絡んでしまうんですよね〜。
読んでいただいてありがとうございました〜。
感想なんかいただけると嬉しいです♪
2004.12.19 梨惟菜